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――燦ホールディングス㈱[大阪本社:大阪市北区、東京本社:東京都港区]

業界の発展と地位向上に向け牽引
リーディング企業のHD化

葬祭業が確固たるビジネスとして確立されていなかった時代に、金融、証券など関西経済圏の中枢ともいえる大阪・北浜に、1932(昭和7)年、公益社が誕生した。94年3月には大阪証券取引所新二部に株式上場を果たし、同年5月には東京に進出。2004年に燦ホールディングス㈱に商号変更・持株会社となり、会社分割により新たに設立した㈱公益社が葬祭事業および運輸事業を承継し、新時代に向けたライフエンディングの総合サービス企業へのスタートを切る。
同社社長である播島聡氏に、ホールディングス化の意図、そして今後の展開について話を伺った。

「第3の創業」の幕開けとなる
ホールディングス化

 燦ホールディングス(以下、燦HD)の歴史は、大きく3つに分類することができる。1つは「第1の創業」ともいうべき1932~93年の期間だ。冒頭に記したとおり、公益社は32年に創業し、葬祭業という新たな産業を根づかせるべく、時代を先取りした葬儀カタログの作成や車内広告などを積極的に展開。71年には、白鳳時代(7世紀後半)の寺院の様式を模した大型会館で、全国でも近代的な葬祭会館の先駆けといわれた千里会舘を開業する(2007年に建替え)。2つ目は、1994年~2003年までの「第2の創業」である。この時代は、葬祭会館が急速に広がるなか、同社は葬祭事業者としては初の株式上場と東京進出を果たす。そして、「第3の創業」の幕開けが、04年に設立された持株会社・燦HDであり、これにより業界のリーディングカンパニーとしての地位を確固たるものとした。

 05年には鳥取県米子市を拠点に葬祭事業を展開する㈱葬仙の全株式を取得、完全子会社化。翌06年にも、兵庫県明石市を地盤とする㈱タルイの全株式を取得し、同様に完全子会社化した。この一連の流れについて播島社長は、「03年に社長に就任した吉田武は、以前から、『元来、葬儀とは地域社会のなかで故人の社会的役割を引き継ぐ遺族を見守り、残された人をサポートする意味をもつものだったが、人間関係が希薄化するなか、そのサポート役が不在となるケースが散見されるようになりつつある。そうしたなかで、それらのサポートを行なう役割を葬儀社が担う必要があるはずとの想いで、周辺事業(ライフサポートビジネス、現ライフエンディングサポート)の柱をつくる必要がある』と語っていました。それらを具現化するために持株会社制度の特性を活かして異業種分野へ参入(もしくは提携)したり、積極的なM&Aを行なっていくという方針をとったのです」と語る。つまり、ホールディングス立ち上げのきっかけは、志をともにする同業他社との連携はもちろん、故人を亡くして悲嘆に暮れる遺族らを支える手助けから、生活全般を支える事業領域として葬儀周辺産業、高齢者関連事業、専門人材教育事業といった分野への参入を視野に入れたものだった。

 新規事業分野に参入するにあたり、「いくら消費者の生活全般を支えるライフサポート事業を手がけるとしても、葬祭ブランドとして地域に浸透している公益社という名称ではその色(葬儀)が濃すぎるのではないかという判断もあったと思います」と播島社長は推し量る。現在では、介護・福祉事業を展開する葬祭事業者も数多いが、その時代は、「葬儀社がその分野に参入して……」と穿った見方をする人が多かったなかで、意欲的な経営判断を下したといえる。

 いずれにしても、燦HDグループとして消費者の日常生活をサポートすべく、現在のグループが編成されていく(図表1)。ただし、設立当初から現在の体制が構築される間にも多くの試行錯誤があったという。たとえば、周辺産業への進出として設立された仏壇販売のユーアイや霊柩事業等を手がける関西自動車、セレモニースタッフの採用・育成・管理・派遣を展開するエクセル・スタッフ・サービス(現・エクセル・サポート・サービス㈱)、公益社の物流および倉庫・資材部門、守口倉庫の倉庫事業を会社分割して設立されたエクセル・ロジ、生花事業と料理事業を担っていたデフィ、これら事業会社の統合整理(事業吸収合併)などがそれである。こうした過程を経て、現在は6社グループが形成された。

図表1

信用・信頼を損なわない
旧ブランドを活かす考え方

 ホールディングス化には、もう1つの狙いがある。それは、「成長しつづける企業」であることの具現化だ。「企業成長を続けるためには、まずもって葬祭サービス業に従事するすべての人が、その仕事に誇りをもって、家族にも堂々と葬儀社の社員であることを言える環境を整備することが大切」と播島社長は語る。そのためには、業界全体の地位向上とともにサービスのスキルアップ、さらには、相談に訪れる消費者からの信用・信頼を得ることが大切になる。特に、葬祭業は地域密着型の産業として成立していることから、企業ブランドや、会館などを改称することは、地元住民に違和感を抱かせ信頼を損なうことになり兼ねない。

 M&Aでは、基本的に買収側の屋号等で既存会館名を統一することが多いが、ホールディングス傘下であれば、運営企業と会館名は旧来のまま継続できるため(新規出店の場合、ブランド名を変更しても問題はない)、地元住民に与える印象は悪くならない。ホールディングス側にとっても、地元住民からの反発も少なく、かつ安定した顧客を抱えながら最大限のパフォーマンスを発揮する体制を構築しやすいというメリットがある。

 燦HDグループでいえば、葬仙やタルイそれに該当するが、播島社長は、「地元住民から親しまれたブランドを残さずして事業継続を行なうことは、かなりむずかしいケースもある。信頼と実績、さらに人財も引き継いでいるのであれば、地域住民が受け入れやすい形を継続するという判断もある」と事業会社および会館名は、慣れ親しまれたままで展開できるホールディングス化のメリットを語る。一方で、運営・営業に関わる指針については燦HDが決定したものに則って従事してもらうというガバナンスの徹底も必要になるとも指摘する。


続きは本誌でお読みいただけます。

燦ホールディングス㈱の概要

所在地:(大阪本社)大阪市北区(東京本社)東京都港区
設立:1994年(創業1932年)
代表者:播島聡
従業員数:47人(単体)、709人(連結)※2024年3月末現在
事業内容:持株会社、不動産事業、管理業務受託事業

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