矢木達也氏・中島陽子氏[ビーエーシー・アーバンプロジェクト]に聞く
OVERVIEW|市場トレンド、運営ポイント(試し読み版)
都市型商業施設が不動産ファンドから再評価されている。
これまで不透明だった外的リスク要因が除外されて投資のリスク・リターンが見通しやすくなり、運用による成長戦略が描きやすい時代に入ったためだ。
本稿は、都市型商業施設の運営(バリューアップ)環境の変化と市場のトレンドについて、ビーエーシー・アーバンプロジェクトの矢木達也氏と中島陽子氏にお話をうかがった。
矢木氏は都市型商業施設が再評価される理由について3つの点から説明する。1つ目は、商業施設最大の不確定要素であったECの脅威が可視化できるように
なったことだ。
「ECでは得られない体験価値の提供がキーワードであり、飲食店、パーソナルフィットネスや美容系クリニックなどの成長が続くサービス業も好調」(矢木氏)。
2つ目は、建築費や人件費の高騰による新規供給の停滞である。これにより総需要と供給量が固定化、市場のパイの大きさが確定したことで、商業施設はシンプルに需要へフォーカスした運営戦略が建てられるようになった。
「商業施設における競争の主戦場が、新規開発から既存施設の内部成長に移行した」(同氏)。
3つ目は、新しく強力な需要層の登場、すなわち、「推し活」と「インバウンド」需要の成長・多様化である。推し活需要は、アイドルやアニメキャラクター、スポーツ選手、ゲーム実況者など対象範囲が広く、グッズ購入、イベント参加、テーマカフェ、カプセルトイなど業態展開の余地が大きいという[図表1]。
「池袋のアニメイト本店は、インバウンド客が押し寄せる渋谷PARCOに匹敵する集客力をもっている。かつては一部の熱心なファン文化と見られていた領域だったが、いまでは商業施設の中核的な集客装置にもなっている」(中島氏)。
インバウンド需要も従来の“爆買い”から変化している。
「飲食を楽しむことも訪日目的の一つ。出店意欲の高まりから賃料上昇にもつながっている」(矢木氏)。
また、足下で興味深い動きとして、メガネ店が進出意欲を高めているという。
「新宿三丁目や銀座など高賃料エリアにJINSが進出。欧米諸国と違い眼科による検査を介さず短時間で購入できる気軽さと割安感で、インバウンド客が集中している」(中島氏)。
加えて、アジア発テナントの出店も活発だ。渋谷や原宿をトレンド発信の重要拠点とみなし、日本発のストリートブランドに加え、韓国のファッションブランド、コスメ、フードチェーン、中国発のキャラクターブランドなどが続々と進出しており、「アジアの若者文化が交差する“世界商圏”のハブへと変わりつつある」(矢木氏)
都市型商業施設の価値は、建物の築年数よりも、立地とトラフィック(歩行者流量)がポイント。人が通る場所にある施設はいくら建物が古びても、テナントが入れ替わっても価値は継続し上下することはない。
「立地の希少性と街の需要の厚みに左右され、オフィスと異なり需給バランスだけで決まらないのが特徴だ。高い賃料を支払っても出店したいと思わせる街・エリアの物件だけが伸びる」(矢木氏)。
≪記事の全文は本誌で≫
矢木達也氏
ビーエーシー・アーバンプロジェクト
代表取締役社長