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【事例研究】湯元花の湯
「ソルトピット」「ロウリュサウナ」新設
健康増進サービス強化で差別化を狙う

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コロナ禍を機に機能拡充目指す、銭湯の新たな挑戦

 「函館」駅から車で約15分、函館空港から同約20分、函館市桔梗町・国道5号線沿いに、源泉100%かけ流しで“心温まる癒しの温泉”をモットーに市民が親しめる銭湯(一般公衆浴場)として2003年5月、「湯元花の湯」はオープンした。
 同施設の最大の特徴は、造園事業を営む初代社長が、全国35か所余のリゾートホテルなどの露天風呂を手がけた経験を活かして設えた庭園露天風呂(和風・洋風2タイプ)。和風約450u(浴槽面積+庭面積)、洋風約350u(同)と銭湯とは思えない広さと贅沢さで、四季折々の風情を感じながら温泉を満喫できる。
 現在の事業主体は(株)アース開発(函館市、代表取締役 西野亜通志氏)。17年に前述の初代社長から娘婿夫婦が親族内事業承継し、長男とともに親子三代で温泉を守っている。
 泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉で湧出量も豊富。入浴後の保温効果が高く刺激が弱いので高齢者向きでもあり、地域住民はもちろん観光客にも人気で、18年には年間26万2,000人の来館者を数えた。
 しかし20年春からのコロナ禍により、常連の高齢者層の来場が激減、「食事処」の撤退を決断し厨房をパンや菓子類、カップ麺などの自販機コーナーに改装。そのなかでも、コカ・コーラ社とタイアップしたユニークな自販機コーナーを設置し、「コーラルーム」として打ち出すなど、オリジナリティにこだわった空間づくりとサービス提供に努めている。
 こうした背景のもと、同社は温泉について超高齢社会を見据えた健康増進サービスの提供の場と捉え直し、差別化の実現を計画。さまざまな情報を収集する過程で「ソルトピット」と21年夏頃に出会ったという。
 東欧ハンガリーでは、古くから岩塩の洞窟を利用したサナトリウム(療養所)が数多く、塩分を含んだ大気を呼吸することで病気の治療に効果をもたらしていた。この天然のサナトリウムを現代に再現するために潟Aクアエンタープライズ(東京都港区、代表取締役 重 隆文氏)が開発したのが、塩とマイナスイオンの力を利用した空気清浄空間「ソルトピット」である。
 21年10月3日、湯元花の湯では洋風露天の浴槽の1つを「ソルトピット」と休憩スペースに、また和風露天の同じく浴槽1つを「ロウリュサウナ」に転換した。銭湯の露天風呂ゾーンにサウナを新設する際に必須となる消防署や保健所への許可申請など諸般の業務は、アクアエンタープライズ 重氏が豊富な実績で培ったノウハウによりサポート。また工事による営業休止時間を削減するべく、「ソルトピット」は組み立てた状態で大型クレーンを使い露天風呂に運び入れるなど、約2か月という短工期での改修を実現した。
 この一連のリニューアル費用は新規設備導入費、施工費、既存設備の入替え、改修費など含め、約2,000万円。現在の浴槽数や設備は別表のとおりだが、風呂は源泉かけ流し(岩風呂のみ加水あり)で、銭湯料金(大人450円)のみですべての風呂・サウナが利用できるため、利用者にはたいへんリーズナブルといえよう。
 月次来館者数を改修前年の20年と21年とで比べると、「ソルトピット」「ロウリュサウナ」導入前の9月がマイナス2,449人だったのに対して、導入月の10月はマイナス423人と減少幅が2,000人以上縮減。以降、11月がプラス3,388人、12月が同3,204人とプラスに転化するなど、導入効果が顕在化している。
「ソルトピット」はクールダウン室としても活用。利用した人(喫煙者)から喉の調子がよくなったとの声も

温泉の原点に立ち戻り、地域への貢献を掲げる

 同社の取組みはこうしたハード面の改修だけにとどまらない。そもそも「ロウリュサウナ」の導入理由は、単なるサウナブームへの便乗ではない。内風呂に従来からあるサウナは室温約90℃のドライサウナ。一方、ロウリュサウナは70〜80℃の中温度帯で、かつロウリュにより湿度と温度の変化が満喫できるなど、より多くの利用客の嗜好に対応可能な点に着目したためだ。
既存の東屋を活かした「ロウリュサウナ」。有田焼のサウナストーンも使用
 同時に健康増進に寄与する温泉やサウナの原点に立ち、適切な入浴方法などをスタッフがしっかり説明できるよう人材育成にも注力。経営陣をはじめ、従業員もこれに関連する資格を取得した。その内訳は入浴指導員2人、サウナ・スパ プロフェッショナルマネージャー2人、サウナ・スパ健康アドバイザー10人、高齢者入浴アドバイザー4人、温泉ソムリエ2人など多岐にわたる。
 現在同社では、「湯治」という概念を包含した“新しい銭湯温泉スタイル”の確立に挑戦中だ。将来的には「温泉利用プログラム型健康増進施設」の認定を目指すとともに、地元企業とのコラボレーションなど含め、地域に貢献できる施設となるよう、独自色を打ち出した取組みを継続していきたいとしている。
<そのほかの事例研究や有力企業インタビューは本誌にて>
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