オープンスペースとマネジメント
VIEWPOINT
2015年10月1日にオープンした「てんしば」(大阪市天王寺区)は、高さ300mを誇る超高層複合ビル「あべのハルカス」、大型商業施設「あべのキューズモール」、ファッションビル「天王寺MIO」などが集積するJR・大阪メトロ「天王寺」駅、近鉄「大阪阿部野橋」駅、阪堺上町線「天王寺前」駅に隣接する、大阪市立天王寺公園のエントランスエリアがリニューアルされたものである[図表1]。
約26haを有する天王寺公園は、「天王寺動物園」「大阪市立美術館」、旧住友家の日本庭園「慶沢園」、大坂夏の陣で真田幸村の本陣となった茶臼山・河底池の4つのエリアからなる。それまでエントランスエリアは大阪市が有料ゾーンとして管理してきたが、12年12月に策定された「大阪都市魅力創造戦略」を受け、市は「天王寺公園エントランスエリア魅力創造・管理運営事業」の提案を公募、近鉄不動産㈱(当時、旧近畿日本鉄道㈱)が事業者として選定された。同社は15年10月1日から20年間、エントランスエリアおよび茶臼山北東部エリアの管理運営を受託、約12億円を投じてエントランスエリアをリニューアル、約7000㎡の芝生広場を中心に、周囲にレストラン・カフェやライフスタイルショップ、子ども向けのプレイグラウンド、フットサルコート、コンビニエンスストアなど11の店舗を配した「てんしば」として生まれ変わったという経緯をもつ[図表2]。
リニューアルオープンからこの10月で10年、「てんしば」の来場者数は飛躍的に伸びた。市に提出された提案書では年間目標来園者数は350万人とされていたが、オープン2年目の16年度に早くも約380万人を達成、その後400万人台で推移し、コロナ前には500万人近くの来場者を数えた。コロナ禍中は400万人を割るほどに落ち込んだものの、22年度からは再び右肩上がりとなり、24年度の年間来場者数は約700万人(推計)と、当初目標の2倍の人を集めている。
「コロナ禍がひと段落したとき、この『あべの・天王寺エリア』で最初に人出・売上げが戻ったのも『てんしば』でした」と語るのは、20年6月からこのプロジェクト担当となった近鉄不動産㈱アセット事業本部ハルカス事業部天王寺公園事業担当課長の藤坂将至氏だ。
好調な集客を支える取組みとして藤坂氏が第一に挙げたのは「芝生の維持・管理」へのこだわりだ。「『てんしば』と名乗るほどですから、年間を通じて緑の芝生をキープすることにはどこよりも力を注いできました」(藤坂氏)。芝生の維持・管理はグループの近鉄造園土木㈱に委託、スタッフ3人が常駐し、継続的な播種や育成・手入れによって冬季でも青々とした芝生を保っている。
そのこだわりについて藤坂氏は、「公園は憩いの場所ですから、その中心である天然芝の状態に気を配り、年中気持ちよく芝生に座っていただけるようにしています」と語る。実際に芝生広場を歩いてみたが、季節柄、青々とした芝生は当然ながら、清掃が行き届き、それが来園者の美観に対する意識をさらに高めるという好循環が醸成されていることがうかがえた。
もう1つの取組みの柱となるのが・・・<続きは本誌にて>