南国特有の暑さを強みに変える
〝守り〟から〝攻め〟の暑熱対策
【猛暑】CASESTUDY
2025年7月、沖縄北部・やんばるに開業した「ジャングリア沖縄」は、雄大な自然を舞台にしたテーマパークとして大きな注目を集めた。その一方で、開業当初はアトラクションやレストランへの案内効率、そして沖縄特有の暑さへの対応について、来園者から多くの意見が寄せられた。
こうした声に対し、運営会社である㈱ジャパンエンターテイメントは課題を隠すことなく「PROGRESSREPORT」として公開。改善内容とその成果を継続的に発信し、「進化し続けるテーマパーク」という姿勢を明確に打ち出してきた。その改善項目のなかでも、今夏、最も大規模な投資を行なったのが暑熱対策である。
一方で、広大なやんばるの自然を舞台とするテーマパークである以上、パーク全体を屋根で覆うような施設整備はコンセプトにそぐわない。「大自然を楽しむ」という世界観を守りながら、いかに快適性を高めるか。その考え方のもと、同社は今夏、数億円規模を投じて暑熱対策を抜本的に見直した。
特徴的なのは、暑さから逃げられる場所をパーク全体に点在させる考え方である。自然の開放感を損なうことなく、必要なタイミングで身体を休められる環境を整備することで、ゲストの体験価値そのものを底上げしようとしている。
その代表例が、冷房を備えたコンテナタイプの休憩施設「クイックリフレッシュステーション」だ。開業当時から同施設は高い利用実績を示したことから、今夏も継続設置するとともに空調機能を強化した。
さらに今夏は、花王㈱のスキンケアブランド「ビオレ」と連携し、冷感タオルや日焼け止め、冷却ミストなどを無料で試せる体験スペースとしても活用。暑さ対策そのものをサービスへと発展させる試みとなっている。加えて、ビオレ製品を購入できる自動販売機も人気アトラクション周辺など3か所に設置し、必要な時にすぐ手に入る環境も整えた。

暑熱対策空間は、園内各所へと広がる。パーク中央の屋外レストラン「ワイルドバンケット」には、約140席のシェード付きダイニングスペースを新設。大型ショー会場「ブリーズアリーナ」には約260席のテントタイプの休憩スペースを整備した。これにより、修学旅行などの団体客も食事や休憩場所を確保しやすくなった。暑熱対策は快適性の向上だけでなく、受入れ体制そのものの強化にもつながっている。
細かな改善も積み重ねた。園内に設置する「パラソル&ベンチ」は従来より約4割増設。大型ミストファンは従来の1台から10台以上へ拡充し、主要アトラクションの待機列を中心に配置した。さらに、ポータブル形式の小型ミストファンも100台規模で新規導入し、ゲストが長時間屋外に滞在する際の負担軽減を図っている。
また、沖縄では日差しを遮るだけでも体感温度が大きく変わるという特性を踏まえ、無料貸し出しの日傘は50000本以上へ拡充。貸し出し・返却場所も園内各所へ広げ、「借りたい場所で借り、返したい場所で返せる」運用へ改めた。
ジャングリア沖縄の暑熱対策には、もう一つの大きな柱がある。それは、暑さを単に避ける対象ではなく、楽しさへ転換するという発想だ。
その象徴が、「びしょ濡れ」をテーマにした各種コンテンツである。この春には、パーク最大のショー「ジャングリアスプラッシュフェス」は、水の演出と沖縄らしい音楽を組み合わせた内容へアップデート。さらに「みんなで思い切りびしょ濡れになる」参加型エンターテインメントとして「クールダウンウォーターパーティ」を4月から新設した。
今夏は「夏のびしょ濡れ大作戦」と題し、新たなコンテンツも投入した。特殊冷却部隊に扮したキャストがパーク中を回遊しゲストを濡らす「ウォーターレンジャー」、ウォーターキャノンから噴き上がる水柱のなかでエンターテイナーと踊る「スコールダンス」など、園内各所でびしょ濡れ体験を展開。ショーの開催時間以外でも楽しめるアトモスショーとして、パーク全体のにぎわいづくりにつなげている。


これら一連の取組みを支えているのが「ジャングリアクーリングパートナー2026」である。花王をはじめ17社が参画し、〝沖縄の夏を最高の体験にする〞という考え方を共有。前述のミストファンやファン付きウェアなどもパートナー企業から提供を受けながら、実際のパーク運営を通じて製品や技術の効果を検証し、新たな価値創出へつなげている。単なる資金的な協賛ではなく、パークを実証フィールドとして活用するオープンイノベーションの場として機能させている点も、同社の暑熱対策の特徴といえそうだ。
開業当初は厳しい評価も少なくなかった。しかし、その声から目を背けることなく改善を重ねた結果、26年5月の来場者満足度は89・3%まで向上したという。もちろん、同社は現状に満足しているわけではない。
暑さとどう付き合い、どう楽しさへ変えるかという新たな施設運営の形が問われている。ゲストが快適に過ごせる環境を整えながら、その土地ならではの気候さえ体験価値へと転換していくジャングリア沖縄の挑戦が、今後どう進化していくか、引き続き注目される。
※実際の記事より抜粋して再構成しています