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――三井不動産/三井リンクラボ

成長産業領域「ライフサイエンス」
知的生産・交流拠点を積極展開

三井リンクラボ(新木場2)外観

JR「新木場」駅より徒歩7分、賃貸面積14,588m²の規模

ライフサイエンス分野にイノベーション
急拡大みせる新アセットクラス

 「三井リンクラボ」は三井不動産がシリーズ展開している賃貸ラボ&オフィスである。現在は「葛西」と「新木場」(2棟)と千葉「柏の葉」の国立がん研究センター東病院に近接した立地に開設している。来年以降は大阪の中之島、さらに米国のサンフランシスコなどにも竣工予定で、新木場では3棟目となる計画を進めているところだ。
 
 賃貸ラボ&オフィスとは、創薬やバイオ、医療などライフサイエンス分野のスタートアップから大企業までのさまざまな企業、研究機関、大学などを入居者対象として、本格的な研究設備に対応可能な賃貸タイプの研究開発(R&D)施設のこと。日本ではまだ珍しい業態といえるが、その企画発想は7年前にまで遡る。三井不動産は2016年に多様なライフサイエンス領域の有識者、専門家とともに一般社団法人「ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン」(LINK-J)立ち上げたのが発端である。LINK-Jは医薬関連企業が集積する日本橋エリアを拠点に産官学連携によるライフサイエンス領域でのオープンイノベーションを促進、新産業創造を支援する目的に発祥。大企業からスタートアップまで、ライフサイエンス分野が交流、連携するコミュニティとして現在の会員数は約700名にまで成長している。
 「活動を進めるなか、多くの会員から『自分たちが研究する場が日本橋などに近い都心にも欲しい』との声が多く聞かれていた。ライフサイエンス分野の先進国である米国ボストン・ケンブリッジやサンフランシスコなどの都心部で賃貸ラボ&オフィスの開発が進んでいる事例にみられる通り、日本でも大きな潜在ニーズがあるのではないかと考えた」(ライフサイエンス・イノベーション推進部の鹿島健太朗氏)。

ソフト・ハードが一体で研究・交流を促す

 三井リンクラボの特徴は大きく3つある。
 1つ目は立地である。三井リンクラボシリーズは「都市近接型」「シーズ近接型」の2つの立地特性にて展開。これらにフォーカスする理由は、ともに国内トップレベルの大学、病院、大手製薬会社などが集積しているためだ。「イノベーション創出のための共同研究が行いやすいことや優秀な人材を集めやすいといったメリットがある」(鹿島氏)。実際に「三井リンクラボ新木場1」「三井リンクラボ柏の葉1」ではその狙い通り順調にリーシング需要が発生しているようだ。
 
 2つ目は施設の機能・設備である。研究機材を充分配置可能とする区画に加え、設備面では給排水・給排気、大容量の給電システムを設け、本格的な研究開発に対応した環境を用意している。またこれとあわせ、使用ニーズの多い機器を共同利用できる共通機器室を設けている。
 また、ラボスペース以外では広いコミュニケーションラウンジや大型の会議室など共用部が充実していることも大きな特徴である。社内外の活発なコミュニケーションを促進することを意図したものだが、ライフサイエンス業界では学会やセミナーなどが多く開催され、大きな会議室へのニーズが高い点に着目したものでもある。
 「セキュリティが完備され、研究開発に集中できる環境と同時に、“ 開かれた空間”があることも大きなポイント。偶然も含め様々な出会いが起こることは、ライフサイエンス領域でのイノベーション創出においては非常に重要。実際に多様な交流機会を入居理由に挙げるテナントも多くいる」(同氏)
 
 3つ目はオペレーションである。三井リンクラボでは研究や事業戦略等について製薬企業出身のサイエンティストへ相談できる「サイエンスコンシェルジュサービス」を用意。研究に対する助言、共同研究先探索のヘルプ、臨床検体の入手先相談や、知財、法務、資金調達、事業戦略、薬事、関連法規等についてまで、入居者なら誰でも相談することができる。そのほか入居者同士の交流会やLINK-J主催イベント等、交流・連携を促進するイベントが数多く開催されている。

三井リンクラボ(新木場2)内観

共通機器室(左)とスタートアップ向け区画(右)

コミュニケーションラウンジ(左)とカフェ(右)

イノベーションを促し需要を創出

 このように三井リンクラボは、他のオフィススペースの賃貸事業とは大きく異なり、ハードだけでなく、テナント入居者を支援するソフト面を特色としたオペレーショナルな事業資産であるが、不動産事業としてみた場合、特徴は3つある。
 
 1つ目は、安定収益が期待できることである。キャッシュフローの観点でみると、オフィスと比べ、テナントが実験設備を設置することで設備投資負担が大きいケースが多い。「一度入居すると比較的中長期で入居する傾向がある。そうした意味から安定的な運用が期待できる施設と考えている」(鹿島氏)。
 
 2つ目は、リーシングに独自ノウハウ・ネットワークを要することだ。日本では賃貸ラボ&オフィスは新業態であり賃貸マーケットが確立されていない領域。オフィスのように仲介業者が広く情報持っている状況とはまだ言えない。三井不動産の場合、「LINK-Jでの幅広いライフサイエンス分野のネットワークを活かしテナントを募集することで入居率が上がっている」(同氏)。
 
 3つ目は、三井リンクラボで創出された産業イノベーションが、本業である不動産業へフィードバックされる可能性に期待できることだ。具体的には入居者企業の事業が拡大するに伴い床需要が増えていくことが期待できる。「新しいビジネスが創造・成長することで新たな需要が育ち、拡大するところにも大いに期待」(同氏)。ちなみに成長の先にある出口戦略については明確には定めていない。現在は事業拡大の過程にあり、需要の掘り起こしと育成に注力していく考え。「今後ライフサイエンス産業の成長とともに、この需要は間違いなく伸びていく。新しいアセットクラスと位置づけ、事業拡大に取り組んでいく」(鹿島氏)としている。

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