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――RESTAR

REMETISにみる
ファンドAM会社のDX活用戦略

ルーティンワーク効率化で、情報の“ 精度”を磨き上げる

 REMETIS(レメティス)は不動産テックベンチャーのRESTAR(リスター)が開発・運営する不動産金融事業者向け情報管理・分析ツールである。
 投資案件・用地情報の統合管理から不動産・地理情報データベース、分析・レポーティングまで、投資運用の意思決定にかかるすべての機能を実装。不動産ファンドAM会社をはじめ不動産に投資運用するすべてのプレーヤーに向けた情報管理・分析プラットフォームとなっている。 
 例えば投資案件・用地情報の統合管理機能では、仲介会社から寄せられてきた、あるいは担当者ベースでストックされている案件情報をシステムへ取り込めば、半自動的にデータベース化が実行され随意に引き出すことが可能になる。付随資料・ファイルの添付は当然のこと、「検討中/済」など業務行程管理も含めて一元的な管理が可能である。
 また、不動産・地理情報データベースでは、担当部内に蓄積された案件情報に加え、J-REITの取引情報、住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」などの価格・賃料情報といった公知の情報、RESTARが独自調査した取引情報も含めてマップ上でシームレスに閲覧できる。これら2つから形成されたデータに基づき、投資意思の決定に役立つオリジナルな分析レポーティング、稟議書や投資委員会用の資料づくりを効率化できるというわけだ。
 こうした一連の業務について多くのAM会社は、表計算ソフトを活用し半ば手作業で資料をつくっているというのがこれまでの実情であった。「自身もファンド運用会社に在籍していた経験から、不動産業界はM&Aや金融の世界に比べてペーパレス化、データベースの整備・管理などが遅れ非効率性が大きいと感じていた。そこに事業機会を見出した」と代表取締役CEOの右納響氏はREMETIS開発の背景を話す。

REMETISを使った分析の例:
持込業者の担当者別の歩留まり分析

独自データベースの充実がカギ、使い込むほど高まる情報の精度

 REMETISはAM会社を中心としてデベロッパー、不動産仲介・コンサルティング会社などでの導入が急速に進んでいる。上場/私募REITの運用を担う大手AM会社ではスタンダートともいえる
地位を確立しているという。業務プラットフォームの一つとして使いこなすほどに案件の検討・分析時間の短縮・効率化が図られ、経験・ノウハウの共有・平準化につながったという例が加速度的に増えてきているからだ。
「投資運用においてより精度の高い意思決定を行うポイントは、日々寄せられるリアルな案件情報をREMETISに逐一取り込んで“ 独自のデータベースを充実させていくこと” に尽きる」と右納氏は看破する。
 前段ふれたように物件概要書などのペーパー情報は半自動的にシステムに読み込ませることができ、入力作業のストレスは皆無といっていい。これに加え取得検討した物件について、立地、売り手の希望価格、テナントの諸条件などのプラス/マイナスポイント、入札の場合にはその後の成約価格などをできる限りデータベースに反映させていくことでより深み・奥行きのあるものとし、高精度な投資意思決定へと昇華していく。REMETISの狙いはまさにそこにある。
 独自データベースを構築するメリットは計り知れない。まずもって購入検討~意思決定時のプロセスを見える化し、標準化できる点が大きい。データベースにあたれば近しい物件・アセットタイプの価格やキャップレート、坪単価などを即座に確認でき、投資判断を標準化し、ブレをなくすことが可能になる。
 いわゆるソーシングやディスポジション業務においても独自データベースは威力を発揮している。物件を持ち込んだ仲介会社や信託銀行の名称も登録できる仕組みとなっており、これを分析することで、仲介各社ごとの物件の成約率、アセットタイプの傾向などを容易に確認できるようになる。
「日々のJ-REIT取引データ、公表された取引価格・賃料データなどがアップデートされるようになっているが、これはあくまでも“公知”の情報に過ぎない。ユーザーがひと手間加え、あるいはシステムを使い込むことで、他社の一歩先を行く管理・運営、取得・売却業務を展開できる」(右納氏)。
 なおAM会社のなかには、資金属性が異なる複数のREITやファンドを運営しているケースも多い。REMETISは機能・階層ごとにアクセス権限を設けることで、ファイヤーウォールの体制構築にももれなく対応している。

REMETISを使った分析の例:
ステータス別の案件数推移

REMETISの活用いかんで
AUM成長に最大20%以上の開き

 REMETISを使いこみ独自データベースとして育成するメリットは実数字にも示されている。数千件以上の物件データを毎年登録、日々の業務に活用しているある顧客AM会社では、J-REIT全体平均に比べ、運用資産総額(AUM)の成長で最大20%以上差がつく結果となった。また、REMETISユーザーの全体平均も、J-REIT全体平均に比べ、約2倍の成長率を誇っている。業務の迅速性や効率化、案件分析能力を向上させた結果、投資家からの信頼・評価を高めることにつながったといえるだろう。
 RESTARは目下AM会社に加え、仲介・コンサルティング会社へのREMETIS拡販を進める。投資家と流通サイドが同様にREMETISを活用し、双方で管理・分析力を高めることで、マーケットの非効率性を削ぎ落し、一層の取引活性化につなげたいとしている。
「不動産金融業界では“ 人と人のつながり” が重要であり、そこで交換される情報がビジネス機会につながることはいうまでもない。しかしあまりに非効率な分野についてはDXの活用で改めていくべきだろう。RESTARとしてはユーザー企業同士のネットワーク構築のイベントを開催するなどリアルな場面でも市場の活性化に貢献していきたい」と右納氏は話している。

代表取締役CEO 右納 響氏

公認会計士試験合格後、PwCにてM&Aアドバイザリー・プロジェクトファイナンスの支援業務等に従事。
その後、アンジェロ・ゴードンにて、不動産投資業務に従事。 一橋大学経済学部卒

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