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――SEA STORY[東京都港区]

参入7年の海洋散骨事業者
国内外48 の海域で年間1,400柱超を実施

[特集]拡大する埋葬事業|CASE STUDY

2026年7月20日・海の日、社名を新たにした㈱SEA STORY(旧社名SPICE SERVE、本社東京都港区)は、海洋散骨クルージング「海洋記念葬®シーセレモニー」を展開する。代表取締役社長CEOの山田康平氏は、全国海洋散骨船協会の監事、日本海洋散骨協会の東日本支部長でもあり、国内での海洋散骨に精通している。


故人を偲ぶ場として
海上法要とのセットプランが需要増

 ㈱SEA STORY は2009年に設立し、翌年10月より貸切クルージング事業「Anniversary Cruise®」を開始し、13 年には自社船舶による旅客不定航路事業やチャータークルージング事業を、15年には第2種旅客業事業を開始するなど、クルージングを中核に事業展開してきた。そんななか、19年2月、「海洋記念葬®シーセレモニー」で海洋散骨に事業参入した。それまで誕生日・結婚式などの記念日を船上で過ごしてもらうサービスを提供してきたが、その延長で、お別れの記念日を海洋葬に活かすのはごく自然な流れだった。

 海洋散骨の実施件数は順調に推移してきた。24年度に年間1,000 柱程度だった件数は、25年度に1,400 柱を超え、26年度も同程度が見込まれる。散骨海域も国内外合わせて48エリアにまで拡大した。「そのため全国から依頼がふえています。エリアとして伸びているのは沖縄県で、逆に海外で人気のハワイは円安の影響を受け伸びは鈍化しています」と同社セレモニー事業部部長の島田快氏は語る。

 依頼者のトレンドにも変化がみられる。同社では船舶1隻を貸し切って家族・遺族が乗船し、船上でセレモニーを施行し散骨する「ファミリー散骨プラン」、複数の遺族が乗船し、海域で1組ごとにセレモニー・散骨を行なう「合同乗船散骨プラン」、スタッフが代行してセレモニー・散骨を行なう「代理散骨プラン」の3つを提供しているが、年々「代理散骨プラン」の割合が高まっているという。

 同社のデータによると、貸切・合同とも乗船する1組当たりの人数は減少傾向にある。以前は1組当たりの平均人数は6人強だったが、ここ最近は5人弱で推移している。しかし、出航回数はふえているので年間の乗船総数は以前と変わらない。「乗船人数が減り、貸切から合同散骨へ、乗船から代理散骨へシフトしています。これは葬儀で直葬がふえているのと同じで、物価高騰など世の中の動きに連動しているような気がします」と島田部長。実際、お客様から「値段が安い会社はたくさんありましたが、御社でやって本当によかった」と高評価をいただくことが多く、同社では「金額のより安い会社と比較対象にされていて、より価格を意識して選ぶお客様がふえている」(島田部長)と捉えている。一方で、30 人規模の貸切乗船散骨では、奏者5人で故人が好きだった曲の生演奏でお見送り、精進落としは寿司職人が出張乗船、予算300 万円規模という高単価の案件受注もあるというから、海洋散骨でも二極化が進んでいるのかもしれない。

 島田部長が話すように、価格で事業者を選ぶという依頼者の意識は、海上での合同法要が盛況になっている要因の1つと考えられる。確かに、貸切で海上法要をする場合、料金は比較的割高になる。特に、配偶者を亡くした夫または妻1人、あるいは親を亡くした夫婦2人の場合は貸切での海上法要の敷居は高い。そのため、同社では「散骨した方々の心のケア」として積極的に海上合同法要を実施しており、定員20~30 人はすぐに埋まるという。

 「散骨という、ある意味『手離れのいい』葬法を選択した依頼者でも一定数は法要という形で故人を偲ぶ場を欲しています。海洋散骨のさらなる市場拡大には、法要もセットで提供していく必要性を感じています」と島田部長は言う。現状、合同法要は夏季と冬季の年2回の実施だが、需要が高まっていることから同社では実施回数の拡大も検討している。

