――編集部
[特集]拡大する埋葬事業|INTRODUCTION
高度経済成長期以降、大きく様変わりした住まい方と近年の少子高齢社会は、事業存続の根幹を支える「働き手不足」といった喫緊の課題を突き付けただけでなく、本特集で取り上げる埋葬手法にも大きな影響を与えている。
かつて、亡くなった故人の遺骨は家族単位の家墓などに納められることが主だった。しかし、昨今の人間関係の(それがたとえ親族間であったとしても)希薄化や単身世帯の増加といったさまざまな要因が重なり合うことで、かつての墓守たる存在が失われつつある。これに加えて、「子どもたちに将来の負担をかけたくない」といった思いをもつ人がふえたことも埋葬手法の多様化に拍車をかけている。そうしたなか、注目を集めているのが「樹木葬」「納骨堂」「散骨(海洋散骨)」である。
樹木葬とは、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)にもとづき、都道府県知事等から墓地として許可された区域内でのみ実施できる埋葬で、自宅の庭や埋葬許可のない山林などに遺骨を埋めることは法律違反(墓埋法第4条や死体遺棄罪など)となる。したがって、多くの葬祭事業者は宗教法人と提携するなどして企画・販売代理店になることが多い。それゆえ、最も重要なのは、宗教法人との信頼関係を構築することである。なかでも総代との関係は特に重要で、「住職が事業参入に賛成でも、総代から反対意見が出されると計画そのものが破綻する恐れがある」という声を多くの葬祭事業者から耳にする。
納骨堂は、墓埋法上、「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設」と定義され、従来の墓地・霊園と同様に、その経営主体は原則として地方公共団体、宗教法人、そして公益法人等に限られている。このため、樹木葬同様、葬祭事業者はこれらを経営主体として提携していく必要がある。
一方、近年注目を集めている散骨とは、焼骨を粉状に砕き、陸地や水面にまく埋葬法である。しかし、墓埋法には、散骨そのものに関する規定は記されていない。とはいえ、場所を選ばずどこでもできるものではなく、関係法令や自治体の条例のほか、地域住民・漁業関係者への配慮は必須となる。散骨のなかで最もポピュラーなものは海洋散骨だが、先に記したとおり、明確な規定がなかったことから、漁業関係者をはじめとするさまざまなトラブルが生じていた。
こうしたことを受け、厚生労働省が2021 年4月に散骨事業者向けに「散骨に関するガイドライン」を、国土交通省も23年9月に「海上散骨に関するガイドライン」を船舶運航者向けに公表するなど、一定の指針が示されることとなった。
墓守不在(もしくはそのことに対する不安)という現実問題が浮上するなか、樹木葬・納骨堂・散骨といった新たな埋葬手法に対するニーズが拡大していくのは明らかである。このうち、法的根拠があるのは樹木葬と納骨堂。いずれも、墓埋法にもとづく(実際にはこれだけに限らないが)開発・運営が求められる。一方、散骨は厚生労働省と国土交通省が公表するガイドラインのみ。ただし、散骨関連の団体が中心となり法制化に向けた働きかけを行なっていることから、いずれ何らかの形で指針が発出されるかもしれない。したがって、今後、上述した3つの葬法を提供するには、それぞれの事業特性を理解しておく必要がある。そこで、本稿に続くOPINION でそれぞれの事業に精通している3氏から寄稿をいただいた。
自身も葬祭事業に携わっているJSOコンサルティング代表取締役社長である長谷川剛氏は、「葬儀から供養までのワンストップ化は葬儀社が目指すべき次世代のビジネスモデル」とし、樹木葬の提携先となる寺院開拓のポイントから自社の経営に好影響を与える収益構造などについて、実例を交えながら解説いただいた。
大都市部を中心に開発が進む納骨堂については、成世南海堂の代表取締役である阿部勉氏に将来展望と事業成功のポイントについて解説をいただいている。阿部社長によれば、「2040 年まで続く年間死亡数の右肩上がりを背景に、納骨施設に対する需要は高い水準で推移すると考えられるが、他の葬法をはじめとする利用者の獲得競争も激しくなるため、選ばれる納骨堂(価格、立地、交通利便性、施設の快適性等々)を見据えた開発が必須」であると強調する。
一方、全国海洋散骨船協会の和田睦美事務局長には、現状、国が示したガイドラインが唯一の行動規範として求められる海洋散骨について、その将来動向を予測していただいた。和田事務局長によれば、「毎年10%程度、市場規模が拡大していることを鑑みれば、樹木葬同様、新たな埋葬手法として注目を集めることが期待される。しかし、乗客の安全・安心の確保や海上交通に関連する法律、先に公表されたガイドラインを遵守することが大前提」と、安易な事業参入に警鐘を鳴らす。
とはいえ、3氏に共通するのは、少子化による承継者不足と人口の都市部集中、維持・管理費用負担の軽減化などを背景に、樹木葬・納骨堂・散骨は、葬祭事業者にとって葬儀から続くワンストップサービスとして欠かせない「有望なコンテンツ」であるという認識である。その実際については、CASE STUDYで取り上げた7社の取組みから、その事業性と事業参入の可能性について、読み取っていただきたい。