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――榊原啓士氏、龍石泰樹氏 日本M&Aセンター 業種特化事業部ダイレクトマーケティング部

後継者不足の解消、エリア補完、人材確保など
事業展望を開くM&Aをサポート

近年、親族や従業員等に後継者候補がいない場合、M&Aという手法で会社を売却し、第三者へ経営を託す事業者がふえつつある。それに伴い、中小企業のM&Aを専門に扱う仲介会社がふえてきたことや、M&Aの認知の高まりとともに葬祭業界でもその動きが表面化してきた。そこで、累計7,500件超のM&A・事業承継の成約数でトップランナーの(株)日本M&Aセンター(本社東京都千代田区、社長三宅卓氏)で葬祭事業領域を担当する同社業種特化事業部ダイレクトマーケティング部部長榊原啓士氏と龍石泰樹氏に、M&Aの現状と葬祭業界におけるM&Aの可能性などについて話を伺った。

業種特化事業部ダイレクトマーケティング部葬儀領域担当の 龍石泰樹氏と同部部長の榊原啓士氏
業種特化事業部ダイレクトマーケティング部葬儀領域担当の 龍石泰樹氏と同部部長の榊原啓士氏

業種特化事業部ダイレクトマーケティング部葬儀領域担当の龍石泰樹氏(左)と同部部長の榊原啓士氏

業界再編と活性化に期待
昨今は若い経営者が選択するケースも

――貴社の概要についてお聞かせください。

 

龍石 弊社は1991年4月に設立し、今年で32年目を迎えました。M&A成約実績は昨年末時点で累計7,500件を超え、M&A仲介事業者としては国内実績ナンバーワンとなっています。

 

もともとは代表取締役社長である三宅卓と取締役会長である分林保弘が同じ会社に勤務しており、業務の一環として全国の会計事務所や金融機関などと接点をもつなかで、多くの国内企業が抱える事業承継という課題に着目し、M&Aという手法を用いてこれらの課題を解決していこうという目的で独立起業しました。それまでの仕事で培った人脈をベースに、各地の信用金庫や地方銀行、さらに大手金融機関や証券会社へとネットワークを拡大することで、全国の企業に対してM&Aを支援できるまでに業容を広げ、国内ナンバーワンのM&Aネットワークとしての現在の立ち位置を築いてきました。近年ではASEANを中心に5拠点を設立するなど海外へも進出しています。

 

業種や企業規模、商圏エリアにとらわれない、きめ細やかなM&A支援を全国規模で行なえることが最大の強みとなっています。さらに弊社では、東証市場のなかでも近年注目される東京プロマーケットへの上場支援も手がけており、M&A以外にもさまざまな側面から企業をサポートしています。

 

――M&Aに対してネガティブな印象をもつ人も少なくありません。国内におけるM&Aの実情と、そのメリットについてお話しください。

 

龍石 少子高齢化が急速に進行する日本社会において、多くの国内企業が後継者不足という課題を抱えています。M&Aはそうした課題解決の有効な手段となり得ます。加えて、販路の拡大や経営資源の共有化により譲渡側企業と譲受側企業の双方にシナジー効果をもたらすことができます。

 

葬祭業界にもいえることですが、これまで長年にわたって業界の発展を支えてきた中小事業者が、後継者不足によって経営が立ち行かなくなると、業界全体の衰退を招きかねません。M&Aは個々の企業をサポートすると同時に、そうした業界の構造的な課題を解決し、業界再編と活性化にもつながるものです。

 

譲渡側企業の具体的なメリットとして、まずは創業者利益の獲得があげられます。また、銀行からの融資調達の際に必要な個人の連帯保証なども解除できるので、融資の調達がしやすくなるでしょう。さらに、さまざまな業種で人材不足が顕在化している昨今においては、従業員の確保も大きなメリットとなります。雇用待遇の改善や新しいキャリアパスの提示が可能となることで定着率が向上、さらには親会社との人材一括採用などによって、新たな人材をスムーズに確保することができます。

昨今のM&Aの特徴的な傾向として、譲渡側企業の経営者の若年化(図表1)があげられます。自社の企業規模では融資調達などがままならず、思うような投資ができないといった課題に直面し、自助努力だけでは限界を感じてM&Aを希望する若手経営者がふえているのです。親会社との関係性のなかで資金力を増強し、事業を成長させるための手段としてM&Aのメリットを活用するこれらのスタイルは「成長型M&A」「非事業継承型M&A」と呼ばれ、近年注目を集めています。

 

榊原 相方の譲受側企業にとっても、M&Aは経営における選択肢の1つとして考えられています。企業が成長し、事業拡大や新規事業に着手する際に、自社単独でイチから事業基盤を築き上げるではなく、M&Aによって企業を譲受したほうがスピードやコスト面ではるかに効率的です。

 

また、譲渡側と譲受側双方のメリットとして、それぞれの企業が扱う商材を販売することで、販路が広がり、より質の高い商材としてブラッシュアップするといったシナジー効果も期待できます。

図表1 譲渡企業の成約時の代表者年齢分布

6割が黒字廃業
深刻化する国内企業の後継者不足

――事業承継を目的としたM&Aの現状はどのようになっているのでしょうか。

 

龍石 中小企業庁は、2025年までに約127万社が後継者不在の問題に直面し、そのなかの約60万社が黒字企業との試算を発表しました。つまり、きちんと事業継続をして利益を出している企業が、後継者不在という理由で廃業せざるを得ない可能性があるのです。実際、21年の1年間で約4万4,000社が廃業を選択し、そのうち6割が黒字廃業でした。このまま放置すると、25年までに650万人の雇用とGDPでおよそ22兆円が損失する恐れがあります。この60万社を、M&Aをとおしてサポートしていこうというのが、弊社設立以来の事業目的の1つとなっています。

 

一方、21年のM&A件数は、公表されている数字としては4,280件、22年は4,304件と、いずれも過去最多を更新しています。未公開の案件もあるので、実数としてはもう少し多いでしょう。特筆すべきは、中堅・中小企業が譲受側になるケースがふえている点です。かつては上場企業が行なうものというイメージが強かったM&Aが、多くの企業にとってさらなる成長の手段として認知されはじめているといえます。

 

実際、22年の国内企業における後継者不在率は全国で57.2%と、前年の61.5%から4.3ポイント低下し、はじめて60%台を割り込みました。M&Aに対するイメージの変化や、譲受企業の若返りなどを背景にM&Aの件数が増加し、さらに国や自治体、金融機関など、事業承継へのはたらきかけが加速しており、中小企業への波及が促されていることが要因としてあげられます。

 

――事業承継を目的としたM&A件数に地域差はありますか。

 

龍石 はい。実際、都道府県別の後継者不在率(図表2)をみると地域差が顕著です。島根県や鳥取県といった中国地方や、北海道、東北の一部エリアは不在率が高い傾向にあります。つまり弊社からみれば、いまだにM&Aの選択肢が十分に届けられていない地域があることを意味しています。今後は、その地域で提携する金融機関や会計事務所などと連携を図りながら、M&Aの認知と選択肢の提示を図っていく必要があると考えています。

図表2 都道府県別の後継者不在率
図表2 都道府県別の後継者不在率

(葬祭業界におけるM&Aの意義については本誌で)

(株)日本M&Aセンターの概要

所在地  東京都千代田区丸の内1-8-2
鉄鋼ビルディング24階
設立   2021年4月(創業1991年4月)
代表者  三宅卓
事業内容 M&A仲介、上場支援等

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