マグネットスタジオ
【運営事業者の視点】
東京都内を中心にホール、会議室の運営事業を展開する㈱マグネットスタジオ。同社はアパレル系イベントの運営からスタートし、2000年以降、都市開発の波に乗り、東京、品川、五反田、渋谷といった主要駅周辺エリアに建設される高層ビルのフロアを活用したホール、会議室の運営事業へと進出した。
26年現在、「大手町三井ホール」(OtemachiOne3階)、「ヒューリックホール東京」(有楽町マリオン11階)をはじめ、運営施設数は17を数える。そのうち、公共2施設以外はすべて民間施設で、ホールが3分の2、残りが会議室となる。いずれも主要駅直結または徒歩5分圏内という好立地にある。
同社では主要事業である「運営・管理」だけでなく「コンサルティング」も手がけることで同業他社との差別化を図る。「まずはビルオーナーが『何をしたいのか』『何を目的につくるのか』を確認することが第一歩。そのうえで長年の運営経験と実績に基づいて提案をしていきます。数年の準備期間を経て、そのまま当社が運営全般を手がけるという流れです」と同社執行役員開発事業部部長水口力氏は説明する。
ビル所有者には三井不動産㈱、ヒューリック㈱はじめ、NTT都市開発㈱、東急㈱といった大手デベロッパーが顔をそろえる。「ここで多くのビルオーナーから求められるのが、街に人を集めること、街全体のにぎわいづくりです。街に人を呼ぶには稼動率を上げることが不可欠。稼動率を上げる仕組みをもっていることが同社最大の強み」と水口氏はいう。

通常、ホール運営会社はビジネス専門なら平日中心の企業イベント、エンターテインメント専門なら週末の音楽ライブなどを中心に手がけるのが一般的だ。そのため、曜日によって施設の稼動にばらつきが出ることが多い。
そこでマグネットスタジオでは、同じ会場で平日は会議やセミナーといった企業の「ビジネス利用」に充て、週末はライブやファンイベントといった「エンターテインメント利用」を組み込む手法を採用。「ビジネス+エンターテインメント」で複合的に運営することで、平日、週末のいずれにおいても稼動を獲得している。
「当社では、平日スーツ姿でビジネス系イベントの運営に携わる社員が週末にはライブスタッフとして会場に出向く。一人のスタッフが両方を一から回していく能力をもっているのは当社だけ」(水口氏)と強調する。
マグネットスタジオの主な収益源は施設オーナーから運営・管理業務を受託して得る運営受託料、加えてコンサル料となる。稼動率の向上によって運営会社としての付加価値が高まり、選ばれる事業者になっていることは間違いない。
マグネットスタジオが手がける施設の平均稼動率は8割超。ビジネス系イベントに特化した施設の稼動率は5割程度といわれるだけに、驚異的な数字を打ち出しているといえよう。
マグネットスタジオが手がけるホールの広さは平均で400〜700㎡。席数では500〜1000席程度。ビルインのため規模は限定的で、コンサートに適さない施設もある。そこで同社ではそうした条件を逆手にとり、週末は従来以上に多様なエンタメ系イベントの需要を取り込んでいる。
「たとえば昨今の〝推し活〞の一環として、握手会やトークショー、CD発売に合わせたリリースイベントの開催で利用いただくケースがふえています。コアなファンにとっては推しと過ごす特別な時間となり、非常に人気が高い。コンサートでは得られない楽しみもあり、これからさらに多様化していくでしょう」と同社ホール運営管理部マーケティング課課長萩原通友氏。それまで会場の広さや設備面でコンサートが開催できず数字が上がらなかった会場が盛り返すチャンスにもなっているという。

一方、平日のビジネス系イベントで昨今、圧倒的に多いのがIT関連のセミナーだという。「今後はAI関連でさらにセミナー開催の需要が高まるのでは」と萩原氏はみる。「IT関連のイベントでは照明や音響、映像によるインパクトある演出にこだわる企業が多い。当社では設計段階から舞台照明をはじめ、コンサートにも対応できる音響設備や高輝度プロジェクターなどを選定し、高度な演出要望にも応えられる環境を整えている」(萩原氏)。
また、コロナ禍が落ち着いた昨今、需要が高まっているのが「懇親会」。社内の会議や新製品のカンファレンスなどのあと、施設内で会場を移しての懇親会を要望されるケースがふえているという。「当社の運営施設のなかにはゆったりとした広さのあるホワイエをもつ会場や、ガラス越しに皇居の夜景を眺めながら食事を楽しむことができる会場も。ケータリングサービスなどの用意も万全です」(萩原氏)。
マグネットスタジオの運営スタッフは総勢120人ほど。すべて社員で構成され、それぞれが特定の施設を担当する。業務は営業にはじまり、予約受付からスケジュール管理、下見や催事打ち合わせ、見積もり書等の請求、入金管理、照明・音響・映像装置のオペレーション管理、営業実績報告といった運営・管理業務全般をそれぞれがマルチタスクでこなす。「窓口を一つにすることで、その人に聞けば予約段階から現場のことまですべてわかるという体制をつくる。失敗も含め本人が身に付けたノウハウを会社として蓄積し、誰もが同じレベルでお客様との対応ができるようにしておくことが重要」と水口氏はいう。
東京都心部の開発は一時期に比べて落ち着きをみせ、40年ごろまでの状況はすでにみえているという。今後の展開については、「これからも新規案件の開拓はもちろん、既存施設のリニューアルについても考えていきたい」と萩原氏。また24年には名古屋での施設運営も開始しており、今後はこれまで東京で培ったノウハウをもとに大阪、仙台、福岡といった大都市圏への進出も視野に入れていく。
〈運営事業者のほか、各デベロッパーのライブエンタメ事業への意気込みと見解は本誌で〉