――編集部
[特集]おひとりさま時代の葬儀社の役割
月刊フューネラルビジネス8月号「特集|おひとりさま時代の葬儀社の役割」のOVERVIEWでは、高齢者のおひとりさまをターゲットに生前〜葬儀〜死後の長期間にわたってサポートするのが終身支援事業だ。いま、全国には500〜600の事業者が活動しているとみられるなか、葬祭事業者が担うべき役割とは何かを考察する。本稿ではその趣旨を抜粋して掲載する。
警察庁が2024 年から公表を開始している「自宅において死亡した一人暮らしの者」(いわゆる孤独死)は、25年中には全国の警察取扱死体20万4,562体のうち、7万6,941体にのぼった。年齢に着目すると5万8,919体(76.6%)が65歳以上の高齢者で、年間6万人近くの高齢者が自宅で誰にも看取られず1人で亡くなっていることになる。なかには、1年以上経ってから発見されるケースも118体あり、親族・近隣・友人などとのつながりをまったく欠いた当事者像がみてとれる。。孤独死のデータは、それまで東京都(東京都監察医務院)を除いて公表しているところがなく、警察庁が2024年から公表に踏み切ったのも、その数が無視できなくなったからといえる。
東京都監察医務院は、東京特別区の死因の明らかでない急性死や事故死などの検案・解剖を行ない、その死因を究明する機関である。同機関では2003年から東京特別区の異状死数(自宅死亡)を公表してきたが、21年の異状死数は8,691人で、そのうち65歳以上の単身世帯が3,963人(45.6%)であった。実に、03年(1,441人)の3倍近いふえ方だ。
こうした単身世帯、いわゆる「おひとりさま」 は実際どれくらいおり、将来的にはどう推移していくのか。まずは、各種公的データから明らかにしたい。
総務省「令和2年国勢調査」によると、2020年の一般世帯総数は5,570万5,000世帯で、そのうち単独世帯数は2,115万1,000 世帯にのぼった。したがって、4割近い世帯がおひとりさまということになる。
では、この先おひとりさま数はどう推移していくのか。国立社会保障・人口問題研究所が公表した報告書「日本の世帯数の将来推計(全国推計)──令和6(2024)年推計によると、単独世帯数は25年の2,296 万2,000 世帯から36年に2,453万1,000世帯でピークを迎え、50 年には2,330万1,000世帯となる。一般世帯総数に占める割合も、25年の40.1%から50年の44.3%まで上昇しつづけると推計している。
図表1は、世帯主65歳以上の単独世帯の推移を示したものである。それによると、65歳以上の単独世帯は1980年には88万1,000世帯だったが、2020年には737万8,000世帯と8倍余り増加した。割合も、14.2%から20.6%まで上昇すると推計している。つまり、50年には5世帯に1世帯は65歳以上のおひとりさまになることを示している。
図表2は、男女別の独居率を示したものである。女性は20年の23.6%が50 年には29.3%と5.7 ポイントしか上昇しないのに対し、男性は16.4%から26.1%と9.7ポイントも上昇する。この違いは、男性未婚者が大幅に増加していくからだ。20 年の65歳以上の単独世帯737万8,000世帯のうち、男性は256万3,000世帯。これを未婚・有配偶・死別・離別の配偶関係別にみると、未婚者は86万3,000世帯で全体の33.7%を占めていた。これが、25年には37.7%、30年には42.8%、40年には54.2%、50年には59.7%と急上昇し、実数でみると50 年には20年の3倍を超える268万8,000世帯に達するのである。
社人研「男女・年齢別にみた未婚率」から男女別の50 歳時の未婚率を算出すると、1970年から90年頃までは男女とも4、5%台以下と低かったが、その後は男性を中心に急上昇し、2010 年には男性20.2%、女性10.7%に、20 年には男性28.2%、女性17.8%となった。今後、25年が男性29.2%、女性19.4%、40年には男性30.4%、女性22.2%とピークを迎えると見込まれる。
言えることは、現在の高齢者の単独世帯は、いまと比べて未婚率が低く出生率が高いこともあり、独居といえど、別居の子どもがいる割合が高い。加えて、自分の兄弟姉妹もいまより多いことから、近親者が生存している可能性も低くない。とはいえ、将来的には子どものいない割合が高まるとともに、自分の兄弟姉妹も少なくなっているため、近親者がまったくいない高齢者の「1人難民」が急増するという、憂慮すべき現実が待っているのである。
