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岩盤浴エリアでアトラクションを開催
独自性ある体験提供が滞在価値を創出

愛子天空の湯 そよぎの杜

CASESTUDY

仙台市中心部からも好アクセスな
ニュータウンの商業区画に開業

 仙台市青葉区の「愛子天空の湯そよぎの杜」(以下、そよぎの杜)は、2023年10月に開業した日帰り温浴施設である。
 施設は、JR仙山線「愛子」駅の南側において1985年よりニュータウン開発が進められてきたエリア「ハートヒルズ錦ケ丘」に所在する。現在は地元デベロッパーの錦エステート㈱が分譲住宅開発やマンション分譲などに取り組み、あわせて商業開発も推進。アウトレットモール「錦ケ丘ヒルサイドモール」に隣接する約2万坪の敷地において開発が進行してきた商業街区「ORINAS(オリナス)錦ケ丘」内に、飲食店舗などとともにそよぎの杜が出店しているかたちである。なお、ハートヒルズ錦ケ丘の現在の人口は約9000人、計画人口は約1・5万人としている。

 そよぎの杜の事業主体は㈱GENで、母体は岩手県盛岡市の「盛岡」駅前に所在する医療施設・飲食店・パチンコホールなどの複合ビル「ワールドインGENプラザ」(地上6階建て)を運営する㈱嚴商事。同社が1992年に仙台市内に出店したパチンコホールについて、2009年に会社分割によって運営事業を承継するかたちでGENが設立された(現在、両者に資本関係はなし)。「市場環境からパチンコホール事業での勝ち残りがむずかしくなるなか、当社会長が嚴商事在籍時に東北初となるサウナ付きカプセルホテルを盛岡駅前に開業した実績もあり、GENの新事業として温浴施設に注目しました。また、私自身が東京で生活していたころに温浴施設をよく利用しさまざまな店舗を実際にみてきたなかで、後発施設でも優位性を構築できる余地は十分にあると考えました」。
 GEN代表取締役常務嚴晢祐氏はそう振り返る。21年にはパチンコホール運営事業を他社に事業譲渡し、温浴施設開発へと本格的に舵を切った。
 立地選定については、ニュータウン開発で造成された眺望のよい高台というロケーションを評価。また、仙台駅の東側エリアには「スパメッツァ仙台竜泉寺の湯」「天然温泉仙台コロナの湯」「仙台湯処サンピアの湯」といった温浴施設が所在、また西側エリアでもそよぎの杜よりさらに西では「秋保温泉」「作並温泉」という温泉地があるが、そよぎの杜の出店地は「その間の空白地域、かつ車社会である東北において仙台駅西口から車で約20分の好アクセス」(嚴氏)という点も出店の決め手となった。
 

ロウリュ、ナノミスト、アート
多彩なアトラクションを開催

 施設コンセプトは「木々、人々が〝そよぎ〞集い憩う豊かな自然と新しい街が織りなす癒しの温泉」。2階に男湯・女湯(内湯、露天風呂、サウナ)を、1階にレストランや岩盤浴エリアを配するオーソドックスな施設構成であるが、各所のコンテンツには独自のこだわりをのぞかせる。
 なかでも特徴的なのは、岩盤浴エリア「ガーデンアルク」だ。男女共用エリアとして約420㎡規模で展開する岩盤浴エリアには、「クーマ」「タイデ」「アイスティア」の3室およびアイスルーム「アヴァント」を設置。各ルームでは通常利用のほか、90分に1回・1日計9回のアトラクション(イベント)をスケジューリングのうえ、開催する。以下、各アトラクションの様子をみていく。
 クーマは中央にサウナストーンを設置。ロウリュアトラクション「灼熱蒸爽(しゃくねつむそう)」では、サウナストーンの真上から大量のナノミストが噴霧され、さらに送風によって熱波が室内を駆け巡る。また、アトラクション時にはルーム内のモニターで地元の武将・伊達政宗の歴史を絡めたストーリーが展開。ときにストーリーテラーの〝煽り〞も入りながらの熱波体験には、黙浴とはまた違った楽しさがある。「パチンコ遊技機の演出も参考としながら企画設計しました」と嚴氏。

 タイデは円形の岩盤浴ルームで、「Light&Time」と「FlowerofLife」という2種の「アート岩盤浴」を用意。ヒーリング系BGMが流れるなか、プロジェクションマッピング映像が天井に投影される。投影される映像作品は商業店舗や公共空間における多数のインスタレーションやアート作品を手がけてきたLUCENT(㈱ルーセントデザイン)のアーティスト・松尾高弘氏が制作。Light&Timeでは光のグラデーション、FlowerofLifeでは幾何学図形を主体とする映像作品を、岩盤浴の心地よい温度のなかで鑑賞できる。
 アイスティアでは光と水のアート作品「SPECTRA」および雲海ナノミストアトラクション「瞑霧」を展開。前者は松尾高弘氏によるLEDと水を用いたインスタレーション、後者は室内を満たすようにナノミストが噴霧されるもので、室内を非日常的な空間に変える。
 このほか、アイスルームでは通常以上の冷却を提供する「極寒乱舞」を開催している。

 これらアトラクションはすべて岩盤浴利用料金内で何度でも体験が可能。アトラクションの開催10分前には室内にいる利用者は一度退出、参加希望者は各ルーム前に並び、開始5分前から入室を案内する流れだ。クーマ、タイデ、アイスティアのアトラクションはいずれも10分前後だが、一つのアトラクション終了後にはまた別のアトラクションが開催されるようなスケジュールとなっており、一通り体験したいという利用者ニーズを喚起する。岩盤浴エリアの利用時間は2時間前後が中心だ。こうした滞在促進が結果的に客単価アップにもつながっている。
 岩盤浴エリアの休憩スペースには約4000冊の漫画・書籍とともに、ソファやリクライナー、ヌック、テラスとさまざまなくつろぎの空間を設置した。特にリクライナーは、既存のリクライナーとモニターを自社で組み合わせて「スマートリクライナー」として独自開発。通常のTV放送に加え、自身のスマートフォンを接続することでミラーリングが可能、かつモニター自体がタッチ対応であるためより快適にYoutubeなどを自由に視聴できる。
 「コンセプトにもあるように〝新しい街〞のシンボルとして、他にはない体験ができる施設を目指しました。心身ともに整える環境を構築し、利用者満足度を最大化できるサービス提供に取り組んでいます」(嚴氏)。
 こうした独自性と質を追求する姿勢は、岩盤浴エリア以外においてもうかがえる。
・・・<記事後半および残りのコンテンツは本誌にて>

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