音楽特化型・収容規模2万人超・ホテル等との一体型開発で
他施設にない強みを発揮
CASE STUDY
横浜市のみなとみらい21(MM21)地区に2023年9月29日開業したKアリーナ横浜。世界最大級となる約2万人を収容する音楽に特化したアリーナとして誕生して1年半。その間、同施設は、24年12月16日に発行されたアメリカの音楽業界誌『Pollstar』に発表された世界のアリーナランキングにおいて2位を獲得。これは23年11月16日〜24年11月13日の動員数を集計したもので、同施設は開業早々にアメリカ、マディソン・スクエア・ガーデンに次ぎ、年間動員数約185万人という記録を打ちたてている。
運営主体の㈱Kアリーナマネジメント代表取締役社長・田村剛氏によれば、「コロナ禍の反動で、全世界が音楽の興行を欲していたタイミングでブッキングを開始することができ、マーケットを取り込めたことが大きかった」とし、また同時期、K‒POPやアニメなど映像と連動した新たなコンテンツの台頭によってマーケットが拡大、その流れをつかむことができたこともまた、成功の要因に挙げている。
同施設の24年の年間稼動率は7割超を記録、25年はさらに8割程度を見込む。田村氏は、「アリーナビジネスはこれからも海外含めてスポーツ併用型が主流となるでしょうが、そんななか、あえて音楽に特化し、かつ収容人数2万人という世界的にも数少ない規模に振り切ったことが他の施設にない強みとなり、結果として評価いただいたのではないか」と分析している。
アリーナの開設にあたっては、アーティスト、観客、イベンターという三方にとって高品質にこだわった。延床面積約5万3,853㎡、地上9階建て、構造としては1階のアリーナに加え、スタンド席をロアー、ミドル、アッパーの3層とし、ステージに向かってスタンド全席を扇状に配置してどの席からもステージが正面に見えるように工夫。音響、映像、照明など舞台特殊設備には業界最高峰のものを揃え、アーティストからは「観客との距離が近く、歓声が上からおりてくる感覚がありモチベーションにつながる」との感想が寄せられている。観客からは「音のよさはもちろん、どの席からも見やすい」ことで定評がある。
ことに設営面では常設の設備を充実させることで、イベンターにとっての使いやすさとコスト削減にこだわった。たとえば機材を積んだ11tトラックが養生不要でアリーナに乗り入れられるのはもちろん、電源車の持ち込み不要、常設されたステージ機材を総計120tの重さまで吊れる装置をステージまで下ろして設置できるようにするなど、設営・撤収作業を大幅に省力化した。これにより設営時間が短縮されコストが抑えられるほか、業界の人手不足にも貢献。ひいてはアリーナの利用日数の増加にもつながっているという。
「イベンターにとって当施設は設営にかかわるトータルコストを長期的に抑えることができる施設。他方、アーティストにとっては満足度が高く、再びこのステージで演奏したいと思ってもらえる場所。こうしたことが興行側のリピートの高さにつながっているのではないか」と田村氏は説明する。
さらに同施設の特徴といえるのが・・・<続きは本誌にて>