――エンディング総研代表取締役/コンサルティングファーム代表取締役 小泉悟志
1969年生まれ。銀行勤務後、ベンチャー企業の取締役を数社歴任。㈱エポックジャパン(現㈱家族葬のファミーユ)取締役を退任後、葬祭業界専門コンサルタントとして独立。施行件数のアップ、プランの見直しによる施行単価の改善などによる売りげ拡大を強みとする。近年は、葬祭業専門で補助金のサポート、葬祭会館の出店サポートや葬儀社のM&A支援も多数手がける。月刊フューネラルビジネス主催セミナー講師。
みなさまに質問です。ChatGPT、Gemini、Copilot、Perplexity、Claude…… これらの名前をいくつ聞いたことがありますか?また、実際にいくつ使っていますか?
いま、お客様はこれらのAIを使って葬儀社を選ぶようになってきております。これまで葬儀社を調べるには「葬儀 地域名」などで検索し、検索結果のなかから複数の葬儀社のホームぺージを閲覧・比較し、問合せ先、相談先を決めるのが一般的でした。しかし現在は、葬儀の費用はどれくらい?家族葬はどこがいい?この地域で評判がいい葬儀社は?といった質問をAIに投げかけ、その場で“答え”を得るという行動が急速に広がっています。つまり、検索結果を見る前に、AIが“お勧め” を提示してしまう時代に入ったのです。
これまでのホームページ集客は、いかに検索順位を上げるか、いわゆるSEO(検索エンジン最適化)が中心でした。このSEOとは、上位に表示されれば見てもらいやすい比較的シンプルな構造です。
しかし実際には、広告枠や葬儀紹介業、大手葬儀社が上位を占めるケースが多く、地域の中小葬儀社にとっては「上位表示そのものがむずかしい」状況にあります。ところが、AIは複数のサイトの情報をもとに、質問に対する“最適な答え” を生成します。そして、その答えのなかで参照・引用される情報源として、特定のホームページが選ばれます。ここで重要なのは、図表1のように「検索結果に並ぶかどうか」ではなく、「AIに“信頼できる情報源” として選ばれるかどうか」です。ここでは枠で囲んだように、「地域密着・老舗の葬儀社」「家族葬・低価格プランに強い葬儀社」としてあがりました。この新しい考え方を「AIO(AI Optimization)」と呼びます。SEOが“検索エンジンに対する最適化” であるのに対し、AIOは“AIに対する最適化”といえます。言い換えれば、AIに正しく理解され、引用されるための情報設計です。
「AIはまだ一部の人しか使っていないのではないか」。そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、図表2のようにAIの回答が表示された場合、77%以上がその内容を閲覧するというデータがあります。
人は「便利でわかりやすいもの」を自然に受け入れます。AIは、まさにその“わかりやすさ” を提供する存在です。つまり、これまでのような単なる検索ではなく、質問、疑問の解消のみならず、AIに表示される=そのまま意思決定に影響するという構造が、すでに生まれています。だからこそ「まだ早い」と先送りにするのではなく、いまから準備しなければならないのです。
この変化は、さまざまな業界に影響を及ぼしていますが、特に葬祭業界は影響を受けやすい構造にあります。理由は大きく3つあります。
①はじめての利用が多い
葬儀は人生で何度も経験するものではありません。そのため、多くの方が知識がないままに意思決定をしなければなりません。したがって、知識がないという状況において、AIが提示する「わかりやすい答え」は非常に強い影響力をもつことになります。
②比較・判断の負担が大きい
費用・形式・規模・宗教・地域性など、検討要素が非常に多く、「何を基準に選べばいいかわからない」のが葬儀といえます。AIはこうした複雑な条件を整理し、判断をサポートします。
③地域性が強い
葬儀は地域の火葬場事情や風習に大きく左右されます。この地域では何日待ちかどの式場が近いか費用の目安はいくらかこうした具体的な情報は、AIが最も得意とする領域です。つまり葬祭業界は、“AIが最も力を発揮しやすい業界” であり、同時に“AIに選ばれるかどうかが受注を左右する業界” になりつつあるのです。
ここで1つ非常に重要なポイントがあります。それは、「いい会社であること」と「選ばれること」は別であるということです。どれだけ丁寧な対応をしていても、どれだけ実績があっても、ホームページ上でそれが適切に伝わっていなければ、AIはその価値を理解しません。つまり、AIに理解されなければ、比較の土俵にすら上がらないのです。これまでであれば、「何となくよさそう」「昔からある会社だから安心」といった理由で選ばれるケースもありました。しかし、AIはそのような曖昧な評価をしません。明確な情報、具体的な根拠、整理された構造。これらが揃ってはじめてAIはその会社を“選ぶ理由のある存在” として認識するのです。言い換えれば、“AIに説明できない会社は、存在しないのと同じ”という厳しい時代に入りつつあります。
では、これからのホームページはどのような役割を担うのでしょうか。これまでのホームページは、「探してもらうためのもの」でした。検索され、比較され、そのなかで選ばれることが目的でした。しかし、これからは「AIに推薦されるためのもの」へと変わっていきます。
お客様が直接ホームページに訪れる前に、AIが情報を整理し、「この会社が適しています」と提示する。そのときに選ばれる存在になることが、これからの集客においてきわめて重要になります。そのため、単に情報を載せるだけでは不十分です。AIが理解しやすい形で情報を整理し、構造化して明確に伝える必要があります。
ここまで読むと、「むずかしそうだ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、AIO対策はけっして特別なものではありません。むしろ、その本質は非常にシンプルです。 お客様が知りたいことに対して、わかりやすく、具体的に、正直に答えること。この基本を徹底することが、そのままAIO対策につながります。たとえば、「葬儀費用の目安はいくらなのか」「家族葬と一般葬の違いは何か」「この地域での葬儀の流れはどうなっているのか」、こうした“よくある質問”に対し曖昧な表現ではなく、具体的な情報として提示できているかどうか。それが評価の分かれ目になります。
具体的な取組みについては、次回以降で詳しく解説しますが、まず意識していただきたいのは、「自社のホームページは、AIにとって理解しやすい状態になっているか」という視点です。「結論がはっきり書かれているか」「質問に対する答えが明確か」「情報が整理されているか」「具体性があるか」、これらをチェックするだけでも、多くの改善点がみえてくるはずです。
AIの進化はこれからさらに加速していきます。そのなかでホームページの役割も確実に変わります。「検索されるための対策」から「AIに選ばれるための設計=AIO対策」が、受注を左右する重要な要素になるのです。
次回以降。具体的な改善方法や実践的なノウハウについて順を追って解説していきます。なお、本テーマについては。「フューネラルビジネスフェア2026」の筆者の講演「C-1講座」(6月23日10:00~11:00)でより具体的な事例と実践内容を交えたセミナーを予定しています。誌面ではお伝えしきれない、「実際の改善事例」「どのように構成を変えたのか」「どの程度反応が変わったのか」といった“現場レベルの内容”まで踏み込んで解説いたしますので、ご関心ある方はぜひご参加ください。
「ホームページから受注をふやすAI時代の『AIO』対策」は、月刊フューネラルビジネス2026年6月号より掲載しています。
なお、筆者の小泉氏が登壇する「フューネラルビジネスフェア2026」の講座は、こちらからお申込みいただけます。
日程:6月23日 10:00~11:00
講座名:【C-1】ホームページからの受注をふやすAI時代の「AIO対策」
講師:小泉悟志 ㈱エンディング総研 代表取締役・中小企業診断士