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――FPG

大都市一等地に標的
豊富な資金を商業施設へ

  • 商業施設
  • ファンド

受益権を1,000万円単位で小口化
コロナ禍以降商品組成を加速

 FPGは、2001年に設立された独立系金融サービス会社。中小企業の税の繰延ニーズを捉えた航空機や船舶、海上輸送用コンテナなどによるリースファンド事業をメインに、中小企業経営者や個人富裕層の資産運用および承継ニーズを捉えた不動産ファンド事業などを展開している。
 不動産ファンド事業は2013年より開始したもので、自社で取得した物件を裏付けとする小口化商品を組成して投資家に販売している。物件の多くは都市型商業施設で、いずれも銀座や表参道、心斎橋、天神などの大都市一等地に所在する。
 当初は不動産特定共同事業(任意組合)のスキームを採用していたが、16年からは子会社のFPG信託を通じて小口化された信託受益権を1個1,000万円で販売するスキームを採用している。小口化商品の対象物件数は累計33物件、組成金額は累計1,300億円におよぶ(2022年6月末時点)。
 商品組成のペースはコロナ禍以降に急加速しており、2020年9月期が40億円だったのに対し21年は348億円、22年は第3四半期終了時点で454億円となっている。

FPGの取得・開発物件(南青山)

出所:FPG

立地価値の不変性と
投資家の意欲が後押し

 コロナ禍以降の商品組成ペース加速は、物件の取得ペース加速も意味する。実際、先述の累計組成額1,300億円のうち、7割程度はコロナ禍以降取得した物件が占めている。直近でも6月30日に心斎橋、8月1日に南青山でそれぞれ都市型商業施設を取得した。
 なぜこれほどの勢いで物件取得を進められるのか。国内不動産部長 兼 海外不動産部長の川村仁氏は、大都市一等地にある都市型商業施設のポテンシャルの高さと、小口化商品に対する投資家の投資意欲の強さが大きいと説明する。
 前者については、大都市一等地の価値が安定していることが大きい。地価は景気変動があっても長期的には上昇し続けており、都市内での地位は近隣で再開発があっても変化していない。「加えてオフィスの場合は丸の内で坪5〜6万円といった相場の制約を受けるものの、商業施設の場合は立地次第で賃料のアップサイドを大きく狙える。テナントもコロナ禍であれ一等地の区画を確保したい意向が強い」(川村氏)。
 後者については、大都市一等地の物件という安心感と、そうした物件に1個1,000万円からと手軽に投資できる商品が富裕層投資家から求められている点が大きい。「投資家の半数以上は地方在住で、ポートフォリオ分散の意味合いもあるのだろう」(同氏)。

FPGの取得・開発物件「FPGリンクス心斎橋」

出所:FPG

100億円クラスも取得対象に
自社開発物件の1棟売りも

 昨今の取得実績を受け、FPGのもとにはデベロッパーやファンド、REITなどから多くの売り情報が寄せられているという。「取得の意思決定にかかる時間は他社と比べても断然短いはず。物件はかなり厳選しているが、社内でゴーサインが出れば9割方取得できている」と川村氏。都心一等地の希少性を評価し、強気の価格を提示できることも大きいようだ。
 取得検討の条件として、まず立地は先述の通り大都市一等地に限定する。取得実績のある東京、大阪、福岡に加え名古屋が主な対象都市となる。建物は築浅かつ汎用性の高いものを追求する。「期中の追加投資でリターンを損ないたくないことと、テナント代替性を確保したいことが理由」(川村氏)。そして価格は最低でも10億円とする。これまでに取得した物件の平均価格は40億円程度だが、実績が増えたことで100億円クラスの物件も取得できるようになった。
 フォワードコミットメントでの取得にも対応する。実際に渋谷区神南では竣工5か月前段階で売買契約を締結のうえ物件を取得、リーシング完了後に小口化商品として販売する予定だ。
 加えて自社開発にも取り組む。2018年に1号物件を表参道で竣工させたほか、22年8月には自由が丘でも2号案件を竣工した。「建築コストは高止まりしているが、3号以降の開発も検討している。敷地面積50〜100坪の土地に低層の建物を開発するイメージ」(川村氏)。
 小口化した物件の信託期間は20年程度としており、その間に市況に応じて物件の売却を判断する(投資家へは受益権の個数に応じて売却益を配当)。売却先の候補はプロ投資家や事業会社、富裕層を想定する。なお表参道の自社開発1号物件は小口化せずに1棟で売却している。
 物件の運用では、PM会社と協力のうえ収益アップに努める。渋谷の運用物件ではエリア特性とフロア面積をふまえ美容系テナントのリーシングに注力した結果、坪当たり賃料単価を2万5,000円程度から4万円台に引き上げNOIを大幅アップさせた事例がある。PM会社の選定については、エリアに対する習熟度やレスポンスの早さを求めたいとしている。
 今後の目標について川村氏は、不動産ファンド事業の規模をリースファンド事業と同等の水準まで拡大させることを挙げる。2021年9月期の投資家への販売額は、不動産ファンド事業208億円に対しリースファンド事業945億円と4.5倍の差がある。その差をどこまで縮めていくのか、これからの事業展開に注目が集まるところだ。
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