 同社では粉骨サービスも手がけているが、「樹木葬で埋葬するために粉骨だけお願いしたい」「分骨して樹木葬と海洋散骨の両方」といった依頼がふえているのも最近のトレンドだ。七回忌などの法要後の合祀の代わりに海洋散骨を行なう樹木葬霊園もあり、同社ではそうした霊園事業者との提携事業も行なっている。

業界への影響が大きい
「一般不定期航路事業」の登録

 最近の海洋散骨業界のトピックとして、島田部長は「船舶の許可制から登録制への移行」をあげる。船舶を用いた海洋散骨事業は、従来は海上タクシーと同じ「人の運送をする不定期航路事業」などの届出・許可制だった(届出をしない事業者も多くあった)が、25年4月1日より「一般不定期航路事業」として登録制が敷かれた。それに伴い、欠格事由の該当確認・事業停止や事業取消の行政処分の対象となるのはもちろん、運行管理者の設置・船長資格取得のための実務経験などの義務、登録免許税、より高額な船客傷害賠償責任保険など
の負担が課されることになった。制度移行は海洋散骨業界を狙い撃ちしたものではなく、さまざまな船舶の事故・危険事例を受けてのものだが、業界への影響は大きい。

 「いままでグレーゾーンでやっていた事業者が淘汰されていくという見方もできますが、一方で個人事業者が費用や人材面で登録制に対応できず、資本力がある会社だけが生き残っていくのではないでしょうか」と島田部長は懸念する。実際、廃業を余儀なくされた個人事業者も多いという。さらに、費用や人材面などで登録制に対応できず、だからといって廃業もできない「違法操業」事業者がふえると島田部長は危惧するように、登録制は27 年3月31日までの移行期間中で、事業者はその間に登録を済ませる必要がある。しかし、ある都道府県では十数社ある海洋散骨事業者のうち、事業登録を済ませた事業者が3事業者しかいないという。この登録問題は業界の大きな課題といえるだろう。

横浜市のふるさと納税返礼品に採用され
認知拡大に貢献

 同社の海洋散骨は近年、生前問合せがふえる傾向にある。施行全体に対して10%以上になるという。同社ではこれまで散骨を希望する人に向けて、自社パンフレットとともに「生前散骨意思カード」を配布してきた。生前問合せの増加はその努力が実ったものだといえるが、課題もある。生前問合せのうち、相当数が「おひとりさま」によるものであり、そうした場合は死後事務委任で散骨を実現しようとしても、費用面で折り合わず散骨ができない事例が出てきたのだ。経済面で散骨ができない故人をどう救済していくか、これについては明確な答え
がみつかっておらず、大きな課題となっている。

 あるデータによると、Web上での「海洋散骨」のキーワード検索数は減少しているという。同社では「海洋散骨が十分浸透してきたわけではなく、現状は既存事業者で食い合いをしているだけではないか」(島田部長)と捉え、海洋散骨のよさを世の中にアピールし、認知度をさらに上げていかなければならないとする。

 その1つの取組みとして同社では散骨海域まで船を出し、船上の雰囲気やセレモニーの流れを体験してもらう体験クルーズを定期的に開催している。毎回、葬祭事業者を中心にほぼ満員で運航するという盛況ぶり。メディアへの露出も果たし、今年2月に実施した海上合同散骨は報道番組の取材を受けた。また、24年からはこの海洋散骨体験クルーズのチケットが横浜市のふるさと納税返礼品に採用された。ふるさと納税返礼品は本社をおく東京都港区でも採用される見込みで、今後のさらなる認知拡大が期待される。

 同社では今後、地元漁業者と折衝面などで折り合わず、棚上げになっているエリアを開拓することで、全国の散骨海域をさらに広げ、「多くの希望者が故郷の海で散骨できるようにしていきたい」(島田部長)と理想の実現に向けて邁進していく。


月刊フューネラルビジネス9月号「特集|拡大する埋葬事業――樹木葬・納骨堂・散骨」では、SEA STORYのほか、樹木葬・納骨堂・散骨事業に取組む計7社の事例を掲載しています。

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