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人員不足・労働環境改善は稼動の平準化から
インバウンドに依存し過ぎない国内の「旅行しない層」の掘り起こしにも注力

星野リゾート 代表 星野佳路氏

SPECIAL INTERVIEW 

創業から112年、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」「LUCY」の6つのブランドと個性際立つホテル・旅館を国内外に生み出してきた星野リゾート。1992年以降は運営特化戦略をとり、資金負担を抑えながら全国に拠点展開を進める。国内の主要観光地はもとより、地方都市や温泉地の地域経済や観光産業の活性化にも取り組む同社代表 星野佳路氏に、ホテルマーケットの現状や環境、ホテル・観光業界の課題などについてうかがった。

ホテル開発は一定地域に集中
顧客数の年間平準化にも注力を

――現在の国内ホテルのマーケット環境をどうみていますか。
星野 やはりインバウンド需要の高まりによる影響は大きく、現在も国内の不動産事業者やホテル事業者によるホテル開発が非常に活発な状況が続いています。
以前は土地があればオフィスや商業施設、マンションといった選択肢が中心でしたが、いまはホテルも有力な候補。開発にあたってホテル事業者が長期的なビジョンをもちブランドやコンセプトを練り上げるというより、まずつくって、運営は「インバウンド対応なのだから外資系の運営事業者がいいだろう」という意外にシンプルな理由で外資系の有名オペレーターを日本に呼び込むというケースが多くみられます。
 ただ、実際に日本を訪れる外国人は、宿泊するホテルが国際的なホテルブランドかどうかについてはあまりこだわっていません。当社の場合でも、インバウンドの60〜70%は直接予約で問題なく集客できています。わざわざ日本までやってくる外国人旅行者は宿泊するホテルがインターナショナルブランドかどうかよりむしろ、いかに自分の旅の目的や嗜好に合っているかを重視しているようです。
――貴社ではいま、インバウンドと国内旅行者の比率はどうなっていますか。
星野 「星のや東京」(東京都千代田区)ではインバウンド比率は7割を超えています。北海道の「リゾナーレトマム」(北海道占冠村)は冬季で8割、残り2割が日本人。これが夏季になると8割が日本人、インバウンドは2割と逆転します。当社の宿泊施設はそもそも地方に多いのですが、なかでも地方の温泉旅館ブランドの一つ「界津軽」(青森県大鰐町)ではインバウンドはいまでも1割以下で、地域によって大きな差があります。当社全体のインバウンド比率は約3割です。
 いま、インバウンドの状況で一番問題なのは東京、大阪、京都など一定の地域に旅行者が集中していることです。その集中している地域に新たに多くのホテルが開設され、そこに外資の運営会社が入ってきている。そうした現象は、長期的にみれば集中している地域に過剰な部屋数が供給されることになるでしょうし、観光立国を目指す日本にとっては、むしろ地方に目を向け、より上質な新しい開発をしていく必要があると考えています。

――開発局面でいえば、ここ数年、建設費の高騰や人員不足といったマイナスの側面が深刻さを増していますが、それでも開発ペースは落ちませんね。
星野 東京、大阪の場合は建設コストの高騰下でも開発したいと思えるほどに旺盛な宿泊需要があり、将来の安定性もあるということでしょう。大都市では予定される事業費全体のなかで土地代が大きく、建設コストがある程度上がっても事業全体に与える影響は限定的です。反対に地方では土地代が安く、建物部分の費用が大半を占めますので、建築費が上がるとその影響を事業全体として大きく受けてしまうともいえます。
 

 ホテルや観光事業運営の人員不足については、基本的には労働環境の問題だと考えています。観光産業の場合、たとえばゴールデンウイークにはお客様が集中して訪れますが、翌週はがくんと減る。この繁閑の差が結果的に労働環境改善の遅れになり、人員不足につながっています。昨今の人員不足の問題を若年層の減少など人口動態的な問題ととらえる人もいますが、短期的な理由はそこではないと私は考えています。
――労働環境を改善できれば、人員不足は解消できるということですね。
星野 今後日本はインバウンドをさらに受け入れていくことになりますが、忘れてはならないのが日本人による国内旅行です。インバウンドの動向をみながら国内の観光客数もふやし、一極集中を改善しながらいかに年間で平準化した顧客数を確保できるか。ここが一番の勝負どころです。需要が年間で平準化しなければ収益力は高まりません。収益力が上がらなければ社員の給与は上げられない、給与が上がらない限り人員不足からは脱却できません。この悪循環に陥らないために、国内観光客も維持して年間で平準化した稼動をしっかりと確保していくことが重要なのです。

インバウンドは踊り場局面も
「満足度」を本気で考える契機に

――政府は30年6000万人を目標に掲げていますが、今後のインバウンドの動きをどうみていますか。
星野 私はすんなりと6000万人までふえ続けるというよりは、おそらく4000万〜5000万人くらいでいったん〝踊り場〞状態に入るのではないかと予想しています。
理由のひとつはインフラの問題です。「ハブ&スポーク」となる成田、羽田、関空、福岡、札幌といった主要空港にはキャパに限界があり、そこがひとつのボトルネックになるからです。そしてもうひとつは日本が島国であるという点。世界中をみても5000万、6000万人の観光客が訪れる島国はまだ存在しないのです。
 訪日客数を6000万人まで伸ばせるかどうかは日本が今後リピーターをしっかりと取り込むことができるかどうかにかかっています。初回に訪れるという東京、京都、広島を結ぶ「ゴールデンルート」、ここを毎年訪れる外国人はまずいないでしょう。そうしたときに、ゴールデンルートに替わる商品企画を提案し、2回め、3回めと訪れる理由をつくっていく。
いったん踊り場を迎えることは日本にとってプラスだと私は考えています。訪日客数が伸び続けているときは気がつきませんが、いったん止まれば、「やはりリピートが大事だよね」「リピーターにはどういう案内をしていこうか」と考えるようになるからです。
 過去の日本国内観光で起こった「スキー旅行ブーム」や「団体旅行ブーム」のような事例をみていくと、現在のインバウンドの盛り上がりも「インバウンドブーム」で終わるかもしれません。顧客の「満足度」について本気で考えなければならない。そういう懸念をみなが共有して、どうすればよいのかを考えるうえで、いったん踊り場を迎えるというのは必要なプロセスなのです。

・・・記事の続きは本誌にて・・・

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