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地域の魅力を引きだす、水辺の緑地×飲食店舗群の新たな空間活用

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2019年夏、岩手・盛岡駅から徒歩5分の川辺に現れた木伏緑地。0.4haと限られた敷地面積ながらも地域需要の掘り起こし、水辺を楽しむ空間活用を形にした同開発は、訪れる人の“過ごす姿勢”を大きく変化させた。
場のポテンシャルを最大限に引き出した、Park-PFIによる開発事例を紐解く。

駅チカの親水空間に飲食店舗群や公衆トイレを導入

  •  岩手県盛岡市の盛岡駅から徒歩5分、北上川沿いに位置する「木伏緑地」は、Park–PFI制度を活用し、地元飲食店を集積した店舗群と公衆トイレなどを整備した施設として2019年9月に供用を開始した。
     ゼロイチキュウ(同)は、木伏緑地整備事業のために盛岡市に設立された法人。同社のCEOを務める猪原勇輝氏は同市出身であり、栃木県宇都宮市に本社を構える潟fィグワークスの代表取締役として、仙台、盛岡と3拠点で飲食業や商空間のデザイン設計施工、地域づくり事業を手がけてきた。
     盛岡市は他都市に比べるとPPPが比較的進んでおり、民間だけでなく行政サイドもある程度経験を積んできていた。木伏緑地に関しては、Park–PFI法整備以前から同市の「公園活性化プラン制度」を活用しての事業提案があったものの、建ぺい率の問題で実現には至らなかった。17年にPark–PFI法の整備で課題をクリア、19年のラグビーワールドカップ開催決定により、市としても公衆トイレ設置の大義名分ができたことで、整備が決定した。

空間のポテンシャルを引きだす整備。ポイントは“境界”をぼかすこと

 木伏緑地はPark-PFIによる整備開始の2年前、16年にも一度整備されている。それ以前は、木が茂っていて一見自然豊かな雰囲気はあるものの、死角が多く浮浪者や事件、未成年の喫煙の温床となっていた。近隣住民からも整備の要望が行政に寄せられ、岩手国体の開催を契機に整備したが、安全とメンテナンスフリーを重視するあまり芝生と植栽をほとんど撤去、植栽以外のすべての部分にインターロッキングを敷いた結果、にぎわいや居心地のよさが一切ない空間となっていた。今回の整備ではそれらをすべて撤去し、芝生を再整備、店舗群が集積するウッドデッキも新設した。
2016年より前の様子。木が茂り、見通しが悪かった(左)、16年の改修により全面舗装された様子(右)
 空間づくりにおいては、“境界”をぼかすことを意識したという。猪原氏は「特に日本の行政はリスク回避のため、見た目や規則などではっきりと境界をつくりがちですが、海外などでは道路に面するお店が公共道路ににじみ出て調和しているような光景が見られます。木伏緑地でもそうしたフラットな空間を実現するため、水門の管理道路を管轄する国土交通省に掛け合い、用途の境界を取り払っていただきました」と、ポイントを語る。

公民連携事業の肝は意識をすり合わせること

 また、再整備を進める段階で最も重視したことは自治体にも“稼ぐ”というマインドを共有することだという。
 「たとえば盛岡市で言えば、トイレの設置費用2,800万円(給排水工事含む)は市の負担ですが、投資を7年で回収すると残りの13年は固定資産税などで利益を得ることができるわけです。『Park-PFIで維持管理費が安くなる』というようにただ民間に稼いでもらおうという考えではなく、自治体が『この公園は赤字なんだ』という自覚をしっかりもち、民間と同じく“稼ぐ”という目標をもつことが公民連携では重要になります」(猪原氏)。
 木伏緑地の整備にあたって、猪原氏は当初から自治体職員と幅広くコミュニケーションをとり、そうしたマインドの共有を徹底していた。公園整備の決定後、近隣住民からは木伏緑地に飲食店舗を導入することに一部反発もあったが、自治体職員とも意識を共有していたため、緩衝役として対応してもらうこともあったという。
 事業費は当初1億5,000万程度で想定していたが、最終的には2億2~3,000万円程度と8,000万ほどオーバーした。
 「意外に費用がかかるのが給排水工事。古い公園だと開園当時と図面が変わっていることもあるため、土の中を掘り起こしてはじめてどれくらいの費用がかかるかがわかることが多い。冬期は作業が止まるので、工期が延びたぶん人件費もかかります」(猪原氏)。
 給排水機能については元の公園の状態から設備が足りていないことは想定しており、費用負担については事前に「こういうケースでは市と民間どちらが負担する」という線引きをしてからスタートしていたため、金銭的トラブルもなくスムーズに進んだ。

地元企業の新たな活躍の場に。テナント同士の連携が魅力高める

 盛岡駅周辺は商店街などもあり、飲食店は充実しているものの、その多くを全国チェーン店が占め、地価も高騰、地元の小規模テナントには事業機会が不足しているのが現実だった。
 そこで木伏緑地の店舗には、市内の小さな飲食店や岩手県内の企業など岩手県にゆかりがあり、「そのエリアをよくする」という視点に賛同するテナント9店舗を誘致。20年間という期間のなかで新しい風を取り込むため、3年間の事業用定期賃貸借契約としている。
 「小店舗群なので、『自分のテナントだけ儲かればよい』というのではなく、他店舗とも連携を取ってもらうことで、木伏緑地全体としてよりよくしてもらいたいとの思いがあります」(猪原氏)。
店舗面積は1テナント当たり9.5坪程度と狭いが基本的には店内ではなく、フードホールのようにいろいろな店舗で買って食べられるテラス席の利用が多数だ。利用者は数店舗の食事を少しずつピックアップして食べたり、テナント側も極端に忙しい店舗があればほかの店のスタッフが手伝いに行ったりする、というように協力し合いながら営業をしている。
(開業後の集客状況と今後の構想、売上目標などの詳細は本誌にて)
猪原勇輝氏
猪原勇輝氏
株式会社ディグワークス 代表取締役/ゼロイチキュウ合同会社 CEO

1976年岩手県盛岡市生まれ。栃木県宇都宮市在住。2014年「株式会社ディグワークス」設立。宇都宮市、仙台市、盛岡市の三都市を拠点に飲食業及び商空間のデザイン設計施工を主とした建築業、これらに付随するプロディース・グラフィックデザイン等の事業を展開する傍ら各地の「地域づくり」「街づくり」に関わる。2017年PPPエージェント会社「ゼロイチキュウ合同会社」設立。2019年9月盛岡駅前に位置する都市公園「木伏緑地」にてP-PFI 制度を活用した地域内循環経済プロジェクト「木伏」を開業。
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2021年2月号

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