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カメラとAIをつなぐ「映像エッジAI」技術を介護向けにアレンジ
業界共通の課題解決に向けローコストでのシステム構築にも挑む

  • シニア・ヘルスケア
  • 介護ICT
恒常的な人材不足にコロナ禍が重なるなか、介護現場の疲弊が続く。
その環境改善に向け、映像の力による「目の届かない場所、時間帯の可視化」にあらためて焦点を当てるとともに、既存プラットフォームの活用で費用対効果の向上にも挑む取組みを追う。

既存製品を有効活用しつつ現場課題を解決する新技術の創造へ

 2つの法人(社会福祉法人 元気村グループ、潟Tンガジャパン)を通じて全国に介護事業を展開するGenkiGroupの潟<fィクルードは、EDGEMATRIX梶i以下、エッジマトリクス)、劾TTドコモ、パナソニックi-PROセンシングソリューションズ梶i以下、i-PRO)などと協働し、現場(エッジ)でカメラ映像などをAI処理する「映像エッジAI」技術を活用した介護施設向けのAIソリューションについて、導入への検証環境の構築およびその実証実験を今年から開始している。その狙いと実際についてレポートしよう。
 介護分野におけるICT活用に関して、そもそも同社では3つの軸をもって臨んでいる。「1つめはスタッフの業務が楽になること、2つめはサービスの質を上げること、3つめはスタッフ同士のコミュニケーションの頻度を上げること」と語るのは同社代表取締役社長の神成裕介氏。
 その背景にあるのは、今後、介護人材が圧倒的に不足する事態に対する危機感だ。「こうした状況のなかで、人がやらなくてもよい業務は、積極的にICTに肩代わりさせることが不可欠です。ただし、その目的は『人を減らすこと』ではありません。その結果生まれた時間を利用者と向き合うケアに活かしていくことにあります」。テクノロジーの導入は「目的」ではなく、労働環境の改善によりサービスの質を上げていくための「ツール」であるとの認識だ。こうした認識は近年、広く共有されてきているが、なかでも3つめの軸である「スタッフ同士のコミュニケーションを高める」とはどのようなことか。
 介護現場では1日24時間途切れることのないケアが求められるが、職員1人ひとりについてみれば8時間労働の枠があり、結果、利用者の状態などにつき、職員間での的確な「申し送り」という業務が不可欠。その際に従来のようなアナログな手法ではなくICTなどを使って正確な記録を短時間で伝えあうことが「利用者へのケアの質向上にも直結する重要な部分」(神成氏)と位置づける。「たとえば、ICT化が叫ばれる以前にいちはやくスタッフ全員にインカムを導入したのも、コミュニケーションのための有効なツールと捉えたためです」。こうした視点から、各種センサーの導入やタブレットの記録への活用などにも以前から積極的に取り組んできたという。そのなかで今回の実証実験は、同社がこれまで手掛けてきたこれら個別のICT化の取組みをよりトータルな形で進化させる第1歩といっていい。
「ラインクロスカウント」で廊下部分に設定したライン(左)、共用部に設定したアラートゾーン(右・奥の緑部分)の各画面
 神成氏は介護事業者にとって、ICT化への取組み方には2つあるとし、「1つは既存の製品を導入・活用していくこと、もう1つはまだ製品化されていないものをつくりあげていくこと」。従来、行なってきたのが前者だとすれば、今回の取組みは後者を目指すものといえる。つまり現場をもつ事業者ならではの目線を基本に、各種の専門メーカーの技術力を使い、より最適なシステムの創造を目指す、という内容だ。
 「プロダクトアウトでつくられた既製品を導入するだけでなく、現場が本当に必要とするものをメーカーと一緒につくりあげていかなければ、2025年問題をはじめとした介護をめぐる課題解決はむずかしい。当社グループは特養をはじめ多様な類型の施設現場をもつことから、マーケットインの発想で専門各社とともに開発に取り組み、それぞれの場での最適解を目指せるのが強みと考えています」。

映像とAIを結ぶプラットフォームに介護視点のアプリを搭載

 その実証実験の内容を紹介しよう。協働する企業の顔触れは、映像エッジAIデバイスやアプリの開発を手掛けるエッジマトリクス、デジタルトランスフォーメーションにも取り組む通信企業NTTドコモ、国内のIP監視カメラでトップシェアメーカーのi-PRO、これら各社が有するリソースやノウハウを活かし、カメラから得た映像情報を現場でAI処理する「映像エッジAI」をメインに、介護施設への導入・活用に向け実証を行なうというものだ。
(続きは本誌で)
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