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【CASESTUDY】
地域共生の実現と新たな空間的価値を創造した
野村不動産グループのフラッグシップ商業施設

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亀戸の歴史を引き継ぎ
新しい時を刻む生活創造拠点へ
JR総武線「亀戸」駅から徒歩約2分、東京都江東区亀戸6丁目の商業地域に4月28日、野村不動産グループが、同社グループのフラッグシップ商業施設と位置付ける「KAMEIDO CLOCK」(カメイドクロック)をグランドオープンさせた。同年1月に竣工した地下2階地上25階建て・全934戸の分譲マンション「プラウドタワー亀戸クロス」との住・商・学+広場で構成される大規模複合施設で、2016年3月に閉鎖された商業施設「サンストリート亀戸」の跡地となる敷地に完成させたもの。
同敷地は、1939〜93年まで、第二精工舎(現セイコーインスツル)の東京工場がモノづくりの拠点として存在。その後、工場閉鎖に伴い、商業施設「サンストリート亀戸」に生まれ変わったという経緯をもつ。 そうした歴史をネーミングに組み込んだ「カメイドクロック」は、前身の「サンストリート亀戸」のDNAを引き継ぐとともに、地域住民が刻んできた亀戸の歴史と新しい住民が手を取り、これからの時を刻む生活創造拠点と位置づける。
そして、カメイドクロックは、野村不動産グループが、19年に開発した「プラウドシティ日吉」(横浜市港北区)に続く、「BE UNITED構想」を採り入れた2番目の施設というもう1つの顔をもつ。BE UNITED構想とは、人口減少や少子高齢化による需要の減少、働き手の不足、コミュニティの崩壊などさまざまな社会課題に加え、地球温暖化や気候変動による自然災害の激甚化など、近年の生活に対する大きな環境の変化に対応した、人々が「住まい」「働き」「集い」「憩う」多機能かつ高い利便性を兼ね備えた「都市型コンパクトタウン」の実現に向けた取組み。まちづくりというハードに、個人や団体、学校や企業など多種多様なプレイヤーによるソフトを組み込み、街への愛着や誇りを育成していこうという考えだ。
カメイドクロックでは、これら2つの開発テーマを軸に、行政や周辺住民と協議を重ね、「急増する児童数の増加」や「生活利便施設の不足」などの地域課題の解消に資する商業施設が目指された。
グランピングやキャンプ人気を反映してアウトドア系テナントを充実させる
下町+ニューカルチャーで
新たなライフスタイルを提案
カメイドクロックは敷地面積約2万3,000u(プラウドタワー亀戸クロスを含む)。地下1階地上6階建て、延床面積は5万8,000uで136店舗が入居する。テナントは生活利便を高め、衣食住を全面サポートするという視点で構成。ライフスタイルの定番と位置付けられた「ユニクロ」「TSUTAYA BOOKSTORE」、大手家電量販店「コジマ×ビックカメラ」、デイリーユースのニーズに応える「カルディコーヒーファーム」「ココカラファイン」「スターバックス」「Seria」などが出店する。
地元江東区で人気の精肉店が手掛ける焼き肉店をはじめ 、地域になじみ深いテナントが多数出店する
またアルペングループが展開する総合スポーツショップ「スポーツデポ」と独立した形で、同グループのアウトドア専門店「アルペンアウトドアーズ」が2階フロアに出店、コロナ禍で人気が高まったアウトドアスポーツを大型テナントとして誘致するなど、時流を捉えた構成も特徴的だ。
地階はエリア最大面積となるスーパーマーケットの「LIFE」や鮮魚店、精肉店、惣菜を扱う全26店舗で構成する「カメクロマルシェ」として展開。「地域No.1 “食”市場」を謳い、大型スーパーと専門店で食生活がすべて完結するコンセプトとなっている。
4階にはファミリー層にもなじみのある「マクドナルド」「ケンタッキーフライドチキン」など、9店舗を集めた540席のフードコートを擁するが、それとは別に「下町とニューカルチャーが融合する新しい亀戸ライフ」と銘打ち、1階の路面を利用して、下町の雰囲気を演出した食のエリア「カメクロ横丁」が注目だ。
住宅棟との間を単なる通路とせず、路面に飲食店を並べた「カメクロ横丁」としにぎわい空間を創造
地元に長年愛された「焼肉ホルモン魂」、城東エリアで人気の名店「にだいめ野口鮮魚店」など、地域になじみのある店舗と選りすぐったハイトレンドな店舗を共演させている。また横丁ではないが同じ1階には、元祖くず餅が有名な「船橋屋」も出店するなど“地元色”をより強めている。
