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――原田春男氏
  アルファ・ネット コンサルティング&デザイン 代表取締役

消費者・事業者双方から求められる
空間創出が生み出す高単価遺体安置室

  • 遺体安置施設

葬儀が二極化するなかで必須となる遺体安置機能

 葬儀形態が急速に変化している。本来、社葬やお別れ会、通常の葬儀などでとり行なわれるべき社会的地位がある人でさえ、「通夜・葬儀は近親者のみでとり行ないます」「通夜・葬儀は近親者のみでとり行ないました」といった形となっていることからも明らかだ。
 地縁・血縁が強かった地域共同体の崩壊が叫ばれて久しい。地方から都市部の大学、企業に進学・就職した団塊世代を筆頭に、地方名士の跡取りですら核家族化によって地縁・血縁が希薄化していると聞き及ぶ。こうした社会背景はもちろん、現役世代の喪主が高齢化とともに減少したことで会社関係者=社会的関係者の会葬も減少、参列者減に歯止めがかからない状況だ。そこに、昨今のコロナ禍がさらに拍車をかけ、葬祭市場はシュリンクしてしまったと思えてならない。その背景には、これまで価格競争に走ることで集客力向上に邁進した葬祭事業者に責任があることも事実だろう。安価な家族葬ばかりを世間にクローズアップさせてしまったのは、葬祭事業者そのものだからだ。
 人口動態、家族構成、時代背景、宗教に対する意識などをみると、今後、葬儀の小規模化が加速していくことは否めない。消費者にとっても、「家族葬」「小規模葬」「直葬」「一日葬」なる形態は、喪主や故人の関係者にとって魅力的な言葉に映っているに違いない。それゆえ、小規模・低価格を標榜する小型の葬祭会館が急速にふえ続けている。片や、家族葬の本質を考え、家族が集い語りあえる場として、故人との最後の時間を過ごすための会館開発が盛んになっているのも確かである。
 それによって、今後は、葬儀の二極化がより顕著になってくるはずだ。
 1つは葬儀をしない「遺体の処理」的な直葬系、もう1つは葬儀をしっかりと行なう「弔いの時間共有」的な家族葬系である。だが、「遺体の処理」的な直葬型に対応するとすれば、既存会館や家族葬会館ではコスト面で経営が成り立たない。
 それゆえ、今後は小規模でありながらも安価さを訴求するばかりの施設ではない開発が求められることになる。ただし、いずれの施設開発であっても、小規模・効率性を優先する施設では、受注が重なると遺体の安置場所が確保できない。多店舗展開をしている葬祭事業者であれば、集中的な遺体安置施設とともに各会館に数体ぶんの安置施設を設置することが可能だが、中小専門葬儀社においては、会館施設の効率化を優先し、遺体安置スペースを設置していないケースが多い。そのため、昨今は受注が重なることによる失注ロスが問題となっている。
 こうしたなか、「自宅に安置したくない」「物理的に安置できない」世帯が多くある現状を踏まえると、遺体安置施設が今後ふえていくのは必然だろう。しかもそれは、大都市圏にみられる火葬待ちが生じている地域だけとは限らない。古くから稼動していた火葬場のリニューアル計画も全国各地で進んでいるように、多死時代を迎えたいま、火葬待ちの遺体があふれてしまうことが現実味を帯びつつある。

宗教儀式の空間から「お別れの家族時間」へ

複合型安置施設の一例
 筆者は葬祭会館の開発に携わり30年余りを経ているが、当初から小規模施設を提案してきた。その経験を踏まえ、今後は遺体安置型施設と遺体安置機能プラス小規模葬対応施設が葬祭会館の最終型になってくるのではないだろうかと考える。そして、それらの機能を中心に、多様化するお別れスタイルに合わせた葬祭施設をつくるのが理想だろう。
 いまある葬祭会館の機能といえば、祭壇を飾る式場、食事をする部屋、遺族控室や仮眠するための部屋、そしてそれらサービスを提供するバックヤードが基本で、式場以外の部屋は付属でしかなかった。しかし、家族葬会館は遺族らが故人とともに長時間滞在してお別れをする場であることから、式場以外の部屋の重要性が増してくるのは当然のことだ
 一方、遺体安置施設の多くは直葬対応施設と思われている。確かに、病院から自宅への搬送を望む遺族より、葬祭会館や専用施設での安置を求める遺族がふえており、こうした要望に応えることが結果として失注ロスを防ぐことになる。さまざまなお別れのスタイルに合わせた会館に安置施設がセットになれば、失注ロスによるダメージは軽減されるだろう。
 さらにいえば、死後24時間経過後の火葬がエンバーミングや安置施設の充実によって、急いで火葬する必要がなくなる可能性もある。だとすれば、遺族らがゆっくりとお別れの時間を考えながら施行を依頼する時代になるよう、葬祭事業者も準備していく必要があるのではないか。葬儀という宗教儀式だけをする葬祭会館から、「お別れの家族時間」を充実させる空間へと変わってほしいと切に願いたい。
(開発のポイントとケーススタディは本誌で)

執筆者プロフィール

原田春男(はらだ・はるお)
アルファ・ネット コンサルティング&デザイン 代表取締役
1953年生まれ。90年、現アルファ・ネット コンサルティング&デザインを設立。葬祭会館を中心に、リニューアル、コンバージョンの建築デザインから会館の活性化につながる総合デザイン、販売促進サポート、地域コミュニケーション指導・人材教育等、幅広いコンサルティング活動を行なっており、その指導先は全国100社以上に及ぶ。
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