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――㈱武蔵浦和会館[さいたま市南区]

年70回の遺族交流の場からはじまる
コミュニティづくりと地域貢献

1993年、さいたま市南区に設立した㈱武蔵浦和会館(社長小杉英介氏)。同社では15年ほど前から、大事な家族を亡くした遺族のためのわかち合いの場として、会員制の交流の場「つどい場 はるか」を開催している。特筆すべきはその実施回数の多さと会員との強固なつながりだ。実施回数は年間70回以上。参加者には常連も多く1回の参加者が50人を超える人気の交流イベントもあるという。

本社機能も兼ねる自社会館「葬送空間はるか」。JR武蔵浦和駅から徒歩5分

健康麻雀やカフェ・ランチなど
年70回を超える「つどい場」を開催

 武蔵浦和会館は、設立以来30年以上にわたり地域密着型の葬儀社として高い信頼を獲得してきた。2000年に入ると、遺族や近親者を中心とした小規模葬のニーズが高まったことから、11年には本社機能も兼ねる自社会館を「葬送空間はるか」にリニューアルし、家族葬中心の葬儀社へとシフトした。いまでは、半径2km圏内をメイン商圏に年間約150件を施行する。

 同社では、会館の休業日である友引の日を「つどい場 はるか」の開催日に設定している。コロナ禍中、一時期は開催を中断したものの、現在は月に平均4~5回のペースで開催している。「つどい場は2009年頃から開始しましたが、そのきっかけとなったのは古屋という社員からの提案で、『お客様とは葬儀だけの縁で終わりたくない』という声でした」と語るのは、15年に同社の三代目社長に就任した小杉英介氏である。

「葬儀が終わった後もご遺族の悲しみは続きます。せっかくご遺族様とのご縁ができたのだから、葬儀のときだけでなく、その後も関わっていきたい。ご家族を亡くした悲しみをわかち合える場や、家族に先立たれて1人で過ごされる方の居場所づくりなど、他社がやらなかったことをやっていこうという気持ちではじめました」(小杉社長)

 当初は、辛く悲しい体験をした会員同士が語り合うカフェだけだったが、その後、徐々にコンテンツを拡大。現在はその「はるかカフェ」(参加費300円)のほか、食事を楽しむ「はるかランチ」(同800円)、脳トレにもなるとしてシニアに人気の「健康麻雀」(同400円)、コンサートや専門家による講演などを行なう「イキイキセミナー」(同500円)を開催する。特に人気なのは健康麻雀で、参加者は多いときには50人を超える。麻雀初心者を対象に、小杉社長自らが講師を務める「麻雀教室」(同500円)も好評だ。

「そのほか、日帰りのバス旅行も春と秋の2回開催します。『五千頭の龍が昇る聖せい天てん宮きゅう』(坂戸市)や『醤遊王国』(日高市)など埼玉県の観光スポットを巡るバス旅行には、毎回30人ほどが参加。帰りのバスの車内では、参加者から次の行き先をリクエストされるほどです」と話すのは、つどい場のスタート時から関わってきた古屋尚美氏である。コロナ禍中、バス旅行は中止していたが、今年5年ぶりに再開。現在は秋のバス旅行に向けて準備を進めている。

 
 

つどい場 はるかの1コマ。小杉社長が講師を務める麻雀教室(左)と、五千頭の龍が昇る聖天宮へのバス旅行時(右)

 こうしたつどい場には、夫婦揃って参加するケースもあるが、多くは配偶者がいても自分1人だけで参加する人や、配偶者や家族を亡くした単身者だ。性別は約8:2の割合で女性が多い。麻雀教室は男性に人気と思いきや、9割を女性が占めるという。

 つどい場に参加するためには、会員制度「はるかメンバーズ」(入会金5,000円)への入会が必要となる。月々の掛け金や年会費は不要で、葬儀の際には式場が無料で利用できるなどの特典が付き、現在の会員数は約1,800人。大々的に入会キャンペーンなどは行なっていないが、会員からの紹介などを通し、現在も月に4~5件新規入会者がいるという。

「毎回のように交流イベントに参加する方も少なくありません。ご家族を失い、お1人で日々過ごしている方にとっては貴重な交流の場であり、“つどい場をつくってくれてありがとう”“ここに来ることが生きがいです”といった言葉をいただき、会員様の心の支えになっているのはうれしい限りです。でも実は、当社がいまあるのは、はるかメンバーズの存在があってこそなんですよ」と明かすのは専務取締役の小池裕亜氏。小杉社長の右腕ともいえる存在だ。

会社の存続を後押しした「はるか」ファンの存在

 小杉社長が三代目に就任したのは2015年だが、前年から同社は深刻な経営危機に陥っていた。コンスタントに受注し、施行の評価も高かったが、先代社長の不正が発覚。会社を畳むか、トップを交代して再出発するかの選択を迫られた。同社が選んだのは、長年現場で活躍し、豊富な経験とキャリアをもつ小杉氏を企業トップに据えて新たなスタートを切ることだった。

「会社を立て直すには大きな覚悟や決断も必要ですが、それを後押ししてくれたのが、つどい場を楽しみにしている、はるかメンバーズの存在でした。長年にわたって信頼関係を築き、会員の心の拠り所となっていた場を、会社の都合で解散するなど考えられなかったのです」と小杉社長。

 会社の経営状況は厳しくても会員のためにつどい場の開催は継続。同社と会員とをつなぐ会報誌「はるか」(年4回発行)も、経費削減のためフライヤー類の制作・配布はストップするなか、文章作成から編集・デザインまですべて社内で賄いながら発行しつづけてきた。
 
 こうした、はるかメンバーズや会員の紹介による葬儀の依頼は全体の約7割を占める。つどい場は、そもそも悲しみのわかち合いの場としてスタートし、葬儀の受注を目的とはしていないが、さまざまな交流イベントや会報誌をとおして会員からの信頼を得ていることが、結果として安定した受注に結び付いているといえるだろう。

高齢者の困りごとを解消する
生活支援サービスで地域貢献

 つどい場での会員との交流は、同社の新たな展開につながるヒントにあふれている。その1つに、高齢者の些細な困りごとに対応し、生活を支援する「一般社団法人はるかイキイキくらぶ」(2021年設立)がある。代表理事を小杉社長、古屋氏が副代表理事を務めている。

「ひと言でいうと、高齢者の困りごとを解消する『何でも屋』です。つどい場で会員と交流するなかで、“独り身になったら日常生活の些細な困りごとがふえたが、どこに頼んでいいのかわからない”という声を聞いたことがきっかけになりました。はるかメンバーズの会員でなくても利用できる『はるかの御用聞き』と、『はるかの人生サポート』の2つのサービスを、私と古屋の2人が中心となって提供しています」(小杉社長)


「はるかイキイキくらぶ」での取組みや「つどい場 はるか」運営における課題、新たな事業構想については本誌でお読みいただけます。

㈱武蔵浦和会館の概要

所在地:さいたま市南区白幡5-4-16
設立:1993年
代表者:小杉英介
施行件数:152件(2023年度実績)

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