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ニーズの高まりとともに浮上する法的整備という課題

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「おひとりさま社会」の進行が埋葬手法の多様化を後押し

 新型コロナウイルス感染症は、これまでの日常生活を激変させた。これに伴い「ニューノーマル」に代表される新しい生活様式の構築が求められ、葬祭・供養業界においても、会葬者の減少や法事・法要・お墓参りの自粛など、本来、あるべき姿がなりを潜め「オンライン」活用に代表される新たな葬送スタイルが提唱されるようになった。
 とはいえ、こうした新葬送スタイルが全国的に普及・拡大するまでには至っておらず、「むしろ、コロナ禍を受けて故人とのお別れを切に希望する人がふえている」とする葬祭事業者の声もある。言い換えれば、「故人との別れ」はリアルな場で実施したいという気持ちがまだ残っていることの証左であり、コロナ禍においても十分な感染用対策を施した葬儀式ができれば、会葬を願う人が戻ってくることが期待できるということだ。
 一方、供養……なかでも「お墓」についてはどうだろうか。
 本誌では、2019年8月号(NO.273)で、「埋葬手段としての『納骨堂』――現況と将来像」を、20年3月号(NO.280)で「『樹木葬墓地』の今日的展開――実態と可能性」なる特集を組んだ。いずれも、消費者の価値観が大きく変わるなか、遺骨の行き場(埋葬先)として納骨堂や樹木葬墓地といったものが認知されてきた実情を受け特集を組んだものだが、これらとともに注目を集める埋葬手段がある。今回取り上げる「海洋散骨」がそれだ。
 海洋散骨とは、故人の遺骨を(粉骨にして)海へ撒いて供養するというもの。海洋散骨であれば、新たにお墓を購入する必要がないため、経済的な負担も軽減されることをメリットと謳う事業者もあるが、一方で、海に撒いてしまうとどこに手を合わせるかが分からない(ただし、散骨場所となった座標軸を記した散骨証明書なるものは発行されるのが一般的)ことに戸惑いを感じる消費者も多いという。
 だが、考え方(提案)しだいでそうした不安を払拭することは可能だ。なぜなら、遺骨のすべてを粉骨して撒く必要性はなく、既存の家墓と散骨、樹木葬墓地と海洋散骨、納骨堂と海洋散骨といった組み合わせもできるからだ。最終的な判断は遺族に委ねることになるものの、海洋散骨という選択肢を提案する際には、消費者が抱える不安を取り除くことが大切になる。
 ただ、散骨全般に共通する課題として再三、指摘されていることがある。コンプライアンス問題を含めた散骨のあり方についての議論だ。
 この点については、本誌20年10月号~今号に掲載している連載『法学者の目で見る「散骨」30年』(近畿大学大学院法務研究科教授・田近肇氏)に詳しいので参照願いたい。
 なお、海洋散骨のガイドラインやルールなどについては、現状、海洋散骨の事業に携わる旅客船事業者を中心に設立された一般社団法人全国海洋散骨船協会(本部東京都渋谷区、代表理事志賀司氏、正会員10社/20年7月現在)や、遺骨を撒くという特殊な事柄から、海を生業とする方とのトラブル防止や、環境保全の観点から問題視される可能性のある海洋散骨を抑止し安全かつ安心できる海洋散骨の提供を目指すために設立された一般社団法人日本海洋散骨協会(本部東京都墨田区、代表理事蜩c剛氏、正会員34社・特定事業会員6社/20年7月現在)の2団体が提示している。
 しかし、これらの団体に加盟していない事業者は、こうしたガイドラインさえ作成しているとはいいがたく、さまざまなトラブルを引き起こしているという噂もある。こうした問題の背景には、田近教授の指摘にある「散骨の法的ルールが明確化されていない」といった現状があるからだと言わざるを得ない。(続きは本誌で)
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