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継続と維持に全集中 アフターコロナの戦略を意識せよ

事業の向かう先|松田優幸 氏[リテール エステート]

  • 市場動向
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商業施設直営のECも有効 

欧米を中心にワクチン開発が急速に進んでいる。日本では、2021年夏頃にコロナ禍が収束に向かう可能性がある。
だとすれば、都市型商業施設のオーナーはいま、“ウィズコロナ”に対応したテナントを躍起になって見つける必要はない。あと数か月間を現状維持で運営し続けた方が得策だ。それと同時に、“アフターコロナ”を見据えたMDや施設運営の戦略を練るとよいだろう。それでは、オーナーが取るべき戦略とは具体的に何か。
まずはECとの競合対策である。すなわち、商業施設自らによるECサイト運営を検討すべきだ。それはテナントによるタブレット誘導(店頭で自社のECサイトに顧客を誘導し、そこで購入させること)で商業施設に入るはずの売上をテナント企業に奪われるのを防ぐことにつながる。また、店舗で試着し、帰宅後に注文する仕組みを構築すれば、既存のECプラットフォームと差別化できる。
テナントミックスでは、アパレル・物販を縮小しつつ、飲食や食物販のウエイトを増やす。一方アパレルはレディースだけでなくメンズやユニセックスも誘致する。エステ、フィットネスクラブ、習い事(資産運用ほか)などの各種サービス業態も積極的に誘致したい。

PM・コンサルの役割重要に

タイプごとのPM担当者人数の構成比は、取扱い物件が多様な総合型PMでは50人以上の担当者を擁する企業が3分の1を占めている一方、住居中心型PMでは10%強に過ぎない。また、物流中心型PMでは50%が10人以下であり、11〜30人以下まで加えると87.5%に及んでいる。物流施設を取扱う業者が少ないことから極端な数値になるのだろうが、現場作業者が多い反面、少数のPM担当者で行える事業であることがうかがえる。
さらに言うと、商業テナントにこだわる必要もない。オフィスや住宅、ホテルなどとの複合化で施設全体の価値を高める試みは、事例が増えており、今後も検討の余地が大きいと考える。
また既存の施設では対応しにくいかもしれないが、施設空間の魅力付けも差別化要素である。「MIYASHITAPARK」(東京・渋谷) や「WITHHARAJUKU」(東京・原宿)、「GREENSPRINGS」(東京・立川)をはじめ、2020年に開業した商業施設は“緑”や“水”、“開放感”などの要素を活用する事例が目立つ。空間の魅力で集客し、プチ旅行の感覚でテンションを高揚させ、最終的に飲食や購買へ向かわせることが狙えるのだ。
そして顧客ターゲットの見直しも検討すべきだろう。人口構成比や金融資産の規模では、F1層(20〜34歳の女性)よりシニア層が大きなウエイトを占める。シニア層の取り込みには、今後力を入れてよいのではないか。
アフターコロナの商業施設には、ECが提供しえない体験価値をもたらす仕掛けが必要になる。これを実現するには、単に空き床を埋めるだけの受け身のリーシングではなく、施設そのものを魅力的な商品とする、高度で幅広い視点に立った攻めのリーシングが必要となる。商業PM会社や専門のコンサル会社の重要性は、今後ますます高まってくるだろう。
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