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―― ㈱オームラ[福井県福井市]

開設当初から処置率7割超を維持
隣県葬儀社と連携し普及・拡大へ

福井県福井市を拠点に、葬祭事業を展開する㈱オームラ(社長大村直央氏)は、コロナ禍の只中にあった2021年8月、本社横にある旧「西木田合掌会館」(1979年開業)の1・2階を改築し、2階にエンバーミングセンターを、1階に家族葬および遺体安置室として利用できる「Viola Square」(以下、ヴィオラ)をオープンした。

修業先でエンバーミングを体感
十余年前からセンター開設を構想

 1926(昭和元)年創業の同社は、79年に福井市内初となる第1号会館「西木田合掌会館」を開設。現在、福井市内7か所、地域の葬祭事業者3社と共同運営する会館を坂井市内に1か所、計8か所の会館ネットワークを構築し、年間約570件の施行件数を誇る。

 エンバーミングセンターは、第1号会館である旧「西木田合掌会館」を改築し、その2階に設けたもの。1階は遺体安置室兼10人以下の家族葬向け式場を3つ備えるヴィオラとして、同時に改築し、21年8月10日にグランドオープンした。
 そのきっかけとなったのは、大村社長が家業を継ぐために、愛知県内の葬儀社で修業していた十余年前まで遡る。
「修業先では、それまで対面が叶わないと思われるような状態だった故人様をエンバーミングによって対面が叶うまでになるシーンを幾度となく体験させていただきました。その技術に感動し、家業に戻った際には、ぜひ、この技術を活かしたい」(大村社長)と、日本ヒューマンセレモニー専門学校に入学する。その後、義兄である早坂尊嗣氏もエンバーミング技術を習得するため同じ専門学校に進学。こうしてエンバーマー2人を抱える稀有な専門葬儀社となった。

 だが、「構想段階から、エンバーミングセンター開設に対して、社員からは“従来どおりの葬儀施行に注力すべきではないか”とする意見が多勢を占める時期もありました」と大村社長が口にするように、エンバーミングそのものに対する認識不足が、(特に)地方では大きいのではないかと指摘する。
 その背景にあるのは、「エンバーミングは、“火葬待ち”が頻発する都市部におけるサービスとしては有効だが、火葬待ちが生じにくい地方都市では不要という思い込みや、エンバーミングというサービスメニューを、“お客様にどのように伝え、商品として提供できるか”といった、提案の仕方を不安視するものだったのです」と大村社長。
 その後、大村社長自ら「エンバーミングのよさ」を社員らに幾度となく説明しつづけたことでその必要性の理解を得ていった。福井市内で小規模葬ニーズが拡大したのがその頃だ。安価な紹介サイトを介する消費者がふえ続けると、葬儀の地域色などが損なわれてしまうことを懸念し、10人以下の小規模葬特化の施設開発に取り組むとともに、エンバーミングサービスと何らかの形で融合できないか検討を開始する。小規模式場であっても高い施行単価を維持できる施設づくりを目指したのがヴィオラであり、エンバーミングセンター開設への弾みともなった。
 言い換えれば、付加価値サービスとして提供するエンバーミングを、式場(ヴィオラ)利用とのパッケージ化商品として提供することで、“地域の葬送を変えずに、かつ、(小規模であっても)高単価を実現する施設”へと変貌させたのだ。

高い受注率を背景に
エンバーマーを増員

 旧西木田合掌会館の2階を改築して誕生したエンバーミングセンターの運営は、エンバーマーである大村社長と早坂氏の2人が携わることとなった。施設内には2台の処置台のほか、薬品庫など、必要最低限の諸室で構成。
 本社に隣接していることから、施設内には簡易的な事務室がある程度。建物裏の1階に搬送車が入庫するスペースがあり、そこから遺体を処置室まで移動する。遺体安置はヴィオラのほか、隣接地に誕生した新「西木田合掌会館」(21年3月開業)でも受け入れが可能だ。なお、エンバーミング処置代は、16万5,000円(税込・搬送費込み)を基本とする。

 

                         ――――――中略――――――

 

 では、気になる稼動状況はどうか。北陸初となるエンバーミング施設だけに、その動向については業界関係者から注目を集めたが、初年度のエンバーミング受注率は全施行中、7割超を占める勢いで推移したそうだ。
 

 この点について、大村社長は、「スタッフに対するエンバーミングへの理解を高めたことが、エンバーミングのよさを、自信をもって葬家に伝えることにつながったのではないかと思います」と語る。こうしたスタッフ力をもとに、着実にエンバーミングのよさを伝え続けた結果、同社における月別のエンバーミング受注率は、図表1のとおり高率を維持。
 エンバーミング処置を依頼した遺族からも、「コロナ禍のなか、不満足なお別れがこの技術で少なくなることを願います」「エンバーミングのおかげで県外に住んでいる親族と、海外に住んでいる親族が帰ってくることができ、家族みんなでお別れすることができました。エンバーミングがなければ全員が集まることはできなかったと思います」「悩んで決断したエンバーミングでしたが、お願いして本当によかったです。最後の舞台だからこそ、美しく、きれいに見送ることができたのも、親身にアドバイスをいただけたからこそでした」といった声が寄せられるなど、葬家および会葬者はもちろん、寺院関係者、医療・介護・福祉施設関係者からも、エンバーミングのよさが評価されているそうだ。
(続きは本誌で・・・)

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