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拡大する需要に応えるパーク運営のあり方と留意点
――運営大手・ムラサキスポーツに聞く

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30年近い施設運営経験。オリンピック効果でコロナ禍を凌駕

 スケートボード、BMX、サーフィン等のアクションスポーツ関連商品や、ストリートカジュアルウェア等の企画・輸入・販売を手掛ける潟ラサキスポーツ。1973年の設立以来、全国に140店舗以上を展開する同社では、「青少年の健全な育成」「スポーツ文化の発展」を社是に掲げ、「モノを売る」だけでなくスケートボードやBMXを実際に体験、学べる場を提供し「コトも売る」べく、30年近く前から施設運営にも乗り出している。
 2009年からは東京都足立区の遊園地「アメージングスクエア」跡地内でスケートボードパークを運営。14年には関東最大級となる室内型スケートパークも設置。スケートボード、BMX、インラインスケートに対応する複合型のスケートパーク「ムラサキパーク東京」として、一般利用はもとより、未経験者や初心者から上級者向けまでそれぞれのレベルに合わせたスクールも定期的に開催。さらに全国規模のコンテストやイベントの会場として、またテレビドラマや映画の撮影現場などとしても全国に知られる。 本稿では、同社の旗艦施設である同パークの状況を中心にその運営面についてレポートしよう。
 まず、直近の利用動向についてだが、気になるのは新型コロナウイルス感染症による影響だ。同パークでも、昨年は自主休業期間や、再開後の現在でも営業時間の短縮を余儀なくされる状況が続いた。
 反対にアーバンスポーツのもつアウトドアという特性や、基本的に利用者が単独で行なう種目のためソーシャルディタンスを取りやすいなどの特性が、コロナ禍でも楽しめるス ポーツとしてプラスの要素に捉えられる傾向もみられたという。
 さらにパンデミックによる落込みを凌駕するきっかけとなったのが、東京オリンピック2020の存在だ。スケートボードについては男子、女子ともメダルラッシュが続いたことに加え、女子ストリートの種目でわが国の史上最年少で金メダルを獲得した西矢椛選手をはじめ、複数の選手の所属先としてムラサキスポーツの名が世に広まったことも追い風になった。
「ただ、このスポーツに対するブームともいうべき動きが広まったのは、5年前の2016年からでした」と語るのは同社店舗運営部マネージャーの和賀誠氏。同年8月、リオデジャネイロでのIOC総会でこれらアーバンスポーツなど18種目が次回五輪で正式種目に決定。その報道直後からシーンが一気に変わりだしたと振り返る。
 具体的には、TVCMや広告でもアーバンスポーツ関連の露出がふえはじめるなど、企業側の動きが顕著になり「街なかでもスケートボーダーをモデルにした広告などが目に付くようになりました」(同店店長 廣岡耕一氏)。
 さらに五輪本番でのメダルラッシュにより、同社の用品販売額、パーク利用者数ともに、コロナ禍のマイナスを大きく凌駕するものに飛躍しているという。現在のムラサキパーク東京への年間来場者数は延べ約4万人に及んでいる(一般、スクールの合計)。

スクール事業で裾野拡大。女性層のニーズも顕在化

 さて、初心者から上級者、さらにトッププロまで幅広い層を受け入れる同パークだが、運営面では一般利用とともに、スクール事業が重要なポイントとする。同パークでも、まったくの未経験者向けの「超初心者」スクールをはじめ、習熟度によってステップアップしていける各種クラスや専門性の高い技術を身に付けられるクラスを多彩に用意。平日は夕方から、土・日祝日は昼間から連日開講し、希望者はスマホなどでクラスや日時などが予約できるデジタル環境を整備している。
 年齢的には未就学児から受け入れる。「大人になるとどうしてもケガを恐れるせいか頭で考えてから動きますが、小さい子どもは感性で動け、身体の柔軟性も高いため、自然に技術を吸収でき上達も早い」(廣岡氏)。
 実際のボリュームゾーンは5歳前後の未就学児∼小学校中学年だが、特に五輪後は、幼児期からの入会希望者もふえ3歳児の会員もいる一方、上は50歳代にまで及ぶ。初心者でも「子どもと交わりたくない」大人に限定したコースも設け、間口を広げる配慮をしている結果だろう。
 入会動機としては「遊び」の延長線上で自ら参加を希望する子どもはもとより、このスポーツになじみのある親世代が参加を勧めるケースもふえているという。実際、パークでは熱心にわが子を見つめる母親の姿も多く、「かつてのスイミングスクールのような位置づけになっている」(和賀氏)。
 初心者向けスクール(1回2時間)の定員は30人だが、各回ともキャンセル待ちの状態が続く人気。吸収も早い幼少期からはじめれば、上級クラスにまで上り詰めるのも早い。今回、五輪で最年少金メダリストとなった西矢選手が13歳というのも、けっして偶然ではないようだ。
 当然、安全性の確保は重視しており、ヘルメット、プロテクターの着用を必須とし「ケガをさせない」「安全安心」を大前提でスクール運営に臨む。また今日ではソーシャルディスタンスをはじめ、コーチに毎日抗原検査を徹底するなど、感染症対策は欠かせないとする。
 現在の同パークのコーチの数はスケートボード、BMXともに各7人。同社が運営を手掛ける計3施設(他にムラサキパーク大阪岸和田、ムラサキパークかさま)のなかで、ムラサキパーク東京で育てたエキスパートを他施設に派遣したり研修の場とするなど、人材育成の拠点にもなっているとのこと。
 パーク利用者の男女比でみると、以前は9対1だったものが、現在は6対4と女性が急増。これについて廣岡氏は「SNSの影響が大きいのでは」とする。もとよりファッションやアクティブな動きなど写真や動画にマッチする、いわゆる「インスタ映え」するスポーツなだけに、その普及とともに女性の投稿も多くなってきたとみる。「しかもリアルにやっている、中学生から大学生くらいの女性がふえてきている印象です」(廣岡氏)。また、女子のメダリストなどスターが出現したことも大きいだろう。その意味で、パーク側では拡大する女子層の受け入れ態勢を整えることも肝要になるところだ。
 また同社ではパーク開設の基本条件としてショップの併設を挙げる。ムラサキパーク東京でもこのスポーツを熟知したスタッフが常駐し、ギアのみならずアパレル、シューズ、アクセサリーなど専門性の高い品揃えのショップを設け、利用者の相談にも細かく応えるほか、初心者の購入を的確にサポート。「パーク利用者がふえればふえるほど、当然購入者はふえる」(廣岡氏)ため、両者の相乗効果は大きく、ショップ単体での出店に比べ販売効率も高いようだ。

