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【PROJECT REPORT】
おかえり集学校プロジェクト
──人々が集いつながるIT交流拠点として廃校を再生

PCリユースメーカーが発想した「学校のリユース」

 地方進出と地域課題解決をリンクさせた新しい発想で廃校を再生し、その拠点を全国47都道府県に広げようとしている「おかえり集学校プロジェクト」を立ち上げたのは、OA・IT機器のリユースを手がけるリングロー㈱である。

 

 「より安くて安心して買えるものを全国の人に提供したいという想いで事業を展開してきましたが、主な取引先である販売店さんの商圏は人口密集地に限られ、私たちの商品やサービスは日本のごく一部にしか提供できていないことに気づきました」と、同社代表取締役であり、同プロジェクトの事業主体である一般社団法人おかえり集学校(2023年3月設立)の代表理事を務める碇敏之氏は語る。

 

 廃校発生件数が突出している北海道の出身で、かねてより地方で廃校がふえていることを実感していた碇氏は、従来の商圏から外れIT機器にあまり興味のない人にリーチする拠点として廃校に着目し、「学校をリユースする」という考え方に至ったという。また、最初の拠点となる廃校を探しているとき、デジタルディバイドが地方で大きな地域課題となっていることを知る。廃校が多いのは主に人口減少の著しい過疎地域。携帯ショップは自宅から遠く、多くの人はスマホを所持していても十分に活用できていない。

 

 「PCやスマホなどの買い替えや、それで自分のできることを広げるといった情報を得る機会が本当に少なく、自治体と連携してデジタルディバイド対策を行なえば地域に貢献もできると考えました」(碇氏)。
 
 PCやスマホの活用を〝学ぶ〞場なら「学校」との親和性は高いはずで、かつ通っていた学校であれば敷居も低くなるだろうと予想された。
こうして計画を進めるなかで、おかえり集学校プロジェクトは、①IT機器相談や自治体・地元企業へのDX提案、②PCやスマホなどの販売・修理、③イベント会場・短期営業所・長期オフィスなどとしての空き教室の貸出、④協働企業との連携によるIT人材育成、などを柱とする事業概要が固まっていった。

 2017年4月、廃校の無償貸出に最初に応じた山形県舟形町に第1号校「長沢集学校」が開校。23年10月現在では開校予定4校を含め全国で22校を数えるまでになっている。

IT相談所と交流拠点を兼ねる「集学校」

 集学校の機能は、「地域のITなんでも相談所」と「地域交流の拠点」が両輪となる。前者は、PCやスマホの無料相談、年賀状作成からSNSの使い方や情報セキュリティ、プログラミングまでの講座開講など、後者については、交流スペースの開放、地域内外の交流イベントの企画・運営、サークル・団体向けスペースの貸出、といったサービスを提供している。

 施設面では、IT無料相談の場とスタッフの執務室を兼ねた「今日室」、イベント・集会など多目的に使えるフリースペース「わカフェ」、月1万1000〜3万3000円という施設管理費で利用できる賃貸教室「職in室」、コワーキングスペース、時間貸出用の空き教室などのほか、廃校前の学校の歴代の文集や卒業アルバム、備品などを展示した「古部屋」を設ける。
 
 碇氏によれば、借り受ける廃校の条件として「交通の便」「ノマドワーカーを意識した景観のよさ」などは確かに重要ではあるものの、何より大切なのは「地域の人がその学校を遺したいという想い」という。事前説明会では、「学校に入れなくなるのでは」「地区の集会ができなくなってしまうのでは」といった不安の声が出る。

 地域外の団体が地域のシンボルである学校を活用しようというのであるから警戒されるのは当然といえ、そこから「われわれの事業を丁寧に説明し、活動を可視化して関係性をつくりあげていくことが重要」だと碇氏は語る。

 事業スキームとしては、まず自治体から無償で廃校を借り受け、その代わり事業主体の一般社団法人おかえり集学校がメンテナンス費用やランニングコストを負担する。自治体にとっては活用の有無にかかわらず年間400万円程度かかる廃校の維持費がなくなり、廃校を活用していればスペースの貸出・予約管理に関連する事務作業などから解放されるのは大きなメリットだ。借り受けるのは新耐震基準を満たした校舎1棟丸ごとが最小単位で、自治体の要望があれば校庭や体育館の管理も引き受けることもある。

 初期投資はおおむね1校当たり4000万〜5000万円。校舎をリノベーションして先述の施設を整備する。廃校後に使用を止めていたり、子ども用や和式トイレを変更するなどの水周りに改修が必要なときは費用がかさむ。用途転用については一般事務なのでハードルは低い。
 
 施設の維持管理費は、年間300万〜400万円。費用項目で割合が大きいのは電気代だ。メンテナンス費用はさしてかからないが、水道管や浄化槽など大規模修繕が必要な場合は自治体と話し合い、費用を折半するなどして対応している。地域によっては冬季に除雪作業が必須だが、自治体や地域が「ついでに」やってくれることが多いというのは、地元とのよい関係性が築かれている証しといえる。
 
 改装費をはじめランニングコストなどについて、おかえり集学校では公的な補助制度を一切頼っていない。なぜなら「やりたいことができなくなり、ビジネスモデルとして確立できなくなる」(碇氏)懸念があるからだ。
 
 収益事業としては、ITリテラシーの啓蒙といったデジタルディバイド対策やDXについての行政からの受託事業、PCやスマホなどの販売および修理、空き教室の貸出等その他の業務、があげられる。今期の売上げは22校で約1億円を見込んでおり、その内訳は、受託事業が3分の1程度、PC・スマホ関連が3分の1強、残りがその他である。

<続きは本誌にて>

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