しかし、近年の家族葬会館の隆盛によって、代替する諸室不足が露呈。事実、初期の家族葬会館には付帯する遺体安置室に別動線から入室できない設計となっているところも多く、すでに施行を受注した会館では、依頼を断わざるを得ない状況が続く状況が散見された。つまり、1件貸切型を謳う会館においては、遺体安置室への別動線を確保することが必須であるということだ。
もう1つの「癒しの空間」という発想については、そもそも遺体安置室は単に遺体を安置するだけでなく、火葬前の「人の状態」を保持している限られた時間(地域・時期などの条件によって長期間の安置となることもある)が、遺族にとっては、何物にも代えがたい最良の癒しの時間になるという考えに基づいたものである。
特に、一日葬や少人数の身内だけで送る小規模葬では、故人とともにゆっくりとした時間を過ごす空間を提供することは、遺族ケアにもつながるだけでなく、遺族にとっても“いいお葬式をあげることができた”という精神的な面からも評価された。
したがって、遺体安置施設(機能)は「失注ロスの低減」「他社との差別化につながるプラン提供のための癒しの空間」という2つの側面からその充実が図られるようになったといえる。