――ユースペース×軒先×ポスト・リンテル
【試し読み】
台湾の駐車場シェアリングサービス最大手「ユースペース」が日本市場で本格展開を始めた。本稿は、同社代表の宋捷仁氏と、ビジネスパートナーである東アジア投資家向け不動産コンサルのポスト・リンテルの坂東多美緒氏、スペースシェアリングの軒先の西浦明子氏の2人を交え、進化する駐車場管理とこれからについて語ってもらった。
[話し手]
宋捷仁氏 ユースペース 代表取締役
西浦明子氏 軒先 代表取締役
坂東多美緒氏 ポスト・リンテル 代表取締役社長兼CEO
――3社それぞれの関係を教えてください。
宋 台湾の駐車場シェアリングサービス会社で、管理・運営の他にさまざまな付帯サービスを展開しています。管理・運営台数は約9万台、ユーザー数は150万人に上り、国内ナンバーワンの地位を確立しています。特徴はアプリ1つでいつでも予約・利用ができる手軽さです。
日本参入の理由は駐車場マーケット規模の大きさです。それにもかかわらずテクノロジー活用が遅れている点に着目、2020年に日本法人(ユースペース)を設立し、2022年から本格展開を始めています。
坂東 主に東アジアの投資家やファミリーオフィスに対日不動産投資に関するコンサルやAMサービスを提供しています。日本の不動産投資市場は活況が続くも価格高騰で、投資家はさらなるバリューアップ戦略を求めています。その有効策として駐車場シェアリングによる土地有効活用や物件再生には大きな可能性を感じています。ユースペースの日本法人にこのたび一部出資し、同社プラットフォームを活用しつつ、協業を通じて事業の成長をともに目指していく考えです。
西浦 日本初の駐車場シェアリングサービス会社として、2008年から民家や空き地、法人ビルの駐車場などを時間貸し駐車場として活用する「軒先パーキング」を展開しています。会員は約86万人で、管理・運営するスペースは3万3,000か所に上ります。台湾のユースペースには2024年7月に全株式を譲渡、同社の子会社となりました。これにより双方のプラットフォームを連携させ、顧客を双方向に融通するとともに、ユースペースが持つ先進的な管理・運営ノウハウを取り入れ、さらなる事業拡大を図っていく方針です。
――ユースペースは台湾でナンバーワンのシェアを誇っていますが、その強みはどこにあるのでしょうか。
宋 充実した機能とサービスです。ユーザーにとっては、スマートフォンのアプリで目的地近くの駐車場を簡単に検索し、分単位で予約できる手軽さはもちろん、付帯サービスとして、駐車中に洗車サービスや電気自動車の充電、自動車保険の紹介など様々なサービスが受けられます。
駐車場オーナーにとっては、ダイナミックプライシングによる最適なレベニューマネジメント機能を搭載し、的確な需要予測に基づいた最適料金設定による収益最大化が可能なことです。
曜日や季節、天候、イベントなどの各要素に基づき需要を予測し、さらにユーザーの駐車場利用データを基に、性別・年齢・居住エリア・車種などをAI で分析。貴重なマーケティングデータとして提供できます。
西浦 現場のシェアリング事業の目線から見ても、ユースペースの駐車場運営は日本の事業者より一段も二段も進んでいると感じます。管理・運営は基本的にカメラによる自動管理で行われており、ユーザーの精算はすべてアプリ経由の自動決済であり、精算機を設置する必要がありません(一部でユーロックという簡易的なロック板を使うケースがある)。

精算機がなければ、お釣りの回収やレシートなどのペーパー類の補充も不要です。これだけでもコスト面で大きな優位性があります。管理・運営コストの削減により、結果的に駐車場オーナーの利益にも貢献できます。
――具体的な協業の事例や、将来展望について聞かせてください。

坂東 当社顧客である台湾のファミリーオフィスが、2025年7月に六本木で土地を取得し、現在再開発を検討しています。着工までの期間中、敷地内の時間貸し駐車場(87台)にユースペースのサービスを導入したいとの要望がありました。
7月には、管理を国内大手駐車場運営会社からユースペースへと切り替え、売上も順調に伸びています。こうした実績を踏まえ、今後は当社が東アジア投資家向けにAM・PM業務を手がける物件や、当社グループの分譲マンション管理会社が関与する物件においても、ユースペースのシェアリングサービスを積極的に活用していく方針です。
宋 日本では、今後3年以内に3万台の管理・運営実績が目標です。六本木の事例をはじめ、国内外のオーナーが保有する駐車場や土地、ビル、商業施設、旅館などに対して、ユースペースのサービスを積極的に紹介していきます。展開に際してはユースペースブランドを前面に出すことにこだわりません。当社は“黒子”に徹し、既存のコインパーキングブランドのもとでこれまで通り運営を続けることも可能です。すでに大手財閥系の駐車場運営会社が当社の管理システムを導入しています。また、台湾本国で展開している付帯サービス、たとえば駐車中の洗車・EV充電、カーシェア、広告・プロモーション支援なども、順次日本市場で展開していく予定です。
西浦 ユースペースの子会社となったことを機に、同社の管理・運営システムや、AI によるディープラーニング分析を導入し、さらなるオーナー利益の向上に貢献します。
日本でもシェアリングという言葉自体は広く知られていますが、実際に導入した経験をもつオーナーはまだ多くありません。シェアリングはオーナーにとって、初期投資が少なく取り組みやすいうえ、収益改善のインパクトは大きいため、もっとも手軽なバリューアップ戦略の一つといえます。ぜひ多くのオーナーに、一度トライしていただきたいと思います。
