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久下沼伊織[一般社団法人ニッポンおふろ元気プロジェクト 理事]

温浴施設事業の利益確保のポイント
――事業継続のための攻守バランス

【VIEWPOINT】

温浴事業で売上げを上げる

⑴現状を把握する

 温浴事業を成立させるうえで、まずは売上げを最大化させていくことを考えなくてはならない。

 そのためには、現在の自店舗のポジショニング、つまり施設スペック(ハード面)・客層(性別や年代、グループサイズ)・価格帯・滞在時間・競合との優位性などをしっかり整理・把握し、自店がターゲットとする層にフィットしているのか検証する必要がある。
<中略>

⑵入浴売上げを確保する

 お風呂だけではない複合型のスパ施設なども含め、温浴事業の主たる売上げは入浴売上げである。

 すなわち、入浴売上げを適正に確保することが非常に重要となる。瞬間的な来店者増を目的にした、度を越した割引販売やクーポンの濫用、協賛等を含めた無料券のVIEWPOINT配布、過剰な特典を付与した回数券の特売などは、自店の主たる商品の価値を下げることにつながるので極力避けるべきである。

 

 ここ2〜3年は水光熱費を筆頭にあらゆる原価が上昇し、温浴施設の経営を圧迫している。そのため値上げに踏み切った施設も多い。

 オフロ保安庁の調査では、21年以降、実に8割以上が値上げを実施している[図表2]。その値上げ幅をみると、101円以上が42・2%で、81円以上になると6割を超える[図表3]。

 

 原価の上昇幅を鑑みれば妥当な上昇額ではあるが、単に経費増を転嫁しただけの施設と、値上げを機にサービス等の拡充を行なって価格に対する満足感が損なわれていない施設では、今後の集客に差が出てくるものと予想される。

 特に低単価・高回転型で客数重視の施設は、値上げによる来店頻度の変化に注視しなければならない。値上げを検討する際は、館内利用システムや会員制度の見直し、混雑状況や時間帯区分による料金設定(ダイナミックプライシング)、従来の平日/休日料金区分に加えて「繁忙期付加料金」の導入、各種還元率の見直しなどを総合的に行なっていくことを推奨する。
また、優良顧客の囲い込みも重要である。

<中略>

(3)付帯売上げを確保する

 

 施設体験の満足度を高めるうえで、飲食やリラクセーションの利用を促すべきである。顧客が入浴後にどういう過ごし方を望んでいるかを想像し、プラスの動機づけとなるメニューやサービスを提供している施設は、テナント利用率も高く、客単価増を実現している。またここ数年の動きとして注目されるのは、施設グッズの売上げの拡大である。

 ただし、なんでもつくれば売れるというわけではなく、顧客から愛される要素がある(顧客にとってロゴグッズを持つことに誇りがもてる)ことが大前提である。サービスレベルの追求や顧客へのアプローチを怠っていれば、付帯売上げは伸びないことを肝に銘じておきたい。

支出を抑制して利益を出す

 ここまで売上げを最大化することについてふれてきたが、両軸で支出のコントロールもしていかなくては、十分な利益を確保できない。突発的な修繕から計画的な設備投資、人手の確保、業界を取り巻く諸問題など、想定しなくてはならない費用と課題は山積している。

(1)設備老朽化への対応

 

 温浴事業は、安全・衛生を最優先しなくてはならない。装置産業の側面からも、いかに設備を安全に正常に稼動させ、安定した営業を実現できるかが重要である。

<中略>

(2)高騰するエネルギーコスト

 オフロ保安庁の調査では、約半数が、前年対比で最もふえたコストとして水道光熱費をあげている[図表5]。ちなみに、水道光熱費が最もふえたという回答者をみると、2番目に上昇したコストは人件費、3番目が修繕費と続いている。従来の砂濾過をバックフィルター式濾過器に変更することで逆洗工程をなくし、そのぶん湯の消費を抑制する例もふえている。

 

 しかし、水道使用量を抑えるために節水シャワーに切り替えるなどの対策は講じていても、吐水量や吐水時間に無駄が発生していたり、カラン本体・機械室内の配管・トイレタンクからの漏水は見逃されていることが多い。営業時間外にメーターが動いていないか確認するなど、日常の点検習慣と処置が大切である。ボイラー逃し弁の不具合に気づかず、毎分約5ℓ程度の漏水を放置していた結果、水道代・昇温代で年間約300万円を無駄にしていたという試算の事例もある。

 熱源においては、小規模施設ではガスや重油から薪・廃タイヤ・バイオマスボイラーに置き換えるケースもふえてきている。資材の調達ルートが適切に確保できる場合、更新時期に補助金等を活用して導入することも視野に入れたい。瞬間湯沸かし器を複数台連結させて賄う例もあるので、施設規模に応じて複数の選択肢を検討するとよいであろう。

(3)不足する人手への対応

 限られた人的資源を有効に活用するため、従来の人員配置にとらわれず、サービスの運用方法と一体化して見直していく必要がある。省力化・簡素化できること、機械に置き換えられることを洗い出し、温浴施設に限らずあらゆるサービス業での導入事例を参考に、人にしかできないことに人員を充てなくてはならない。

 
 例をあげると、電話対応を自動音声によるガイダンス式の案内に変更し、直接の対応が8割減になったという施設がある。

 代表電話を廃止してホームページをFAQに特化した施設や、チャットボットを導入することで想定される問合せをほぼ網羅している施設も、おおむね支障なく運用できているという。
 配膳ロボットや自動精算機、アプリや顔認証を用いて決済まで含めた入退館管理システムの導入なども加速し、機器や性能もブラッシュアップされてきている。

 また、日常業務のタブレット管理や設備の状態監視システム等の活用により、人手による作業漏れを防いだり、IoT混雑情報サービスにより必要な箇所に人員を投入することはもちろん、履歴の蓄積により適切なシフト編成をサポートするなど、業務効率化を図りながら業務負荷を低減する取組みも積極的に活用していかなくてはならない[図表7]。

<続きは本誌にて>

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