――では、自立の方と要介護の方でのニーズの差異についてはどうでしょう。
笠松 自立の方では、従来は先を見据え早めの住替えを行なう動きがありましたが、「いま住み替えるより、もう少し在宅で頑張ろう」と考える人はふえたのではないでしょうか。半面、要介護の方においては、当社でもコロナ禍発生当初はスタッフの状況も考慮し入居を制限したものの、6月以降は地域の状況を見ながら以前の状態に戻しております。ただ全般的な変化として入居に際し、施設が感染予防をしっかり行なっているかの事前確認はこれまで以上に問われるようになっています。また協力医療機関とどの程度連携しているか、さらにもし感染した場合にどのような対応をとってもらえるか、も同様です。
吉田 当社も自立と介護双方を手掛けていますが、重度の方対象の施設のほうは影響が小さい半面、自立型のサ高住などは外出自粛の社会的気運が広がるなか、「自宅にとどまるほうが安全」というイメージにつながったのか、新規入居は進んでいない状況です。また当社グループの紹介センターなどでも、問合せそのものは大きくは減っていないものの、紹介する施設側が新規受入れをストップしていたため、住替えにつながっていない状況も伺えました。先の立地面については、東京近郊のリゾート型立地の既存物件では、コロナ禍で申し込みがふえた、という声も聞きますが、実数からすれば限定的なものといえるでしょう。
浦田 当社の高齢者住宅の総入居者数は約2,300人。内訳は自立が約6割、要介護が約4割で、建物の内部で両者のゾーン分けをしています。コロナの影響で3月から見学会を事実上停止し、昨年度末まではそれまでの営業活動の成果としてそれなりの契約ができていたものの、年度が変わった4、5月からは急ブレーキがかかった格好でした。たとえば5、6月の2カ月間で自立型の契約件数は1件のみ。一方、介護型はそれでも一定の入居があったのはいまのお話と一緒です。ただ緊急事態宣言解除以降は見学会も人数などを限定し再開したこともあり、7月は自立型でも動きがではじめました。介護型では100%を超えることができました。特に関西では金額目標比で200%といううれしい報告を聞いたところです。一方、別事業ですが認知症デイサービスでは7月に新規顧客獲得数が創業以来過去最高を記録しました。つまり介護サービスに対するニーズがコロナでなくなったわけではない、サービスを求める人はたくさんいる、ただそれが高齢者住宅の場合、十分契約に結びついていないというのが現状だとみています。
(続きは本誌で)