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――メモリアホールディングス[岐阜県大垣市]

中小葬儀社の人材課題に効く
制度設計としての役職と人事考課の考え方

[特集]人材課題の突破口|OPINION

2000年、わずか5人体制でスタートした同社は、現在グループ全体として売上高約18億円、従業員数140人規模へと成長した。その成長を支えたのは会社の「設計図」。設計図とは、社内の役職制度と人事考課制度のこと。これにより、教育の仕組化と一貫した採用が行なえるという。本稿では、その考え方とつくり方から実際の効果について話を伺った。


役職制度は「役割」と「ツール」を定義する
(松岡泰正社長)

 「採用がうまくいかない」「何をどう教育したらいいかわからない」。中小葬儀社の多くが抱える悩みだと思います。しかし、多くの場合、求人広告の打ち方や研修の仕方といった戦術以前のところでつまずいていると私は考えています。原因はシンプルで、会社の設計図がないことです。

 設計図とは、役職制度と人事考課制度を指します。役職制度で業務で担う役割と責任、それを実行するためのツールを定義し、人事考課制度でその役職で何ができれば評価されるかを明確にする。両者が揃ってはじめて、採用と教育を同じ方針のもとで運用できます。設計図が曖昧なままでは、採用は場当たり的になり、教育は属人化します。実際に私は、自社を立ち上げて組織を拡大する過程でこの考え方を整理してきました。自身がぶつかった課題や経験を踏まえて、皆さんにお伝えできればと思います。

 まず、役職制度の考え方についてです。役職制度は、役職ごとに「役割」「責任」と「ツール(道具)」を割り振る仕組みです。ところが、ここが曖昧なまま役職だけを付けているケースがよくあります。「○年勤めたから係長」、しかし「肩書は付いたが仕事内容は同じ」。部長と一般社員の仕事はわかるものの、中間管理職は何をすればよいかわからない。会社側も何を教育すべきかわからない、という悩みが生まれます。教育を継続可能な仕組みにするには、役職ごとの役割を具体化し、誰が誰を育て、どこへ報告するのかという線引きをつくる必要があります。

 先ほど、役職制度は役職ごとに「役割」「責任」と「ツール」を割り振る仕組みだとお伝えしましたが、なぜツールが重要なのでしょうか。皆さんは、「社長の仕事は何か」と問われたとき、何と答えますか。「決断」「リーダーシップ」といっても、それは概念であって技術ではありません。技術として伝えられない以上、再現性がなく、属人化するからです。だからこそ、仕事を技術論とするためにはツールが必要なのです。

 たとえば、トラック運転手はトラックを運転する仕事です。学校の先生は黒板と教科書を使って教える仕事です。ツールがあるから動作が定義でき、仕事の手順として教えられます。社長も同じです。社長の仕事をツールという視点で見ると、①理念書(社長の思い)、②組織図(従業員)、③戦略マップ(お客様)、④決算書(お金)、⑤年間計画書(時間)といった5つのツールがあります。それらをつくり、つくったものを定期的に点検・更新しながら、会社を経営することが社長業だと私は定義しています。

 同じように、社長以外の役職の責任、ツールを整理すると、図表のようになります。こうすると、教育の責任も明確になります。この場合、係長が現場教育の責任者であり、課長・部長は係長に教え方を伝える責任者になります。

図表 役職別役割と育成ツール

 また、役職とツールを紐づけることは、中小企業が抱えがちな「人の出入りが頻繁で、育成や現場品質が安定しない」という課題に対しても有効です。たとえば係長が退職する場合、係長が現場改善のために整備してきたマニュアルやチェックリストは会社の資産として残ります。個人の経験や勘に依存していた改善が、文書として蓄積されるため、担当者が入れ替わっても一定の水準を保ちやすくなります。ツールを定義することで技術論に落とし込まれているので、業務の引継ぎもスムーズです。役職制度は、組織を成長させるための“ 攻め” の仕組みであると同時に、組織を維持するための“ 守り” の仕組みでもあります。

人事考課制度で「評価の基準」を共有する
(松岡卓哉副社長)

 役職制度で「何をする人か」を定義したら、次は「何ができれば評価されるか」を明確にします。これが人事考課制度です。評価軸が曖昧な組織では、昇進や処遇が「社長に気に入られるかどうか」になりがちです。社長の一存で「頑張ったから給料を上げる」という運用自体を否定するつもりはありません。しかし、評価が個人の裁量に依存している限り、基準が共有されず、再現性も担保されません。結果として、部下は何を伸ばせば次に進めるのかがわからなくなり、上司も何を指導すればいいのかが曖昧になります。

 当社の人事考課の評価項目は、能力、行動(フィロソフィ)、業績の3つで構成し、各軸に複数の評価項目を設けております。また、当社では従業員の立ち位置を役職だけでなく「ステージ」で区分しています。ステージごとに求める能力・行動・業績は異なるため、それぞれを明文化し、評価基準として社内で共有しています。

 この評価項目に沿って、各人が追うべき目標数値を設定します。当社では、半年ごとに4 つの目標数値を定めることを基本としています。たとえば、客単価○円以上、スタンダードプランの受注割合○%以上、事後相談からの受注率○%以上――といった具合に、職種やステージに応じて目標を具体的に決めます。そして半年後、これら数値の達成度を踏まえ、評価項目に照らして総合的に評価します。各項目の評価は10点満点。まず自己評価を行ない、係長評価、課長評価と段階的に評価することで妥当性を担保します。

 ここで重要なのは、目標数値をノルマではなく教育のための数値として扱うことです。数値は裁くためではなく、成長を可視化し、指導点を明確にするために用います。


このあと本誌では、「人事考課制度と役職制度の連動」「『ステージ給』という給与制度の考え方」「制度整備が採用に与える好影響」などについても解説しています。

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