「カメクロ横丁」は対面のマンション住宅棟に対して、通路を挟み向かい合う形で店舗が並んでいる。壁をつくると単なる通路にしかならないが、横丁に属するすべての店を、外から入店できる開放的な仕様とすることで、にぎわいのある空間を形成。抜け道として利用する会社帰りのサラリーマンやOLが、気軽に立ち寄れるスポットとしての価値創出につなげた。
また、動線についても、マンションを含む敷地全体のバランス、街への広がりや連続性を踏まえ、東西南北に貫通通路を設けることで、敷地内外の高い回遊性を実現していることも注目すべきポイントだ[図表]
JR「亀戸」駅側に面した「カメクロプラザ」では、大道芸のパフォーマンスのほか、キッチンカーなどの出店も計画
サンストリートのDNAを継ぐ
屋内外で連続するイベント広場に
にぎわいを創出する装置として、屋外北側エリアの玄関動線上に沿った「カメクロプラザ」(約620u)、館内1階に大型ビジョンを備えた全天候型吹抜け広場「カメクロコート」(約116u)、屋外には着席時は300人、立ち見を含めば最大500人を集客するステージ付き広場「カメクロステージ」(約1,049u)を設けている。これは、いまや世界的アーティストとして活躍するPerfumeのパフォーマンスをはじめ、前身の「サンストリート亀戸」時代にはさまざまなイベントが開催されてきたという歴史を踏襲するものといえよう。
サンストリートの記憶を継承する「カメクロステージ」。屋内のイベントスペース「カメクロコート」とも連携することで多様なイベントが可能に
「地域の方々との協議で、街の人が集まったり、祭事ができたりするスペースへの要望は強く、そうしたサンストリートのDNAも引き継ぎました。活用についてはいまだ試行錯誤しているところですが、地域共生を深められるようなスペースにしていきたいと考えています」(野村不動産(株)都市開発第二事業本部・商業事業部事業一課森谷秀嗣氏)。
隣接するマンション住民や小学校に対し、音への配慮は必要だが、野外の常設ステージと屋内のイベントスペースの連続性を活かすことで節や天候にも左右されないなど、そのポテンシャルは高い。野外のカメクロステージも地域の人々の憩いの場として、開業後は下校後の小学生たちの遊び場として、普段使いする姿も日常的な光景となった。開業後の5、6月は天候不順が続き、まだ大きなイベントは開催されていないが、屋内の「カメクロコート」を使い、「TSUTAYA BOOKSTORE」との共同でアイドルやアーティストなど音楽系イベントを開催し、小規模ながらかつてのにぎわいを取り戻しつつある。
「カメクロ横丁」の向かいには、野村不動産とCCCの提携によるオフィスラウンジ「SHARE LOUNGE亀戸with H1T」が出店。地域のワークスペース拠点にも
このほか、施設4階にあるコミュニティスペース「カメラボ」(約120u)で実施した「コジマ×ビックカメラ」によるミニ四駆のイベントや、フードコートに出店しているテナントによるうどん打ち体験イベントなど、地域とテナントの接点を生み出す催しも好評だ。さらに駅側の玄関となる「カメクロプラザ」では、休日には大道芸のパフォーマンスのほか、今後はキッチンカーの誘致も進めていく。とりわけ地元の要望が強かった祭事については、コロナ禍で今年8月に予定されていた地元「亀戸香取神社」の例大祭が中止となったが、3年間担がれなかった神輿を、展示することで地元の思いにも応えていきたいという。
「ほかにも地域の行事として、例年7〜8月に厄除け・邪気祓いとして食用の唐辛子をほうずき市のように鉢に入れて販売する“亀戸赤からし市”があります。亀戸梅屋敷や亀戸天神社など4か所で行なわれるのですが、これに関連させて7月30日〜8月14日に地元商店街と連携して、当施設の飲食店、惣菜店で赤とうがらしを使ったメニューを展開する予定です。また、9月24、25日には、“カメクロフェスタ”(名称は未定)を開催。亀戸の大道芸人によるパフォーマンス、地域行事の紹介、人力車体験イベント、部活動パフォーマンスなど、地域活性化の一助となるイベントも計画しています」(森谷氏)。
地域のショッピングニーズに応えることはもとより、人と寄り添い、地域と共創しながら街の力を高めていく同社のまちづくり。亀戸の新しい歴史として、どのような“時”を刻むのか今後も注目したい。
<そのほかの事例研究は本誌にて>
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