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高稼動・高収益を目指す「キャンプヴィレッジ」とは

執筆|加藤文人 潟潟]ートコミュニケーションデザイン 代表取締役/一般社団法人日本グランピング協会 顧問

  • キャンプ場
  • グランピング
 新たな滞在スタイルを提案する「キャンプヴィレッジ」のマーケティングの視点、開発および運営のポイント、差別化のためのコンテンツづくりなど、“キャンプ場の最適化モデル”を詳解。
キャンプ場ビジネスの成立要件
滞在目的となりうる体験型宿泊サービスの提供 キャンプ場ビジネスのコアコンピタンスである。ターゲットを明確にし、アウトドア体験を組み立てる必要がある。
心地よさと賑わいをもたらす空間デザイン キャンプ場は共有体験の場でもあり、子ども、料理、アウトドア用品などで顧客同士のコミュニティの場を創出しやすい。コミュニティの創成はファンづくりへの近道となる。
滞在を演出する場内外の各種
アクティビティサービスの集積
今後長期滞在客の増加が見込まれるため、その地ならではの自然体験や文化体験のメニューが必要となる。
環境、地域との持続性を確保する仕組み 環境配慮の啓蒙も含め、環境問題を考え、実践する場としてキャンプ場は最も適している宿泊施設である。また、地域との共生は持続可能性に必須である。

これからのキャンプ場ビジネスの要諦

コンセプト
 今後のキャンプ場のコンセプトは、「キャンプヴィレッジ(キャンプ村)」だ。「働く場」「住まう場」「学ぶ場」が流動化し、再定義されつつあるなかで、キャンプ場はその受け皿の一つとして“暮らすようにキャンプする”を実現する。自然のなかで過ごす楽しさを伝える従来の機能に、働く(リモートワーク)、学ぶ(リモートラーニングや各種プログラム)、コミュニティの機能を加え、「日常を犠牲にしない非日常」を提供する。自然のなかでの質の高い暮らしを実践する場(新たなる日常の場)が「キャンプヴィレッジ」である。

「新たなる日常の場」としてのキャンプ場(キャンプヴィレッジ)

立地条件
 従来の立地条件に加え、適地となりうる新たな場所が生まれてきている。立地条件の変化は、キャンプ場のみならず宿泊サービス業全体に起こっており、今後は知名度の低い地方にも多くのスポットライトがあたることになるだろう。

導入機能と提供価値
 これまでのキャンプシーンにはなかった「日常を犠牲にしない非日常」を提供しなければならない。具体的には、「働く」「学ぶ」ことができるキャンプ場である。たとえば「働く」については、RECAMPの商品化した「OFFICE TO GO」が参考になる。そのコンセプトは“オフィスをキャンプ場に持ち出そう”。Wi-Fi はもちろん会議室や個室などオフィス環境・設備を整え、サテライトオフィスとしてキャンプ場を利用してもらうというサービスである。
 「日常を犠牲にしない非日常」を提供するには「質の高い非日常」も重要である。具体的にいえば、提供するアクティビティをブラッシュアップしてメニューを増やさなければならない。自然だけではなく、地域の文化・食・アウトドアスポーツなどに関して質の高い多様なプログラムを用意したい。また「コミュニティの創成」も重要である。長期滞在して同じアクティビティに参加するようになると顧客同士の距離感は自然に縮まる。タイミングよく声をかけるなどして背中を押してあげたり、ファシリテーションをすることでコミュニティが生まれる。そうしたきっかけづくりとともに、コミュニティが創成しやすく人が集まりやすい空間づくりも大切である。
 キャンプ場ビジネスとしての「差別化要素の創造」とは、「日常を犠牲にしない非日常」+「質の高い非日常」=「質の高い日常」(新しい日常)を過ごす場の創造である。

多様なキャッシュポイントの設定

 宿泊、飲食、物販、レンタルが既存のキャンプ場ビジネスの主なキャッシュポイントである。「キャンプヴィレッジ」にはこれに「働く」「学ぶ」「コミュニティ」が加わる。

@働く
 ワーケーションやテレワークも、宿泊または日帰りの場所代、飲食、物販、レンタル品などレジャー需要と同様のキャッシュポイントができる。ただし、平日料金、連泊割引など、週末とは違った価格戦略が必要となる。契約企業の社員向け福利厚生施設として週末も割引利用できる仕組みにすれば、レジャー利用の促進効果も期待できる。

A学ぶ
 自宅でのテレワークで顕在化した「子どもがいると仕事に集中できない」という問題はキャンプ場でも解消されない。したがってワーケーションやリモートワークでは、未就学児のシッターサービス、小学生対象のアクティビティなどがキャッシュポイントとなる。キャンプ場の平日は低稼動なので価格競争力のある値付けが可能であり、キャンプ場ならではの環境で他にはない学びの場としての魅力が訴求できる。

Bコミュニティ
 キャンプ場では講演や交流、オフサイトミーティングにローカルな要素を加えたコンテンツ(マルシェ等)が提供できる。それにより宿泊客だけでなく地元住民を含めた多様な参加者が集まり、都心のコワーキングスペースなどにはないコミュニティの創出が可能となる。その取組みで、場所代と飲食などの収益があがるが、目的は自施設に対する宿泊客や地元住民のロイヤルティの向上であり、その結果として収益向上を成し遂げる。

マーケティング

 「キャンプヴィレッジ」のように過去の延長線上にないものは顧客データやアンケート調査から仮説を立てられない。コロナ禍の2020年はすべてが実験的で流動的だったといっても過言ではないが、基本的にはこの災禍によって潜在していたトレンドが顕在化し、5〜10年かかると思われた変革が6か月で起きている。このような環境下、“3密回避”をベースにしたキャンプ場に関わるいくつかのマーケティングトレンドが生まれた。テレワークやワーケーションのほか、自宅から1〜2時間圏内を観光する「マイクロツーリズム」などである。
 顧客満足度は、社会環境、ターゲットによってどんどん変化する。コロナ禍では“3密回避”“安心安全”はベースサービスである。ワーケーションやリモートワークしやすい環境へのニーズも高い。通信速度の速さや安定性、個室の完備やデスクワークをしつづけても快適な椅子など、いままでのキャンプ場ではまったく求められてこなかった新たなニーズが顕在化している。アウトドアレジャー全体にライトユーザーが増えたため楽しみ方のレクチャーも求められる。
 これからのキャンプ場は、「顧客に応えるサービス」と「顧客に提案するサービス」をバランスよく提供する必要がある。「顧客に提案するサービス」は、たとえば“アウトドアにおける環境配慮”“自然に近づくアクティビティ”“地元に学ぶ”など、キャンプ場内外での過ごし方を提案し、ブランディングにつなげてロイヤルカスタマーを育てる。一方「顧客に提案するサービス」では、サブスクリプションサービスの仕組みなどを採用し、平日のワーケーションやソロキャンプなどのニーズを開拓するのも有効だ。
(つづきは本書で)

   

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