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――森トラスト・ホテルリート

「コロナ前を上回る大幅回復」見込む
上位グレードのホテルに集中投資へ

  • ホテル投資
  • J-REIT

ヒルトン沖縄瀬底リゾート

出所:森トラスト・ホテルリート

変動賃料導入ホテル業績は前年比75〜300%の大幅増

 ラグジュアリーなど上位カテゴリーに集中投資するホテル特化型REITの森トラスト・ホテルリートは、2022年7月時点で5物件・1,077億円を保有している。それぞれシャングリ・ラ 東京、ヒルトン小田原リゾート&スパ、コートヤード・バイ・マリオット 東京ステーション、コートヤード・バイ・マリオット 新大阪ステーション、ホテルサンルートプラザ新宿で、このうちホテルサンルートプラザ新宿をのぞく4ホテルは、変動賃料による契約となっている。
 ホテルの稼働・売上はコロナ禍を乗り越え、力強い回復をみせている。2022年3月末にまん延防止等重点措置が解除されると、春休み〜ゴールデンウィーク期間にかけて国内観光需要が活発化、変動賃料を導入している4ホテルの業績は、5月時点で全物件とも前年同月比75〜300%の大幅なプラスとなった[図表]

[図表]各ホテル(変動賃料4物件)の直近の状況

出所:森トラスト・ホテルリート「2022年8月期の運用状況の予想の修正に関するお知らせ」(2022.6.27)
 3月からはビジネス目的の入国が解禁、6月からは観光目的のインバウンド(団体)の受け入れも始まると、コートヤード東京では宿泊客全体に占める外国人の比率が30%を超えるなど、早くもインバウンド効果が顕著に現れてきている。
「宴会やビジネスカンファレンスの予約も増えてきている。これはパンデミック以降ようやく回復に向けての道筋が現実的なものとして見えてきた事例であると捉えている。国内/インバウンド、観光/ビジネスニーズをバランスよく取り込みつつ、今後についても一層力強い回復を見込んでいる」と話すのは、森トラスト・アセットマネジメントの代表取締役最高執行責任者(COO)ホテルリート運用本部長の坂本周氏である。

スポンサー支援主軸に新規取得進める

 ホテル業績の回復基調を受け、投資法人の投資口価格もコロナショック直後につけた大底から順調に戻してきている。新規取得の環境は整いつつあるとみて、これまで同様にラグジュアリー、アッパーアップスケール、アップスケール、アッパーミッドスケールの上位グレードホテルについて積極的に投資機会を求めていく方針。コモディティ化・過当競争を避けつつ、国内/インバウンド需要をバランスよく取り込み、力強い成長につなげていく狙い。
 ただしパンデミックを経ても、優良物件の希少性から取引マーケットは高値圏での取得競争が続く。2021〜22年にかけて取引されたいくつかのホテルバルク案件については、コロナ前のホテル運営実績をも上回るシナリオを前提とした高い価格水準のものもみられる。 そうしたなか有利な取得機会を確保するうえで、スポンサーである森トラストの開発力を存分に生かしていく考えだ。同社ではコロナ禍に入ってからも、ヒルトン沖縄瀬底リゾート、JWマリオット・ホテル奈良、東京エディション虎ノ門などを開業させた。このほか、今後は東京エディション銀座のオープンも予定する。投資法人としては、このような豊富で優良なスポンサーからのパイプラインを活用し、アクリーティブな増資が可能となる物件の取得に向けて、スポンサーと協議していきたいとする。
 また、パイプラインでのスポンサーサポートに加えて、外部物件の取得機会においては、取得競争力向上のために、スポンサーやグループの森トラスト・ホテルズ&リゾーツがホテル開発・運営で培ってきたノウハウ、マリオット・インターナショナルをはじめとした外資系オペレーターとのリレーションを生かし、ハード/ソフト両面でバリューアップを行っていく。
 また金額規模が大きな案件については、ヒルトン小田原リゾート&スパがそうであったように、森トラストとの共同投資や、必要に応じてウェアハウジング機能を活用するなどサポートを得ながら円滑に取得を進める。

個人インバウンドの全面解禁が回復の狼煙となるか

 今後のホテル業績については引き続き堅調に回復し、パンデミック前のレベルに早期に戻ることが期待されている。日本はパンデミックに関して、先進国のなかでもっとも厳しい規制を続けている国のひとつであるが、他国はすでにウィズコロナへと力強く歩み始めている。米国の主だった観光地のホテル稼働は、2022年4月実績で19年同月を上回ってきている。ヨーロッパ各国についても急速な回復カーブを示している。
「世界中にパンデミックで滞留している旅行ニーズがあるほか、東アジアでは裕福な中間層が年を追うごとに増えている。日本のホテル需要は、回復はもちろんのこと近い将来、コロナ前の実績を上回ってくる。個人インバウンドの全面解禁がその起爆剤となるはず」(坂本氏)。
 なおホテル投資でもオフィスビルなどと同様、ESGへの取り組みが一層求められてくるとみており、投資法人としても2021年からサステナビリティレポートの発行を開始した。同レポートでは省エネルギー、地域コミュニティとの協同、コンプライアンス強化などへ取り組む姿勢を示している。
「単なるスローガンとしてではなく、実のある内容とすることが重要。コーポレートガバナンスの観点からESGへの取り組みを強化することで、機関投資家の理解を受けやすくなるほか、地域を対象としたイベントを開催することでユーザーの支持獲得にもつながる。これらのESGに関する施策を通じても、ポートフォリオの価値向上を実現したい」と坂本氏は話している。
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