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コロナ禍で変容したマーケットに正対、
観光DXで施設運営の柔軟性向上と
地域課題の解決に貢献

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森口浩紀氏
開TB 執行役員 地域ソリューション事業部長
エリアソリューション担当

鮎貝雅代氏
潟OッドフェローズJTB
代表取締役 社長執行役員

 開TBは2020年、集客施設のチケッティングおよびデジタル化ソリューションで実績のある潟Oッドフェローズと合弁会社潟OッドフェローズJTB(以下、GFJ)を設立。ポストコロナに向け、レジャー・観光施設とその地域の課題解決への取組みの実際をうかがった。

域内交流から広域へ広がるエリアツーリズムへ

――まず、地域ソリューション事業部の業務内容についてお伺いします。
森口  JTBは従来、個人、法人、グローバルの3つの軸で事業展開していましたが、21年4月から、旅行を中心に個人や法人のお客さまに寄り添うツーリズム事業と、企業の課題に向き合うビジネスソリューション事業、地域課題に向き合うエリアソリューション事業の3部体制に改変しました。そのなかで当部署は自治体やDMO、観光事業者など地域に根付くお客さまを対象に、デジタルソリューションや、地域という観点でいえば「ふるさと納税」などに関する商品開発など、多彩なツールやサービスを駆使して課題解決を目指しています。
――そうしたなか、22年のツーリズム市場をどうみていますか。
森口  まず旅行ニーズは国内のお客さまを中心に近隣エリア内からスタートし、徐々に隣県など広域に拡大する流れになるでしょう。JTBではこうした動きをエリアツーリズムと呼んでいます。グローバルな人流の回復はそれ以降とみて、まずは国内旅行需要の回復に取り組む方針です。国や自治体もGo Toキャンペーンなどの諸施策を打ち出すことを念頭に、これに最大限応えられる体制を固めるとともに、地域の観光事業者の方々により質の高いサービスを提供する準備を進めている段階です。
 また大きな視点では、従来、JTBとしてコンテンツを売る仕事をしてきましたが、各施設事業者の自販サイト、公式サイトから商品を購入するお客さまの動きがコロナで拡大しています。ある調査会社の調べによると、19年までは旅ナカ、着地のコンテンツを旅行会社やOTA、メタサーチ等で購入したいとのニーズが公式サイトでの購入意欲を押さえ、半数近くを占めていたものが、21年は、三密回避のために空いている時間、場所などリアルな情報を確実に把握したうえで訪れたいというニーズが亢進し、公式サイトで購入したいというニーズが逆転しています。
 今後も正しい情報、旬な情報を公式サイトで取得し現地を訪れるという流れが定着するでしょうから、当社を利用して旅行に行っていただくお客さまだけでなく、地域を訪れるお客さま全般に対して、域内の多様な事業者と連携し何を提供できるかを考えています。

安心・安全に向けた柔軟な施設運営を支援

――そこでGFJさんの存在が重要になりますが、20年の会社立ち上げからここまでを振り返っていかがですか。
鮎貝  長期にわたる外出自粛、行動制限により人々の旅行への欲求は限界に達しているとみています。この間、JTBでもご自宅で旅体験をしていただくオンラインツアーの販売なども行なってきました。このような新しい楽しみ方が生まれた一方で、これがすべてリアルの代わりになるわけではないとの実感も高まっているのではないでしょうか。ビジネスシーンなどでは一定程度、オンラインが定着しましたが、レジャー、観光分野では、逆にリアルに場所を訪れて楽しむことの価値が、ある意味、コロナ禍前よりも高まっているものと考えます。
 とはいえコロナの完全収束は依然見通せないため、今後も「ウィズコロナ」の視点に立ち、来場者と従業員双方にとっての「安心・安全」の施設運営が大前提となるでしょう。具体的には感染状況に合わせて来場者の受け入れをコントロールしつつ運営を継続できる柔軟な態勢が不可欠です。これはデジタルの力なくしては不可能であり、DXを運営の「効率化」だけでなく、運営面の「柔軟性」を実現するためにも訴求して参ります。
 加えて推進強化しているのが域内の施設同士をつなぐことで地域の活性化を図る「共通券・周遊券ソリューション」です。すでに20年秋からの「万博お得チケット」(大阪モノレールと万博記念公園内外の諸施設をセットで割安に利用可。大阪府)を皮切りに、「美ら海とくとく5パス」(沖縄県)「KOBE観光スマートパスポート」(神戸市)など、さまざまな地域、施設での利用が進んでいるところです。

