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資産価値向上のためのホテルアセットマネジメント

執筆|池尾 健 Flat Collaboration(同) 代表、(一社)日本ホスピタリティ・アセットマネージャー協会(HAMA Japan)プレジデント

 ホテルアセットマネジメントサイクルは、主に次の4つの段階で構成されている。

 

①投資家・オーナーの目的の決定
②資産取得
③価値創造機会の把握と運営パフォーマンスのモニタリング
④資産売却

 

 ホテル投資におけるアセットマネジメントサイクルは、主に投資家・オーナーの目的を明確にし、その目的に沿った価値最大化への取組みの間で繰り返されるプロセスである。投資家・オーナーが投資対象であるホテルの現在および将来のパフォーマンスを繰り返し評価することで、その目的はアップデートされていく。さらに、時間が経過するにつれて、ホテルアセットマネジャー(ホテルAM)が価値を創造または維持するための選択肢もまた変化していくことになる。

 アセットマネジメントサイクルの反復はときに退屈なものだが、継続的な努力の結実として、ホテルAMは投資家・オーナーのために価値を創造し、維持するための機会を得ることができる。常にベンチマーキングし、見直し、問いを繰り返し、適切な情報を投資家・オーナーに報告し、提案を行なうことがホテルアセットマネジメントの本質なのである。
ホテルAMが自身の取組みを評価する基準の多くは、アセットマネジメントプランに含まれている。というのも、アセットマネジメントプランは投資開始時に作成され、投資家・オーナーの目標を達成するための最初の行動指針を示しているものだからである。ホテルAMは、アセットマネジメントプロセスを通じてプランを実行する責任を負っているが、時間の経過と新しい情報の収集に伴い、常にプランを見直し、評価し、更新する必要がある。このような重要なプロセスを通じて、投資家・オーナーにとって必要不可欠な存在となっていくのである。

アセットマネジメントプランの要素

資産取得

 ホテル資産の取得プロセスにあたり、各種デューデリジェンス(投資対象の価値やリスクの評価業務)が開始されると、投資家・オーナーのリスクに対する許容度と具体的な投資対象が明らかになり、その目標を実現するためにホテルAMの打ち手も明確になる。取得の過程では、主に売主より膨大な量の情報や資料が開示されるが、ホテルAM はそのすべてを理解する必要がある。デューデリジェンスで得られた情報の質や精度により、ホテルAM の立案する投資プランの完成度も比例していくことになるためである。

 

 資産取得の可能性が高まった時点で、追加的に入手した開示資料と情報に基づき初期段階に行なった提案を再評価することで、当初は明らかにならなかったかもしれない新たな価値創造の選択肢を特定するための、短い機会を得ることになる。優秀なホテルAM は、資産の取得と売却という段階が全体の保有サイクルのほんの一部であることを知っている。資産価値を最大限に引き出すための努力とそこに費やす期間こそが、このサイクルの最も大きな部分を占める。ホテルAM が変化する市場の力学と機会に照らしてホテルパフォーマンスを定期的に評価するこの段階は、投資家・オーナー、ひいてはホテルAM にとって最大のリスクともなりうる。
 この時点では、デューデリジェンスの過程で発見された要素を投資家・オーナーの目標に関連するものとして再評価することが重要である。ホテルAM は、当初のアンダーライティング(投資分析)の前提を最新のデータと比較し、当初の期待値と目標がまだ有効かどうか、あるいは最新のデータによってアンダーライティングの結果が変わった場合、投資判断がまだ妥当かどうかを判断しなければならない。

価値創造機会の把握と運営パフォーマンスのモニタリング

 価値創造機会の把握と運営パフォーマンスのモニタリングは、同時に進行する取組みである。下図に示すように、各取組みは資産の保有期間を通じて継続的に繰り返される。それによって、資産がアセットマネジメントプランに沿って磨き上げられるとともに、市場環境の変化にあわせて資産のパフォーマンスを継続的に評価することで、新たな価値創造の機会、プラン実行における欠点、またはプラン自体の大幅な変更の必要性を特定することができる。

価値創造機会の把握と運営パフォーマンスのモニタリング

 取得当初に設定した目標を達成するためのアセットマネジメントプランの着手は、ホテルAMの裁量に委ねられる。価値創造に向けた初期段階であるこの時期は、ホテルのリポジショニングのために、改装、オペレーターまたは経営の変更など、重要な変更を行なう時期である。その他の着手すべきステップとしては、業績不振のテナントの入替え、マネジメント人材や従業員レベルの評価などがある。
 また、新たな保険の導入、消費税還付の申請、サブテナント賃料の見直し、リース資産の買取りなど、比較的すぐにリターンにつながる取組みもある。資産取得の過程で他の機会も明らかになるかもしれない。たとえば、オペレーターとの賃貸借契約の更新時期が迫っており、それまでの諸条件が市場価格を下回っていたものが、新たなマーケティングや交渉によって改善される可能性などがそれである。

 

 具体的な施策の実行は、アセットマネジメントの過程で最も魅力的な部分である。短期間で実現できる大きな改善ももちろんあるが、ホテルAMはホテルの運営パフォーマンスを継続してモニタリングするという、ある意味で忍耐が必要となるプロセスにも焦点を当てなければならない。この業務をできるだけ効率的に行なうためには、自分なりのいくつかの重要なルーティンを確立しなければならない。
(つづきは本書で)

資産価値向上のためのホテルアセットマネジメント実務資料集

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