公設民営への対応窓口も整備。人材の育成も視野に

 一方、こうしたなかで触れておきたいのは、今年、茨城県笠間市にオープンした「ムラサキパークかさま」のことだ。同施設は、スポーツ資源の活用による地域振興を図る同市が既存の「笠間芸術の森公園」内に総面積約1万7,000uと国内最大級の規模で開設したもの。県と市が総事業費約7億4,000万円を投じ共同で施設整備を行ない、指定管理者制度により民間企業が運営するスキームを採用。その公募にムラサキスポーツが応募し入札、さらにネーミングライツを獲得(10年契約1,000万円)し「ムラサキパークかさま」の名称で4月より営業を行なっている。
 ここでは東京五輪でスケートボード日本代表監督を務めた同社マーケティング部の西川隆氏がコースづくりにも関わるほか、同社の有する運営面のノウハウも全面的に注ぎ込まれた。
 こうした公設民営事業への参加は同社にとっても初の経験でゼロからの対応には苦労があったようだが、結果的に大きなノウハウを得たという。「自治体が所有する公共空間であることから公園管理面との兼ね合いや大会運営のあり方など、クリアすべき点は多々ありますが、市のアーバンスポーツに対する前向きな姿勢もあり、よい形ができたと思います」(和賀氏)。現在は、他の自治体からも既存公園内の機能拡充の一環としてアーバンスポーツの導入・運営の依頼も多く寄せられるなか、社内の窓口を一本化するなど効率的な対応ができる体制も整備した。
 一方、民間企業からのオファーも数多く、ショッピングモールをはじめ、既存の工場跡地や空き倉庫の利活用、さらにボウリング場やパチンコホールからの業態転換なども含め多岐にわたる。ただ、こうした要請に対してはあくまで同社の掲げる事業モデルを前提に検討したいとし、単なる遊休地活用のコンテンツとしての誘致には慎重だ。実際、長年運営してきたムラサキパーク東京にしても、パーク単体での利益創出はむしろ度外視し、事業的にはアーバンスポーツへの入り口や体験の場として啓蒙・普及と参加人口の拡大を図ることで、本業の物販の需要拡大に落とし込むスキームを描いており、そうした受け皿をもつからこそのパーク運営ということもできるだろう。
 逆にいえば、パークと複合する機能を収益装置としてwin-winを実現する構造ができれば、展開の余地はあることになる。立地環境や規模、さらに客層など緻密なマーケティングは不可欠だが、複合施設内でのマッチングには大きな可能性がありそうだ。
 また運営の際には、季節や天候のリスク回避の点から、屋内型施設の有無も重視する。「本来はストリート、すなわちアウトドアで生まれ育ってきたカルチャーですが、サービス提供の場として、また事業として考えた場合には利用者にとっての快適性や安定稼動も重視する必要があります」(和賀氏)。こうした点からも前述のような、安易に屋外駐車場の空きスペース活用策などとしてだけ捉えるのは事業リスクを伴うだろう。
 同時に客層拡大の観点から、専用パークよりもスケートボードとBMX双方が利用できる設計内容や規模感もポイントとする。
 併せて、同社はソフト面でこのスポーツを牽引する選手の育成にも力点を置く。契約選手に対してスポンサーとしてサポートする従来の立場にとどまらず、「アカデミー」という形で小学生など低年齢の段階から、その育成を図るビジョンも描いているという。「このスポーツを楽しんでもらい、そこからさらにのめりこんでもらえる環境」の整備とともに、その才能を伸ばし、「ライダー1人ひとりの夢の実現を支えていければ」と両氏はこの先を見据える。
<アーバンスポーツ施設の事業収支シミュレーションや国内事例研究は本誌にて>
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