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“西の聖地”「湯らっくす」2号店が満を持して博多に降臨
ととのい至上主義とは一線を画す、新機軸確立への挑戦

共栄観光

【有力事業者のNEXTステージ】

熊本という地方都市にあって、全国のサウナファンから熱烈な支持を得、そこを目当てに来訪する目的客も多いことから〝西の聖地〞とも称される「湯らっくす」。同施設を運営する共栄観光ではいま、博多に第2号店の出店を進めている。
代表取締役の西生吉孝氏に、「湯らっくす」へのこだわりと2号店の概要を詳しく伺った。

共栄観光㈱ 代表取締役 西生吉孝氏
共栄観光㈱ 代表取締役 西生吉孝氏

共栄観光㈱ 代表取締役 西生吉孝氏

依然、若者層中心に
高評価維持する「湯らっくす」

 JR「熊本」駅から車で5分ほどのロードサイドに建つ温浴施設「湯らっくす」。熊本ならではの豊かな天然水を掛け流す深さ170㎝超の深い水風呂をはじめ、自身でサウナストーンに水をかけるロウリュサウナ、瞑想サウナ、アウフグースの導入などでも世に先駆け、サウナ通にも屈指のサウナ体験ができる〝西の聖地〞との評価が定着する。
 同施設については本誌2022年6月号特集でも詳解したが、現在、7月に向け、その第2号施設の建設が進む。本稿ではその意図や施設コンセプト、概要などにつき事業主体の共栄観光㈱代表取締役西生吉孝氏への取材をもとに明らかにする

 その前に熊本の湯らっくすのその後の変化や最新の状況などについて触れておこう。
 
 まず23年11月、〝サウナシアター〞と銘打った新サウナ「THIS IS IT」を開設。これは80人収容の大規模サウナ室で、男女共用。熱波師によるパフォーマンスを中心に、照明・音楽・香りの演出を一体化させストーリー性のあるサウナ体験の提供の場とし人気を得ている。かねてサウナへのエンターテインメントの融合を企図してきた西生氏ならでのコンセプトを具現化したものといえる。
 
 また翌24年5月には、既存の駐車場の一角を利用し完全個室型ホテル「宿っくす」を新設。すでに湯らっくす館内には2段ベッド式のドミトリーや、女性専用の半個室などの宿泊機能があるが、遠方からの目的客などを対象にさらに本格的な滞在とサウナ利用の受け皿としたものだ。

湯らっくす熊本 外観

熊本の地にあって年間約34 万人を全国から集める「湯らっくす」

 22年取材時には、それまで猛威を奮っていたコロナ禍も収束に進み、リベンジ的に来客数が急増するタイミングだったが、一方で、折からのサウナブームによる20〜30歳代の若者層の新規利用客が台頭、従来からの50〜60歳代の顧客層のニーズとの距離感をどう埋めるかに腐心する局面もみられたが、その後、どう推移しているか、西生社長に尋ねると「もはや完全に若者層が中心となりました。中高年齢層の方々もいらっしゃいますが、全体の1〜2割程度にまで減り、入浴を目的とする利用がほとんど」とのことで、客層のシフトが明らかとする。
 
 そうしたなか、この間の諸原価高騰などから値上げを余儀なくされながらも、年間来館者については人口約73万人の熊本市において約34万人と依然高水準を維持、文字通り聖地としてのポジションを堅持していることがうかがえる。

コンセプト「七人の侍」の
背景にあるもの

 そして満を持しての第2号施設がいよいよ開業する。出店するのは、福岡市の博多、九州最大の繁華街である天神エリア。
 その動機は何か。「私が湯らっくすを父、そして姉から引き継ぎ、社長になって今年でちょうど10年め。1つの区切りというわけではないですが、おかげさまで『西の聖地』と言われるまでになったものの、この間の〝攻め〞の姿勢が近年は何か〝守り〞に入っているのではないか、との疑問も自らに芽生え、新しいことにチャレンジしたいとの思いがありました」と西生氏。
 
 もとよりそのブランド力の高さから、これまでも2号店出店へのオファーは大手デベロッパーや商業施設などを中心に寄せられてきたが、自身が思い描く理想のサウナの実現に向け満を持しての出店に至ったようだ。では、今回の2号店で西生氏がフリーハンドで描こうとするサウナのあり方とはどのようなものか。

既存の子育て支援施設だった建物を全面改装する2 号店外観

既存の子育て支援施設だった建物を全面改装する2 号店外観(イメージ、以下同)

 すでにネットをはじめとした多くのメディアで報じられているように、そのコンセプトは映画『七人の侍』。実は西生氏が映画に対して強い思い入れをもつことは、従来の施設の随所にも垣間見られる。たとえば湯らっくすの代名詞ともいえる水風呂の強烈な滝『マッドマックス』をはじめ、女性向けの半個室施設『ブルーベルベット』などのネーミングは、いずれも氏が愛する映画のタイトルに由来する。
 
