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見守りセンサーシステムを中心に
AI、IoT を活用した新たな高齢者施設事業の構築へ

対談

  • シニアビジネスマーケット
  • 介護ICT
  •           渡邊君人 氏
              エコナビスタ 代表取締役

  •           鈴木敏之 氏
              ヒューリック シニアビジネス開発部
              事業開発室 参事役

 高齢者見守りシステム「ライフリズムナビ+Dr」で知られるIT企業、エコナビスタ鰍ニ、高齢者施設開発も積極的に手掛ける不動産デベロッパーのヒューリック鰍ヘ、2月に業務提携、AI、IoTを活用した新たな介護ビジネス「スマートシニアハウジング構想」に取り組むことを表明した。両社にその背景や目指す方向性について語ってもらった。

データ活用をベースとしたスマートシニアハウジング構想

渡邊 最初に弊社の見守りシステム「ライフリズムナビ+Dr」につき、あらためてご紹介すると、センサーマットに人感、温湿度、ドアの開閉の各種センサーを組合せ、ベッドだけでなく居室全体を見守るのが特徴でしたが、施設様からの要望でご入居者が自ら取得した、体温、血圧、SPO2(酸素飽和度)の値を自動的に取得する機能を実装してさらに進化しております。入居施設で起こる事故はベッド回りだけではありません。たとえば居室内の室温が夜中の3時頃に40℃という驚くべき場面もあり、その原因は入居者が個別空調のエアコンのリモコン操作を間違えたり、自身でも温度変化を体感できなかったことなどによります。またトイレに半日など長時間滞留するケースなど従来は把握できなかった事態が、本システムを導入してはじめてわかったという声をいただくケースが多々あります。
 また最近では、大阪市立大学と共同開発した独自のアルゴリズムでマットセンサーからの睡眠情報を解析する「疲労回復度指数」のデータが現場で活用されるようになってきました(19年12月特許取得済)。これは眠りの時間や状態をもとに睡眠によってどれだけ疲労が回復できたのかを点数化するものです。同様に「快眠指数」「快適環境指数」も提供していますが、昼間のリハビリやアクティビティと夜間の睡眠との相関関係などがわかってきました。これに基づき提供するプログラムやメニューを変えるなど、適切な対応を行なう取組みも現場でははじまっています。
鈴木 単に睡眠状態の可視化だけでなく、そのデータと昼間の活動データを掛け合わせることで、よりよい睡眠や健康づくりを促すプログラムの提供につなげようというものですね。
渡邊 はい。また「快眠指数」は眠りの質を明らかにするもので睡眠時間だけでなくその深さを測ることにより、眠りの状態を正確に把握できます。これも点数化することでわかりやすく、継続的な傾向の把握などに貢献するものとなっています。
鈴木 当社が貴社に注目する理由の1つに、こうした膨大なデータを蓄積し保有されている点があります。
 デベロッパーとして当社では現在高齢者施設分野で47棟、約3,600室を開発・保有し、12社の優良なオペレータとリレーションを構築しています(20年3月時点)。立地、規模など多様な土地条件とのマッチングを想定しオペレータ各社とのオールラウンドな関係づくりが重要と考え、取り組んでいます。
 その当社がAIやIoTに関心を抱いたのは、介護事業者がもつ2つの大きな課題があったからです。
 1つは「人手不足」。現場の人材不足のみならず、離職率も高く、採用コストも上昇するなど、事業者にとっては喫緊の経営課題になっています。2つめが「業務効率化」。依然として、介護記録、見守り、コミュニケーションなどの業務分野でアナログなシーンが多々ありますが、ICTプロダクトを導入することで人手不足解消や業務効率化を実現する場面を目にするなか、当社が立ち上げたのが「スマートシニアハウジング構想」です。

スマートシニアハウジング構想

鈴木 このプラットフォーム構築に際しパートナーを選ぶうえでは、今後エビデンスデータやビッグデータの重要性が言われるなかデータの保有量が大きな鍵を握ると考えました。次いで、業務効率化をスピーディに図るには見守りシステムが重要な役割を担うと捉え、当社の保有物件に製品を導入し実証実験したところ、現場の職員や事業者から最も高い評価を得たのがエコナビスタさんのシステムだったのです。
 さらに渡邊社長との対話のなかで、単に見守りだけでなく、睡眠状態の解析から認知症分野等への応用まで広く見据え、豊富なデータの利活用を通じ新しい介護のあり方に活かしていこうとの考え方に共感を覚えました。こうした点から、本構想への参画をオファー、業務提携に至ったという経緯があります。
 エコナビスタさんはプロダクトをつくる会社というよりは、そこで得たデータをどう活用するか、たとえば認知症の問題にどう活かすか、など一歩、二歩先を見ていて、未来の拡張性が高い。世の中にはプロダクトをつくって売っておしまい、という会社も少なくないなか、さまざまなセンサー類とも積極的に連携し、より高度なシステムへの進化を継続しながら、データに基づく現場対応に活かしていく姿勢にも惹かれました。
渡邊 逆に当社からすると単独でできるビジネスの範疇というのは、センサーから得た情報をどう活かすか、現場にどう適応させていくか、というところまででした。しかし、現在はすでに介護施設にセンサーを設けました、というだけでは誰にも訴求しません。
 高齢者の生活をいかに豊かにしていくかという視点から、建物の設計、デザインがなされ、また新たな介護サービスの創造も日々進む今日、見守りシステムも「あって当たり前のもの」として建築の中に入っていかなければならない。そう考えたときに当社だけの取組みには限界を感じていたところで、ここをしっかりできる会社と組むことで、より理想とする未来像に近づけるのではと考えたのが当社側の協業の動機です。
 いわばセンサー自体が建物に溶け込んでいる、意識されることなく自然のものとして建物に実装されている、そうした環境づくりを実現するうえでヒューリックさんは最適なパートナーと考えました。
(続きは本誌で)
月刊シニアビジネスマーケット
2020年7月号

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定価:本体3,700円+税

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