極地で磨いたハウスメーカーの技術力を
新しいトレーラーハウスに凝縮して商品化
システムレポート|ミサワホーム
同社は半世紀以上にわたり南極・昭和基地の建物建設のサポートをしており、これまで累計36棟に及ぶ建物を受注してきた。過酷な自然条件下でも安全で快適な建物を、建設技術者ではない隊員の力を借り、短工期で施工する必要がある昭和基地への納品を通して、工業化住宅の技術を磨いてきた。
2017年、同社とミサワ総研(ミサワホーム総合研究所)はJAXA(宇宙航空研究開発機構)と「持続可能な新たな住宅システムの構築」について共同研究を開始。20年にはその実証実験として同社とミサワ総研、JAXA、極地研(国立極地研究所)4者連携で南極・昭和基地をフィールドに同社開発の「南極移動基地ユニット」の共同実験が行なわれた。基地ユニット2基に輸送用ソリを付けて雪上車で牽引、移動先で連結することによる構造物の柔軟な拡張・縮小の検証、木質接着複合パネルの外壁などによる集熱蓄熱システムや外壁の太陽光発電ユニットによるエネルギー利用の最適化の検証、ユニットに搭載したセンサーによる温湿度・CO2などのモニタリング検証を経て、現在同ユニットはより内陸部の「ドームふじ観測拠点Ⅱ」周辺で観測隊員の居住施設として活用されている。
「JAXAや極地研との共同研究の成果は当初から国内向けに展開を目指していました。移動する基地ユニットを移動する住空間として捉えた際に、必然的にトレーラーハウスへとたどり着きました。これが『ムーブコア』のルーツです」と、同社調達・生産本部特需部担当部長の北川順氏はふり返る。
「ムーブコア」の特徴として第1に挙げられるのが軽量さだ。木質パネル接着工法によるモノコック構造で上部ユニット(居住部分)の重量は約2700㎏に抑えられ、シャーシ部分と合わせても3・5t、全体の寸法は全長6・14m×幅2・49m×高さ3・78mとなっている。これは道路運送車両の保安基準第2条の制限内であり、「ムーブコア」は車検付トレーラーハウス、つまり1台1台にナンバーが付与される、道路使用許可なしで公道を走行できる車輌となっている。移動が自由で、車輌ゆえに建築物ではないため崖地や国立公園内など建築制限が厳しい場所にも設置できる機動性は大きな特徴だろう。
モノコック構造のため柱が不要で内部スペースが広く取れ、また2台以上を容易に接合できるためレイアウトフリーであることも見逃せない。従来、トレーラーハウスを2台以上接合するには接合部に何らかの造作が必要で、容易に移動できなくなることから車輌ではなく建築物と判断される可能性があった。「ムーブコア」では接合部に特殊なスライドファスナーを用いることでこの懸念を解消している。
「南極で実証された技術」は、耐久性にも優れる。同社の住宅同様に高断熱・高耐力の木質パネル接着工法を採用しており、高い耐久性、断熱性、防音性を発揮する。内装も戸建住宅の設備を採用し、細部までこだわった住宅デザインと、建具などを含めた自社工場での一貫生産でハウスメーカーならではの居心地のよい上質な空間を実現。収納空間として設けられた「蔵」は内外から使用できるようになっており、宿泊施設の場合、事業者のリネン交換等の使い勝手も考慮されている。
・・・[記事後半部分は本誌にて]