キーワード検索

サイト内検索を閉じる

食をベースにしたエリア開発による地方創生を推進

  • レジャー産業
  • 地方創生
  • 飲食
  • 一般的なロジックを超えた店づくり

     駅前や商業施設でなくとも、人々をほっとさせるような街並み、水辺、公園などの周辺環境に恵まれた絶好の立地――飲食店の企画・経営を手がける潟oルニバービは、その場所を“バッドロケーション”と呼ぶ。にぎわいや通行量が少なくて、一般的な飲食店企業であれば出店基準を満たさないからだ。
     同社がそうした立地に出店するレストラン・カフェは、周囲の良好な環境を積極的に取り込み、近隣住民に新しいライフスタイルを提案してきた。とりわけ、気持ちのよいテラスはバルニバービのアイコンにもなっている。
     そして、創業の地である南船場、東京本部を構える蔵前がそうであるように、バルニバービの店舗がきっかけとなって、周辺に飲食店や物販店の新規出店が追随。街に新たな付加価値を生み出してきた。
 いまや、都心の大型商業施設において集客とにぎわい創出のためのキーテナントとして、バルニバービを誘致したケースは数多い。
 そのなかでも、2020年8月、同社の全93店舗のうち売上げナンバーワンを飾ったのが、兵庫・淡路島のレストラン&カフェ「GARB COSTA ORANGE(ガーブコスタオレンジ)」だ。
 島の西海岸にある、阪神・淡路大震災以降ずっと手つかずだった1,000uの敷地に、約300席のレストラン&カフェをオープンしたのが19年4月。市街地のある東海岸とは対照的に閑散としたエリアだが、瀬戸内海に沈む夕日を一望できる絶好の“バッドロケーション”に建つ。屋上付2階建ての店舗は、2階の約半分がテラス、屋上は全席テラスとなっており、9月には屋上を改装し、オーシャンビューを間近に感じるカウンター席を増設した。
 テラス席はペットの同伴が可能なほか、バーベキューも楽しめる。メニューは、本格薪窯ピッツァと島内の食材を豊富に使ったイタリアン、オリジナルカクテルを提供する。
 開業時からの人気は途絶えることなく、客層はおよそ2割が島民、残りが観光客で、全体の約6割を20歳代の利用客が占める。客単価は昼2,000〜3,000円、夜3,000〜5,000円といった具合だ。
 「これまでのバッドロケーション戦略と基本的にアプローチは同じです。まだ更地のときに、椅子に座って海を眺めながら『ここにカフェができたら人が来るだろうか』と想像して、自分が来たいと思う店がつくれれば絶対に来ると確信しました。人がまったくいないことに対しての不安はありましたが、そこに不意にこんなお店が現われたら感動するはず。インパクトとワクワク感が大きかったぶん、楽しみのほうが大きかったです」と、同社代表取締役社長の佐藤裕久氏は振り返る。

淡路島でレストランに続きリゾートブティックホテルを開発

 20年10月には店舗前に市のコミュニティバスのバス停が新設されたが、アクセスはもっぱら車である。
 当初、スタッフははたしてビールやワインが飲みたいのを我慢して車で来てくれるだろうか、と心配したそうだが、それも杞憂に終わった。
 それどころか、酒を飲んだら車で帰れなくなるから泊まるところが必要になる。そんな潜在ニーズに応えたホテル「KAMOME SLOW HOTEL」を20年7月23日にオープンした。バルニバービとNECキャピタルソリューション鰍ェ淡路島におけるエリア開発を目的に設立した潟Gナビーが開発主体となり、バルニバービが運営を受託する。
 約30〜約72uの全16室にオーシャンビューのテラスを併設し、室内にはテレビがない。ただのんびりとその日の気分で好きなように過ごす“何もしないことを楽しむ旅”の提案だ。屋外には暖炉を囲むテラスとプールも付帯する。レストラン機能は設けず、夕食・朝食はGARB COSTA ORANGEまでホテルオリジナルのトゥクトゥクで移動して提供する。朝食はインルームダイニングも可能。ホテルも好調なスタートを切っており、平均客室単価は2万7,000〜4万3,000円程度で推移しているという。
(地方創生への視点と今後の展望、代表取締役社長 佐藤裕久氏のインタビューは本誌にて)
月刊レジャー産業資料
2021年1月号

月刊レジャー産業資料2021年1月号
定価:6,930円(本体6,300円)

年間定期購読料

最新号から
定価:93,500円(本体85,000円)[送料込]

ページトップ