 今回の『七人の侍』は言うまでもなく黒澤明監督の名作であり、その世界観がベースになっているという。たとえば水風呂にしても映画のクライマックスで印象的な降りしきる激しい雨のなかでの合戦がモチーフになるといった具合だ。しかし、西生氏によると、単なる空間の造形やデザインだけにとどまらないようだ。
 
(中略)

オフィスワーカーの
サードプレイスとして

 第2号店の出店立地は、前述のように博多の中心地、天神エリアの一角。地下鉄七隈線「天神南」駅から徒歩9分、「薬院大通」駅からも徒歩7分。以前は幼児など子ども向けの支援施設として活用されていた建物が、コロナ禍以降、閉鎖されていたのを1棟丸ごと借り上げ約3億円を投じ改装。地上3階建て、延床面積約120坪の規模で、24時間営業。サウナは40人収容のメインサウナと、10人規模の小サウナの2つで構成。ともに男女がサウナ着着用のうえ一緒に利用できる。
 
 メインサウナでは熊本でも名高いアウフグースショーを行なうほか、興味深いのは小さなサウナで、『七人の侍』のなかでも「負け戦」の部分にインスパイアされたデザインにするという。
 基本は身を横たえ利用するサウナで、その場合の収容人員は10人にも満たないとのことで、明るく開放的な空間ではなく「深く沈み込んでいく潜水艦のようなイメージ」(西生氏)。しかもその熱源はかつてわが国のサウナ施設で主流ながら現在は多くが電気式にとって代わられたガス遠赤外線サウナストーブをあえて採用する。

40人収容のメインサウナではアウフグースショーを実施

40人収容のメインサウナではアウフグースショーを実施

水風呂には西生氏ならではの仕掛けが施されそうだ

水風呂には西生氏ならではの仕掛けが施されそうだ

 利用客層については前述のとおり立地的にワーカー層がメインと予想するが、利用形態としてはカップル客、あるいは家族連れまで広く想定する。特に福岡の場合、都市観光のデスティネーションとしてインバウンドの存在にも大きなものが考えられる。それを視野に入れ、飲食部分にも注力し、ここでは外国人客に人気の高い目の前で調理する鉄板焼きの提供を計画する。もとより天神エリアは飲食店の一大集積地のため固有の魅力づくりにより差別化を図る狙いもある。空間的にも中庭的な場を用意し、食のエンタメ化と快適性の創造にも意を凝らす方針で、施設全体で年間7万〜8万人の集客を目標とする。
 
 なお「天神にサードプレイスを」との想いの共有と施設認知を図るべく1000万円を目標にクラウドファンディングも今年5月後半から開始予定だ。

“ととのい至上主義”の先鋭化と
どうバランスを取るか

 新施設の具体的な全体像は竣工後あらためての機会に譲るが、最後に西生氏は現在のサウナマーケットと今後についてどのように見ているかを記しておこう。
 
 ここ数年の状況については、まず利用者側のサウナに対するリテラシー(知識量や実体験など)が格段に飛躍しているとの見方を示す。いわゆるサウナーという存在がブームを牽引してきたのは事実だが、その意見や見解がより高度化すると同時に、マーケットにおいて存在感を増している状況を指摘する。たとえばサウナ利用においては〝ととのう〞ことが至上目的になり、そのための方法論が狭義化し支配的になりつつあるのではということだ。
 
 そのことの善し悪しは別として、西生氏自身が求めるのは、こうしたいわば「ととのい至上主義」とは別のものだという。
「最近のお客様の動きを現場でみているとサウナ浴〜水風呂で〝ととのうこと〞が施設利用の第一義で、それが済めば余計なことはしない、長居はしない傾向にあるようです。ただ個人的には、それだけではなく、たとえばそこで食事をする、酒を飲む、休憩する、人と交流するなどといった、いわば〝ごろごろと過ごすような楽しみ方〞がもっとあっていいのでは、と思っています」としたうえで、日本ならではの〝ウェルネス〞として再定義することを提唱する。

屋上の外気浴スペースは都心立地ゆえ「黙浴」とする

屋上の外気浴スペースは都心立地ゆえ「黙浴」とする

「いわゆる医学的エビデンスなどには乏しいかもしれませんが、ゆったりと気持ちよく時間を過ごせるような環境づくりです。現在のととのい至上主義はこのまま行くと多くの人はついていけなくなるのではないでしょうか。いわばここ数年でとんがってきた部分を少し緩めてサウナにはもっと多様な楽しみ方もあるよね、ということが提案できれば、いま以上にいろいろな人たちにリーチすることが可能になるのではないかと思っています」としている。
 
 ブームとはその渦中で先鋭化と大衆化という二極分化がついてまわるものだが、サウナにおいても一時の流行ではなく人々のライフスタイルに定着を図るために双方のバランスをどう捉えるかは大きな課題。ととのい至上主義者の支持も厚いトッププレイヤーからのメッセージだけに一考に値するものといえそうだ。
 
(本稿は実際の記事より抜粋して再構成しています。記事全文は本誌にて)

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