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――真浄葬祭[福岡県中間市]

独自システムを開発し事業拡大
キャリアパスの構築と次代経営者の育成目指す

[特集]葬祭DXの新局面|CASESTUDY

㈱真浄葬祭(社長冷牟田真二氏)は福岡県北部の中間市を拠点に、周辺の北九州市・直方市・宗像市・遠賀郡4町で葬祭業を営む。同社は市販のデータプラットフォームをベースに、独自の業務システムを開発・運用する。その背景には、事業理念にもとづいた戦略とヒューマンリソースの捉え方があった。

低価格・会館完全貸切の
家族葬・直葬モデルで躍進

 ㈱真浄葬祭は、現社長の冷牟田真二氏の父が「低価格でもいいお葬式ができるのでは」という理想を胸に大手葬儀社を退職後、1991 年に創業した。法人化されたのは2004年8月のことだ。16年、冷牟田氏が二代目社長に就任後は「家族葬・直葬の心響(こきょう)」(以下、心響)ブランドの会館をドミナント展開。低価格でありながら完全貸切の家族葬・直葬モデルを掲げ、仕出し料理を除く業務の内製化により高い利益率を確保する。FCを含めた各会館の安定的・効率的サービスを提供するため、自社物流センターを稼動させるなど躍進を続けている。25 年には、後継者のいなかった葬儀社の事業も継承。この会社は冷牟田社長の10 代の頃の研修先だった。今年9月現在、直営が4会館、FC の心響ブランドが14会館の計18 会館を擁し、年間施行件数は約1,600件となっている。

オリジナルのシステムを構築し
会館ブランドを複数展開

 同社では以前、IT 助成金等を活用し、葬祭事業者向けのクラウド型顧客管理システムを導入した。このシステムにより業務効率が改善したものの、思った以上の効果はなかったという。「FC 展開を含め、会館をつぎつぎとふやしたなか、地域・店舗ごとのデータ収集を強化し、マーケティングをしっかりとやりたいと考えました。しかし、従来のシステムでは、そこがうまく合致しませんでした」と冷牟田社長は語る。

 そこで同社では、プログラミング知識がなくても業務に合わせたシステムやアプリケーションを作成・共有できるクラウド型のデータプラットフォームを購入。1年かけて自社オリジナルのシステムを開発し、昨年より運用を開始した。

 「マーケティングのためのベースをつくり、運用を開始したところです。時間もコストもかかりましたが、戦略的には必要だったと考えています」と冷牟田社長が話すように、同社がマーケティング戦略を重視するのは「時期」の問題がある。ブランドを立ち上げて丸10年。いまはちょうど当初開設した会館の投資回収・融資返済が終わる時期に当たる。10年間の確たる実績があり、返済が終われば抵当も抜けるため、新たな融資が受けられる。つまり同社としては、融資等の制限を気にせず、出店したい場所によりグレードの高い会館を建てられる時期になってきたというわけだ。ただし、出店場所・形態の決定には明確なエビデンスが必要である。

 「10年前と比較すると3割ほど建築費も上がっています。また、経営者の感覚だけで出店を進めても意味がないと思います。新システムなら、どこの店舗でどの商品がよく売れているか、動きのない商品が何か、などの数字が見えてきます。この数字が、効率を考えた戦略的な出店のエビデンスになると期待しています」と、冷牟田社長。

 新システムは、心響ブランドのドミナント戦略と密接に結び付くとともに、ドミナント戦略なしにこのブランドは成立しない。直葬の場合、「遺体の預かり安置となり、遺族と故人は火葬場で落ち合う」ことになるため、遺族は故人がどこでどのように安置されているかもわからず、面会もできないケースが多い。しかし心響では会館がドミナント的に展開しているゆえに低価格で完全貸切、安置・面会自由である。つまり、「故人の尊厳を護る」「ゆっくりと家族が故人と向き合う時間をつくる」という同社の理念を体現しているのだ。

従業員のキャリアパスに
FCオーナーを用意

 心響ブランドのドミナント展開による事業拡大は、同社の人的資源や離職防止・人材活用の考え方とも深く結び付いている。まず、事業拡大から得られる収益は、従業員の給与の
ベースアップ原資となる。同社では段階的なベースアップを開始しており、昨年12 月に1回目のベースアップを完了、来年度に2回目を予定している。

 「会館をふやせば、当然従業員もふえる。どこにどれだけ人を配置するのか、個々の売上げは、といった予測をするためにシステム構築は必要です。また、将来のベースアップのことも、データにもとづいた事業計画に合わせて従業員に見せていかないといけません」(冷牟田社長)

 さらに、「平均年収の倍くらい、年収ベースで700万~800万円出せる会社をつくりたい」と目標を掲げる。従業員1人ひとりについて、個別に「どのようなプロセスを経て年収をそこまで上げることができるのか」と具体的な道筋を考え、1人ひとりに「こういうことができれば、給与を上げられるし、期待しているよ」と冷牟田社長から声をかけることができるという。「期待されている」「必要とされている」と従業員に示すことは、離職防止に大きな効果があるからだ。

 次に、事業拡大は従業員のキャリアパスの拡大にもつながる。同社には独立を後押しする独自の「創業支援制度」があり、同社で葬祭実務を学び一人前になった従業員には社内転職や分社化だけではなく、心響のFCオーナーとして独立できるキャリアパスが用意されているのだ。

 「もともと心響のFC 展開には、当社の『故人の尊厳を護る』『ゆっくりと家族が故人と向き合う時間をつくる』といった理念を共有できる仲間を集めるという意味合いが強かったのです。それもあって、現在一般からのFCオーナーの募集はしておらず、心響のFCオーナーは完全に従業員のキャリアパスの1つになっています」と、冷牟田社長。今後、従業員から独立した新オーナーにとっても、新たな顧客管理システムは大きな力となるに違いない。

(続きは本誌で)

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