こうした高齢者のおひとりさまの増加に伴い、終身支援(サポート)事業の需要が高まっている。終身支援事業とは、高齢者のおひとりさまをターゲットに、生前・葬儀・死後を切れ目なく支援する事業であり、すでに定着している終活という用語は、終身支援事業に含まれるといえる。では、終身支援事業者は全国でどれくらい活動しているのだろうか。その実態把握について報告したのが、23年に総務省から公表された結果報告書「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」である。
それによると、調査対象とした事業者が実施している終身支援事業は㋐医療・介護施設等への入院・入所の際の連帯保証などの「身元保証サービス」、㋑生活支援と財産管理を行なう「日常生活支援サービス」、㋒葬儀・埋葬に関する事務を中心とした「死後事務サービス」の3つ。国は上記㋐〜㋒のうち2つ以上を行なっている事業者として、インターネットの検索や聞き取りなどで412の事業者を把握したと報告している。
そのうち、事業者調査を実施したところは204 事業者。法人形態をみると、最も多いのが一般社団法人(95事業者、46.6%)で、以下、NPO(61事業者、29.9%)、株式会社(38 事業者、18.6%)と続いた。次に、事業者の母体をみると、士業(55事業者、27.0%)、賃貸住宅や介護施設等への入所支援(33事業者、16.2%)、介護サービス業(25事業者、12.3%)に続き、葬儀(14事業者、6.9%)が食い込んでいる。契約者数はどうか。10人未満が64事業者、10〜49 人が57事業者にのぼり、全体の6割を占めるなか、300人以上の契約者を抱えるところも21事業者あった。
終身支援事業の先駆者といえば、1993年の設立から30年以上の実績を持つ特定非営利活動法人「りすシステム」である。同法人は、公正証書の導入や三者契約への移行などを通じ、長年にわたり生前契約の確実性を進化させてきた。葬儀社の参入事例もふえている。本誌のCASES TUDYでは、近年取り組みはじめたところとしては、秋田高齢者支援センター、こもれびの和/柏斎苑、終活ケアサポート/セレモニーの3法人を取り上げている。
終身支援事業における自治体の公助もはじまっている。静岡市は23年度から、「静岡市終活支援優良事業者認証事業」をスタートした。「高額な契約を結んでしまった」「終活支援事業者を紹介してほしい」といった声が多数寄せられたことが事業開始の背景にあり、現在、市内の2つの事業者が認証を取得済みだという。愛知県岡崎市でも24年度から、「ずっと安心! 終活応援事業」の一環として、市と協定を締結した愛知県内の5事業者の情報を発信している。
このように、自治体主体で取り組む事業の嚆矢といえば、本誌INTERVIEWで取り上げた神奈川県横須賀市の「エンディングプラン・サポート事業」があげられる。同事業は15 年に開始し、市内の協力葬儀社9社と強力な官民連携の仕組みを構築した。同事業は、自治体への市民・協力葬儀社の盤石な信用・信頼を背景に成立させた点に、他の追随を許さない先進性がある。
OPINIONとして寄稿したエピローグコンサルティングの小野寺秀友氏は、終活支援事業を葬祭事業者が担うことについて、以下の3点において自然な強みがあるという。①日常的に顔を合わせ、体調や暮らしぶりの変化にさりげなく気づく、②葬儀や納骨などの弔いの場に立ち会う、③法要や盆、彼岸など節目ごとに継続的な接点をもつ習慣がある。同じく、介護経営コンサルタントの小川利久氏も、(葬祭事業者には)人生最終章を支えるパートナーとしての役割がこれからますます求められる」としている。終身支援事業に葬儀機能は不可欠であり、日常生活の支援ノウハウ、介護・医療等の理解や制度理解、士業などの専門職とのネットワークや地域理解なども必要だ。長年地域に根づき、サービス分野の拡大のために葬儀外領域を強化してきた葬祭事業者は少なくないだろうが、終身支援事業は契約期間が長期にわたる事業である。だからこそ、事業に対しては「持続性」「信用・信頼性」「公共・公益性」などが求められるといえ、総じて忘れてはならない重要な点だろう。
終身支援事業の利用者(契約者)は、高齢者おひとりさまだけではなく、非正規雇用者が少なくなく老後の生活設計が立てにくい就職氷河期世代の中高年、親が亡くなった後の障害者など多岐にわたると考えられる。「あるアンケートによると、喪主経験者の約8割が葬儀社による生前死後のサポートを希望している」──このくだりは、行政書士の鈴木俊行氏が士業の立場からOPINIONに寄せたものだが、終身支援事業に対する葬儀社への期待は、やはり大きいのである。
月刊フューネラルビジネス8月号「特集|おひとりさま時代の葬儀社の役割」では、本誌では、地域に根ざした葬儀社による先進的な参入事例や、2024年に策定された国のガイドラインに基づく実務上の注意点についても詳しく解説する。