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――新たな葬儀の価値創造へ

コロナ禍イノベーション

  • 新型コロナウイルス感染症
  • 葬儀イノベーション
新型コロナウイルス感染症は、その収束と拡大を繰り返しながら2年余が経過した。この間、濃密な人的交流が伴う葬儀は簡素に、省略して、果ては施行そのものがなくなり、葬祭事業者は厳しい経営環境に置かれることになった。
こうしたなか、施行や会葬、会食などの葬儀現場も、感染拡大を防ぐための新しい形式やサービスが考案され、そして拡大した。その一方で、「故人を弔う」という葬儀の本質である問いが浮き彫りになったといえる。
20年3月にコロナ禍がはじまって以来、本誌ではさまざまなテーマでコロナ禍の影響をレポートしてきたが、今月号ではコロナ禍がもたらした葬儀の変化を総ザライし、コロナ後の新たな葬儀の価値創造を模索していくうえでのヒントとしたい。

葬儀の「本質」と「利便性」を見極め
高品質サービスを生み出す契機に

接触・対面型サービスに甚大な打撃を与えたコロナ禍

 20年のわが国の経済成長率は実質GDP4.5%減のマイナス成長で、コロナショックの影響は甚大だった(21年はプラス1.6%に回復)。同じ経済不況として、08年の金融危機が引き金となって起きたリーマンショックがあるが、今回のコロナショックはリーマンショックとは本質的な部分で異なるとみるべきだろう。

 コロナの蔓延とともにウイルスの感染拡大を抑えるため、人の移動や人的・物的交流といった需要活動が遮断・制限された(3密の回避、ソーシャルディスタンスの徹底など)。そのため、対ヒトを生業とする接触・対面型のサービス業はことごとく供給活動の抑制を余儀なくされ、飲食業、エンタメ産業、スポーツ産業、イベント業、観光業、宿泊業などは需要と市場が著しく縮小した。

 接触・対面型サービスを根本とする葬祭業も例に漏れない。経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」の売上高推移をみると、20年の葬儀業の売上高(調査対象は全国の年間売上高の概ね7割程度をカバー)は前年比マイナス13.5%(売上高5,135億円)と激しく落ち込んだ。リーマンショックのとき(09年)が前年比マイナス2.4%(同4,877億円)だったことと比べると、コロナショックが葬儀産業に与えた影響はリーマンショックの比ではなかったのだ。

 ご承知のとおり、葬儀の小規模・簡素・省略化は、コロナ禍がはじまる前から徐々に進んでいた。死亡年齢の上昇や少子高齢化等による親族(遺族)の減少、社縁・学縁・地縁などの希薄化、葬儀に対する価値観の変化などがその背景にあるのは論を俟たない。

 葬儀規模が目に見えて縮小しはじめたのは、2000年代に入ってからといえる。「小規模葬」=「家族葬」と定義すれば、本誌がはじめて家族葬特集を組んだのが05年3月号(No.100)であり、わが国が人口減少社会に突入した時期(05年)と一致することに注目したい。その後、「直葬」と「一日葬」が登場するが、直葬という言葉が本誌で使われはじめたのが14年頃、一日葬については本誌バックナンバーを繰ると18年頃から頻出していることがわかった。

 以降、直葬と一日葬は葬儀の簡素・省略化(小規模化も)のアイコンともいえる存在にまで一般化したが、この流れがコロナ禍を契機に一気に拡大したのである。新型コロナウイルスを触媒に、「そのうち起こる変化」が「急加速で起こる変化」へ転換したといってもいいだろう。

変貌を遂げた葬儀形式一日葬と直葬の増加

 では、コロナ禍は葬祭業にどんな影響をもたらし、何がどう変化したのか。20年12月号(No.289)の特集ケーススタディなどを参考にしながら、コロナ後の業界の変容を俯瞰してみたい(図表)。

 まず、最も大きく変わったのは葬儀形式と会葬・弔問シーンである。

 人が亡くなってから葬儀・告別式に至る流れは、地域によって差異はあるものの、臨終・死亡→霊柩搬送→遺体安置→納棺と進み、葬儀・告別式執行日の前夜に通夜を営み、翌日、葬儀・告別式へと至る。その後、火葬~納骨に至るのが一連の流れである。

 故人を遺体のまま見送るか(遺体葬、後火葬)、故人を焼骨にして見送るか(骨葬、前火葬)、初七日法要を葬儀・告別式に組み込むか否か。そのほか、会食機会の有無や香典返しの返礼時期、納骨の時期といった地域性はあるにせよ、上記の流れが予定調和的な葬儀のやり方(宗教的にも)として認識されてきた。つまり、上記の流れのなかで通夜と葬儀・告別式を2日間かけて執行してきたのである(二日葬)。

 こうしたなか、コロナ禍がはじまると以前にも増して表立ったのが、通夜を営まず葬儀・告別式だけを行なう一日葬、および遺体を火葬するだけで葬儀をしない直葬だった。

(コロナ禍で生まれた新サービス、今後の展開等の詳細は本誌で)
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