商業・ホテル・スパほか3つの広場を擁する
JR東日本グループの大型複合開発
【PROJECT REPORT】
東日本旅客鉄道㈱(JR東日本)は3月28日、JR・東急・東京臨海高速鉄道が乗り入れる「大井町」駅直結の大規模複合施設「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」(東京都品川区)を開業した。
同プロジェクトは、JR東日本グループが大井町・品川・高輪ゲートウェイ・田町・浜松町の各駅エリアを〝都市生活のイノベーションが生まれる先進エリア〞と位置づけて進めてきた、「広域品川圏」におけるまちづくりの一つ。OIMACHI TRACKSの開業同日には、JR「高輪ゲートウェイ」駅前の大規模再開発である「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」も全面開業しており、広域品川圏が本格的に動き出した格好だ。
OIMACHI TRACKSは「OIMACHI TRACKS HOTEL & RESIDENCE TOWER」(地下2階地上26階建て)、「OIMACHI TRACKS BUSINESS TOWER」(地下3階地上23階建て)という低層でつながる2棟の高層ビルを中心としてホテル、商業、ホール、オフィス、賃貸住宅、サービスレジデンスを配す。加えて、3つの広場を設け、その合計面積は約1万㎡(広場周辺の公開空地含む)に及ぶなどパブリックスペースにも力を入れた点は、従来の東京都内における駅前大規模再開発とは様相を異にしている。
以下、OIMACHI TRACKSを構成する各機能について、その概要とポイントをレポートする。
■OIMACHI TRACKS SHOPS & RESTAURANT
商業機能としては、㈱アトレが運営する「OIMACHI TRACKS SHOPS &RESTAURANTS」が低層部(地上1〜5階)に店舗面積約1万7,000㎡、全81店舗の規模で展開する。これまで駅ビルをメインに手がけてきたアトレとしては、初のアウトモール型商業施設である。
4階には「サウナメッツァ大井町トラックス」が出店。「スパメッツァ」「竜泉寺の湯」の屋号で温浴施設を展開するオークランド観光開発㈱による〝都市型リカバリースパ〞の新業態だ。注目は男湯に配された「トラムサウナ」。木製トラム(路面電車)の車内をモチーフとするサウナ室で、座席や吊り革といったデザイン面だけでなく、座席近くのボタンを押すと車内アナウンス風の音声とともにオートロウリュが作動する仕掛けもユニークだ。トラムサウナおよび隣接する「クールウェルネス」(内気浴スペース)からは、JRの車両基地が眺められるのも同地ならではの体験だ。

同じく男湯には希少性の高いケロ材を座面から壁面にまで使用した「ウォーリュ・ケロサウナ」を、女湯には天井から吊るされた網かごにハーブや薬草を入れることで香りをまとった蒸気が広がる「Woven Sauna」を設置している。なお、サウナ室はととのえ親方(松尾大氏)らが率いるTTNEがプロデュースしている。
このほか、浴場には「水風呂」「熱湯」「泡の湯」などを備え、館内施設としてサ飯やオリジナルクラフトサワーを提供する「WELL+CRAFT」やワークスペース、リラックススペースなどを付帯し、商業施設内ながら充実の滞在環境を整えた。利用料金は平日70分1,980円〜。


3階には「TOHOシネマズ大井町」がオープン。高品質シアターを都内のTOHOシネマズでは初導入(全体では3劇場目)した「Dolby Cinema®(ドルビーシネマ)」(264席)、スクリーン・音響・座席のすべてにこだわったハイエンドシアター「プレミアムシアター」(176席)、スピーカーユニットを向かい合わせで駆動させて空気を震わせる体感型サウンド・シアター「轟音シアター」(186席)の特殊シアター3種を含む全8スクリーン・1,205席を擁し、大井町エリアに新たな鑑賞環境を提供する。
飲食にも力を入れた。大井町で和食ダイニングバー「H」などを手がけるHグループのSC初出店となる「立呑み8」、五反田、田町に続く3店舗目となる溶岩焼肉専門店「銭場精肉店」、首都圏の商業施設内を中心にオイスターバーなどを展開する㈱ゼネラル・オイスターの新業態シーフードカジュアルレストラン「MARE&OYSTER」など多彩な飲食店舗をラインアップ。カジュアルな一人飲みから、グループでの個室利用などまで幅広いニーズへの対応を図っている。 さらに、鹿児島に本社をおき牛・豚の飼育から食肉の製造・加工、販売や外食事業までを手がけるカミチクグループが新業態として「ピチピチミートファーム」を出店。切りたてにこだわった肉の直売のほか、人気ハンバーグ店「山本のハンバーグ」とタッグを組んだ「ピチピチミートで山本のハンバーグ」では同店限定メニューを提供する。また、購入した肉をその場で楽しめるセルフバーベキューエリアも併設、リアル店舗ならではの価値を追求する。



