執筆|サヴィルズ グローバル・レジデンス開発コンサルティングチーム/サヴィルズ・ジャパン㈱
「ブランデッドレジデンス」とは、世界的有名ブランドと提携して開発される住宅である。ブランドは世界的なホテル運営会社が一般的だが、ファッション、自動車、デザイン、ウェルネス分野のブランドも増加傾向にある。なお、一部賃貸型も存在するが、主流は分譲型であり、本書では「分譲住宅」について解説する。
ブランデッドレジデンスは、ブランドライセンス契約に基づき運営・サービスが提供されるため、個人所有の永続性と、グローバルブランドの保証、サービス基準、ライフスタイルポジショニングを兼ね備えている。オーナーにとってはホテル同様の利便性と一貫性を、ブランドにとっては継続的な収入源と顧客エンゲージメントの深化を、デベロッパーにとっては競争市場における強力な差別化要因をもたらす。また後述するが、多くの場合、オーナーが「レンタルプログラム」を通して、居住していない期間、自分の物件をホテルルームとして貸し出し、収入を得ることができるのも特徴である。
この概念の起源は、20世紀初頭のアメリカにおけるグランドホテルの黄金時代に遡る。俳優のマリリン・モンローや作曲家のコール・ポーターといった有名人が、世界最高峰のラグジュアリーホテル「ウォルドーフ・アストリア」に長期滞在し、恒久的な住所とした時代だ。こうした形態は、五つ星ホテルの快適さと格式、所有権によるプライバシーを融合させた新たな居住型ラグジュアリーの先駆けとなった。そして1980年代、ホテルブランドがコンドミニアムプロジェクトに自社のブランド名とサービス基準を提供しはじめたことで、初めて体系化されたブランデッドレジデンスが登場した。
それ以来、このセクターは、単なる「華やかで物珍しい存在」から、規模・地理的分布・ブランド多様性の面で進化を遂げる「世界的に認知された資産クラス」へと成熟した。現在、世界中で219のブランドが参入、1,500以上のプロジェクトが完成または計画中であり、ニッチな存在から主流のグローバル現象への変貌を裏づけている。
ブランデッドレジデンスモデルの成功は、すべてのプレーヤーのインセンティブが整合していることにある。各プレーヤーのメリットを述べる。
ブランドとの提携は価格設定と吸収率の両方を向上させる。当社、サヴィルズのグローバル市場分析によると、ブランデッドレジデンスは同等の非ブランド物件と比較して平均約30%のプレミアム価格を実現し、特に未完成物件では通常より早く販売が進む。
ブランドの影響力と認知度は、購入者とレンダーの双方にとってプロジェクトのリスク軽減に寄与し、資金調達を容易にし、販売期間を短縮する。競争の激しい市場では、このデザイン設計(ハード)と運営力(ソフト)の保証が決定的な優位性となる。
ブランド(ホテルオペレーター)にとって、ブランデッドレジデンスプロジェクトは、ホテル運営に比べ、景気変動の影響を受けにくい手数料収入をもたらす。マリオット・インターナショナル、アコー、ヒルトン、ハイアット、IHGなど、ほぼすべての大手ホテルグループが現在、グローバル市場を対象とした住宅部門専門チームを設置している。
同プロジェクトは、短期滞在から日常生活へとゲストとの関係を拡大し、ロイヤルティを深め、オーナー(購入者)のライフスタイルにブランドを定着させる。フォーシーズンズ、ローズウッド、アマン、マンダリン・オリエンタルなどのブティックおよびウルトララグジュアリーブランドは、大手に比べると比較的小規模なポートフォリオによって排他性を維持しながら、1㎡当たりの収益性を飛躍的に高めている。
オーナー(購入者)はプロフェッショナルな管理、世界統一基準のデザイン・サービス、信頼できるブランドエコシステムを享受できる。エンドユーザーにとってはライフスタイルの保証と利便性を、投資家にとっては長期的な資産価値への確信をもたらしている。
(つづきは本書で)