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がん患者対応ケアホテルで、日本全国の潜在需要を開拓

ウェルネス掛け算のダイナミズム|ウェルネス×ホテル

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適地取得で新業態挑戦

「LUXCARE HOTEL」(ラクスケアホテル)は2020年2月、がん専門病院「大阪国際がんセンター」近くに開業。がん患者と家族向けの設備・サービスを備えた「ケアサポート型」ホテルである。不動産開発の宅都ホールディングスが開発、運営している。
事業化の背景は、実際にがん患者となるとわかる強い需要だ。「私自身が過去にがんを患った際、患者や家族が(入院以外の選択肢で)中長期に滞在できる先が圧倒的に少ないことに身を持って経験、大きな潜在ニーズがあると考えた」(代表取締役社長 太田卓利氏)。
土地を取得した段階では、中核拠点病院 “門前 ”の好立地にあり、薬局やクリニック向けのテナントビルなど、安定・高収益な開発プランも考えたが「長年温めていたケアサポート型ホテルの事業ノウハウ構築にはまたとない好機と考え、新業態の開発にチャレンジした」(太 田氏)という。
宅都ホールディングスでは、ラクスケアホテルに加え、これまでに5棟のホテル開発・運営実績をもつ。ケアサポート型ホテルは自社開発よりも、他のデベロッパーや投資家、医療法人に向けた開 発・運営コンサルティングを通じて拠点拡大を目指していく考えだという。

LUXCARE HOTEL外観

画像提供:宅都ホールディングス

充実のユニバーサルフロアと常駐看護師

具体的な建物・サービスの特徴をみていこう。まず、開発にあたっては、大阪国際がんセンターと密接に連携、客室や共用部のつくりこみ、宿泊客のサポート体制にいたるまで数多くのアドバイスを受けたという。
特徴は、医療、介護事業者と連携した充実のサービスである。室内には全室フロント直通のコールボタンを配置。ホテル内に1、2名の看護師が常駐(8〜18時)し、患者や家族の医療・介護の相談対応や滞在中の定期的な体温・血圧チェックが行える。情報は病院側と共有できるほか、訪問介護・診療事業者とも連携可能。介護用品のレンタルも受けられる。
ハード面でも工夫を重ねている。建物は地上14階建て、延床面積1,895u、全48室の規模。車いすやストレッチャーが利用可能な「ユニバーサルフロア」、「ツイン・ダブルルーム」、最大8名まで対応可能な「コネクティングルーム」、キッチンや洗濯機を備えた「デラックス ツイン」と「スイートルーム」までを用意、家族や秘書を帯同しフロアを長期間 専有したい海外富裕層の医療ツーリズム需要にも対応している。
「テストマーケティングの観点から、複数の客室タイプを用意した。コロナ禍でも富裕層のニーズは底堅く、高額な客室から埋まる傾向がある」(太田氏)。

稼働・ADRの回復はコロナ収束後に期待

客室料金(ADR)は、看護師によるサポート費用を含め、近隣のバジェット〜エコノミー型ホテルの1.5倍程度を目指している。実際の運営状況はどうか。ホテルのオープンから1年余り、客室稼 働率・ADR(平均客室単価)は新型コロナウイルスの感染状況によって振れ幅が激しい。「がん患者の付き添い家族や、医療的なサポートが必要な旅行者は、コロナ禍で極端に外出を控えており、いまはメインターゲットが不在。しかし、コロナ禍が収束に向かえば強いニーズが期待できる。平時下では稼働率75%、19uの客室でADRは1万2,000円程度を想定。通常のホテルよりも賃料負担能力の高いオペレーションが可能と考える」と太田氏。
現在の宿泊客の属性は、一般客が60%、患者や医療関係客、メディカルツアー客が40%という構成。稼働率維持のため一般客を幅広く受け入れているが、今後は患者と家族の比率を高めていく方針。人間ドッグ付きプランや医療ツアープランを積極的に拡充していく。
大阪では近年、インバウンド客の需要を当て込んだホテルの開発・供給ラッシュで需給が緩んでいる。コロナ終息後も稼働率・ADRの本格回復には時間がかかるとみられるが、ラクスケアホテルのような機能特化型ホテルは相対的に強い競争力が期待できそうだ。 「病院近接立地であれば、全国で開発が可能。リゾート立地では医療ツーリズム需要にも期待できる。コロナ禍や供給過剰による局所的な過当競争で、運営に行き詰まるホテルの起死回生策としても提案していきたい」と太田氏は意気込みを話した。

LUXCARE HOTEL 客室

3〜4階のユニバーサルフロアはストレッチャー利用を想定し、廊下幅約2.53mを確保
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