このほか、2階には㈱ライフコーポレーションのスーパー「ライフ」と「ビオラル」が出店するなど、地域住民の日常利用にも目を配る。大井町駅には駅ビル商業として「アトレ大井町」を構えるが、同施設が足元2、3㎞圏をメイン商圏とするのに対し、OIMACHI TRACKS SHOPS & RESTAURANTSでは5㎞圏を視野に入れ集客を図っていく考えだ。
■ホテルメトロポリタン大井町トラックス
OIMACHI TRACKS HOTEL & RESIDENCE TOWERの地上5〜13階および26階には、日本ホテル㈱が運営する「ホテルメトロポリタン大井町トラックス」が展開。客室は「コンフォートキング」(20㎡〜、79室)や「コンフォートツイン」(21・7㎡、63室)をはじめ9タイプ・全285室(スイート1室、ツイン143室、キング141室)を備える。ホテル北側の客室は「トラックスビュー」とし、眼下に車両基地を臨む景観が特徴的だ。
最上階である26階には「The TRAVELERS HOUSE ROOFTOP BAR」を配した。「DEEP GREEN 〜日常からのエスケープ。心が躍る森の秘境。〜」をコンセプトとし、多くの緑に彩られた空間でティキカクテルやポリネシアンテイストのメニューを楽しめる。

また、5階のオールデイダイニング「The TAILOR YARD MAIN DINING」ではフレンチビストロをベースにしたランチ、ディナーとカフェメニューやアフタヌーンティーを提供する。いずれも運営は㈱ポジティブドリームパーソンズ。
従来のホテルメトロポリタンブランドよりも若い層の取り込みを目指し、ミレニアル世代をメインターゲットとする方針。稼動率約80%を目標とし、インバウンド比率は60%ほどを見込む。
■TRACKS PARK、CROSS PLAZA、STATION PLAZA
OIMACHI TRACKS内には憩いや交流の場所であり、災害時の広域避難場所に設定されるなど防災機能ももつパブリックスペースとして3つの広場が配されている。
なかでも目を惹くのが、4600㎡のメイン広場「TRACKS PARK」だ。天然芝と人工芝が敷設され、カフェ「スターバックス大井町トラックスパーク店」が隣接しており、駅至近でありながら屋外で憩うことのできる空間となっている。
施設の中心部には2層(2、3階)・3,400㎡の「CROSS PLAZA」を設置。東西・南北方向への動線の結節点として来場者が行き交う場所に多くのベンチを配すことで、施設回遊中でもふと立ち止まり、滞留できる空間となっている。

3月25日に開通した大井町駅の新改札口「トラックス口」から出てすぐのエリアは、約1,000㎡の「STATION PLAZA」とし、待ち合わせなどでの利用が想定される。
これら広場では開業後に各種イベントが開催される予定であり、来場喚起だけでなく、地域との連携や魅力発信の拠点となることが期待される。
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このほかにも、スクール形式で最大252人、立食形式で200人収容可能なホール「ステーションコンファレンス大井町トラックス」(340㎡・天井高3.5m)、総戸数194戸の高級賃貸レジデンス「OIMACHI TRACKS RESIDENCE」、シンガポールに拠点をおくアスコットによるサービスレジデンス「オークウッド大井町トラックス東京」(全78室)、オフィスなどを複合するOIMACHI TRACKS。他施設にない要素を採り入れながら、いずれの機能にも偏重しすぎないバランスのとれた構成、かつJR東日本グループの総力を存分に活かした開発といえよう。
(編集部では、有識者に「商業施設」「ホテル」それぞれの切り口で「OIMACHI TRACKS」の評価ポイントを取材した。詳細は本誌にて)