バックヤードの業務負荷を軽減、運営の効率化にも貢献

鮎貝  この共通券・周遊券ソリューションのほか、当社のビジネスの柱は、観光事業者とチケット販売業者を結ぶ流通のプラットフォーム「チケットHUB」や施設公式ホームページのオンライン販売を簡単に実現する「Webket」の提供、そしてデジタルデータを活用して観光施設や地域全体の魅力度を上げる提案を行なうマーケティング支援事業になります。
 特にコロナ禍以降は来場する顧客層も変化しており、たとえば遠方からの観光客中心だった客層が、近隣客にもシフトすることなどを踏まえ、コンテンツ開発にも新たな客層に的確に対応することが求められています。こうした本来の業務にエネルギーを注げるようにバックヤードの負荷を減らすことが重要で、そこにも当社は貢献できると考えます。
 また、コロナによる入場制限などで週末のピーク入場者数が限定されるなか、平日の来場者数を上げる工夫が求められるなど、繁閑期の平準化も課題です。プライシングも含めたコントロールが重要ですが、ここでもデジタルによる日時指定予約が力を発揮するものと考えており、Webketによりそれは実現可能です。さらに平日の来場者確保のために近隣客へのターゲットのシフトを考えると、その対象ごとに販売網を新たに開拓していくのは大変です。
 チケットHUBなら交通事業者なども含め多様な販売事業者との接続ができるプラットフォームなので、従来獲得できていなかった顧客層に自力だけでなく効率的にアプローチできるのも大きなメリットです。
――22年の抱負をお聞かせください。
森口  地域発展の要諦とは、端的にいえば地域に多くの観光客に来てもらい、結果的に地元の税収が上がることです。この実現に向け、地域全域を1つのテーマパークと見立て、そのなかに多彩な観光地やレジャー施設がある、そこを周遊するコンテンツが豊富にあり、さらに飲食や滞在してもらうための宿泊施設をつなぎ、2次交通のインフラも含めて地域全体を盛り立てていく、という形が最終的に目指すイメージで、GFJとの連携でこれに取り組みます。
鮎貝  チケットHUBに個人客のみならず、団体客に対しての機能を追加します。たとえば修学旅行など大人数の場合、受入れ施設側も従来は紙のクーポンでの精算などアナログ作業が中心でした。それがチケットHUBの機能で一元化、効率化でき、事業者のバックヤードの生産性向上につながります。
 また地域を訪れてからチケットを購入されるケースが多く、観光施設周辺の宿泊施設や観光協会などでもいまだ紙のチケットの取扱いが多いのですが、その配布や精算の手間もチケットHUBにより削減ができるため、ここも加速させたいところです。
一方、インバウンド回復を見据えてインバウンド向けの販売事業者との連携も進め販売チャネルを拡大します。
 さらに、コロナ禍で顕著となったチケット購買行動の変容に対応すべく、施設サイトでの日時指定予約率の向上に向けて、マーケティングによるデータ分析などの情報提供を図るサービスにも注力し、事業者の方々と地域全体の成長戦略を多面的にサポートしていきたいと考えています。
[プロフィール]
森口浩紀(もりぐち・ひろき)
1990年JTB入社。JTB西日本総務課長、和歌山支店長、京都支店長等を歴任、主に法人営業ならびに地域交流事業に取り組む。2021年より地域ソリューション事業部長として、地域自治体や観光事業者のサスティナブルな観光地経営を支援すべく、さまざまなソリューション開発に取り組んでいる。

鮎貝雅代(あゆがい・まさよ)
大学卒業後、大手百貨店にて館内リニューアルやイベント企画を担当後、2006年JTB入社。20年潟OッドフェローズJTB代表取締役 社長執行役員に就任。施設を熟知したグッドフェローズのシステムソリューションとJTBが培ってきた施設との関係性を活かし、電子チケット流通プラットフォーム事業を拡大中。
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