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【企業レポート】メトス

ミニマム改修で従来のサウナの価値を活かす
古くて新しいリニューアルの提案

アウトドアサウナの設置に続き老舗旅館が全館改修へ

 1935年創業の国内におけるサウナメーカーのパイオニアである㈱メトスは、老舗旅館のリニューアルに際し、サウナ・スパについてのプロデュースを行なった。
北九州市の西に位置する遠賀郡の波津海岸に面して建つ「八幡屋」は、1935年の創業。現在は、95年設立の㈱グラノ24Kが展開する「ぶどうの樹」グループの一店舗として運営している。
 同社は、宿泊施設のほか、レストラン、ウエディング施設の運営、果樹栽培、加工品製造販売など幅広い事業を展開しており、2017年にはグランピング事業にも参入している。

 新鮮な海の幸を中心とする懐石料理を強みに、長らく宴会旅館としての利用が中心だった八幡屋は、新たな活路を切り開こうと、25年前(1998年)、1階を大浴場、3階を地産地消型のバイキングレストラン、4階を海の見える大浴場とサウナに改修する大規模なリニューアルを実施した。その際にメトスのサウナを導入している。
 大規模なリニューアル後は、日帰り入浴とバイキングレストランを中心とした営業を続けていたが、いまから3年前の20年には観光協会の協力も得て、新たな付加価値としてグランピングを導入。海岸を期間限定で占有利用する形で、日中はテントでグランピングを楽しみ、夜は旅館でゆったり眠れる「リョカンピング」を開始した。

 「特に目立った観光資源もない土地ですので、何か目玉になるものがほしいと考えていました」と語るのはグラノ24K 執行役員常務の大堂卓哉氏。そこでメトスが提案したのが「アウトドアサウナ」であった。

 メトス 新規事業部 マネージャーの佐藤えみ氏は「地域のよさを伝えるために、その土地の間伐材などを活用した薪で加熱するサウナをご提案しました。使用する木材によって香りが異なるので、その地域らしさを楽しんでいただけますし、エコなエネルギーでサウナを体験できることは、時代にも合っていると思いました」と話す。

国内でも最大級の大型タイプのプライベートサウナ

薪ストーブ式のトレーラーサウナ「ドコデモサウナ」

さらに八幡屋は、水風呂も付帯した超大型のトレーラーサウナ「スパセンター」を駐車場の一角に、水風呂のないトレーラーサウナをビーチに設置。ビーチのサウナでは、水風呂代わりに目の前の海に飛び込んでもらうことも、他にはない体験になると考えた。

トレーラーサウナが好評である一方、旅館自体の老朽化は否めず、また長引くコロナ禍もあり、八幡屋は根本的な改革の必要に迫られていた。そこで、観光庁の「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業」の補助も活用して大規模改修を決断。創業88周年を迎えた今年3月25日、「海辺の鮨宿 八幡屋」としてリニューアルオープンした。

大浴場であった1階はワンフロア貸し切り(206㎡、定員10人)の客室とし、これまで使用していた大きな陶器風呂、ガーデン露天風呂や湯上りやぐら、本格サウナを残しつつ手を加えた。4階もフロア貸し切り(238㎡、定員10人)に改め、オーシャンビュー、変わり囲炉裏処、海が見える絶景ジャグジー内風呂と本格サウナ、屋上ジャグジースパ、20畳の和室というしつらえとした。

トイレや洗面が共同利用だった2階の客室は、老舗らしさを残しながら、和レトロと和モダンを融合させた7室に。バイキングレストランだった3階は、ホテルタイプの洋室3室に。広さは約40〜90㎡と、さまざまな利用ニーズに対応する。12ある全客室にミニキッチンが設置され、仲間や家族とゆったり滞在でき、長期滞在も可能な施設に生まれ変わった。

宿泊客に利用を限定し付加価値アップ コスト減と単価増で収益が好転

1階と4階のサウナに関してメトスは、もともとあったサウナ施設を活用し、改修はあえて最小限にとどめることを提案した。同社のサウナストーブは耐用年数が長いため、まだまだ十分使用できること、またベンチなどの付帯設備も部分的な改修で対応した。その結果、プライベートサウナでありながら15〜16人でも使用できる広々とした空間と、昭和レトロな雰囲気をもつ、八幡屋ならではの”味わいのあるサウナ”となった。

八幡屋では、トレーラーサウナも含め、サウナは宿泊客のみの利用に限定している。「サウナだけ日帰りで利用したいというご要望はいただいています。しかし当社の目的は宿泊客をふやすことにありますので、サウナは宿泊してくださるお客様への付加価値と考えています。

特にアウトドアサウナ、薪サウナは初めての方が多いので、存分に楽しんでいただけるよう、メトスさんからレクチャーしていただいたことをお客様にもご案内しています」と大堂氏。「いままでとは違う家族の時間がもてた」「サウナは苦手だったけれど好きになった」などと喜ばれ、すでにリピートする人もいるなど、予想を超える反響だという。

今春にフルリニューアルした「八幡屋」

2020年より「リョカンピング」をスタート

収益面も好転している。以前はガスボイラーを使用しており、客数に関わらず常に一定以上の水道光熱費がかかっていたが、今回のリニューアルを機に客室ごとの給湯に切り替えたことでコストは3分の1に減少した。

また平均客単価も、日帰り入浴とバイキングレストランでは2000〜2500円程度だったが、現在は約2万円にまで上昇。「固定経費を客数に応じた変動経費化し、なおかつ少数のスタッフで運営できるようになったことで、収益が大きく改善しました」と大堂氏。

八幡屋の特徴について佐藤氏は「サウナの改修はフルリニューアルが主流になっていますが、古きよき時代を残しながらリニューアルするという新たな形を提案できたと思っています。特にアウトドアサウナのような取組みでは、楽しみ方までを提案してこそ、最大限の魅力を感じていただくことができると思います」と語る。

和風コンドミニアム的なテイストもあり、インバウンド利用も期待できる八幡屋。メトスとコラボしながら、今後はサウナを前面に押し出したプロモーションも展開していく計画だ。

問合せ

㈱メトス
東京都中央区築地6-16-1
築地ビル616

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