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――㈱千代田[茨城県古河市]

来たるべき需要に備え海洋散骨と
樹木葬の併用で機先を制する

茨城県古河市、栃木県野木町、小山市をメイン商圏に、「セレモニー千代田」のブランド名で葬祭事業を展開する㈱千代田(社長森安子氏)は、2019年ごろから樹木葬事業と海洋散骨事業に着手している。同社では樹木葬の受注数が伸びる一方で、海洋散骨は伸び悩んでいたことから、海洋散骨と樹木葬の併用プランなどの提案を開始。わずかながら受注件数がふえはじめているようだ。同社担当者から、参入の経緯や海洋散骨事業の課題、取組み内容について話を伺った。

2019年に海洋散骨と樹木葬に着手

 1998年に創業し、「セレモニー千代田」のブランド名で葬祭事業を展開する㈱千代田(社長森安子氏)は、本社を置く茨城県古河市内とその北側に隣接する栃木県野木町、小山市などをメイン商圏とする。
 商圏内では比較的早い時期から会館開設に着手し、現在は5か所の自社会館を展開。6,500世帯が加入する自社会員組織「ひまわり友の会」を運営するなどして地域住民の囲い込みを図り、ここ数年の年間施行件数はおおよそ500件前後で推移している。
 その同社では、2019年頃から樹木葬および海洋散骨事業に着手した。樹木葬に関しては、商圏内に4か所の樹木葬墓地を開設(うち1か所はペット専用区画を併設)。海洋散骨に関しては、外部の船舶事業者と提携し「海洋葬 うみのおはか」のブランド名で東京湾、相模湾を散骨エリアに海洋散骨プランを提供している。出港地は横浜、平塚の2か所で、横浜ベイブリッジやレインボーブリッジを望む運航コースとなっている。
 同社が用意する海洋散骨プランは「代行散骨」と「チャーター散骨」の2種類で、料金などは図表のとおり。プラン料金以外では、遺骨の粉骨料として3万3,000円(1体)がかかるほか、オプションで各種手元供養品なども提供している。

図表 「海洋葬 うみのおはか」の海洋散骨プラン

順調な樹木葬と比べて
海洋散骨には課題やハンデも

 同社が樹木葬と海洋散骨を着手した経緯について、専務取締役の森弘史氏は以下のように語る。
 「外部の会社で樹木葬ビジネスに従事していた人がその会社を退社後、たまたま縁があり“一緒に樹木葬事業をはじめませんか”と声をかけてきたことがきっかけです。そこでまずは樹木葬事業からスタートしました。その際、弊社の創業社長が“将来的にお墓をもつ人は減少していくだろうから、樹木葬だけでなく海洋散骨事業も手がけるべきだ”と提言し、海洋散骨も合わせてスタートさせることになりました」。
 その後、樹木葬事業は独立子会社化が図られるほど順調に業績を伸ばし、現在は年間300件ほどの受注があるという。
 一方の海洋散骨事業は、スタートから5年程度が経過した現在でも年間受注が20〜30件程度で、樹木葬事業と比べると伸び悩んでいる。その理由としては、社内の限られたリソースをまずは樹木葬事業に集中させたことにより、広告宣伝などの面で海洋散骨事業が立ち遅れたことがあげられる。
 そのほかにも海洋散骨事業には2つの大きな課題があるという。いちばんの課題となっているのが、「散骨後の供養、お参り」に関する遺族の不安についてだ。
 「散骨場所は陸地から遠く離れた海上なので、後日、遺族などがお参りや線香・花などを手向けて供養する場所がはっきりせず、ご遺族を不安にさせてしまうようです」(森専務)
 故人が生前に海洋散骨を強く希望していても、不安を抱く遺族の理解が得られないケースもあるという。実際、同社で受注する海洋散骨の多くは、後継者となる子どもがいない単身者などの生前契約が占めているのが現状で、その多くが「代行散骨」となっている。
 この課題の解決策として、同社では海洋散骨と樹木葬の併用プランを提案している。遺骨をすべて散骨せず、一部を樹木葬として埋葬することで、供養やお参りする場所を明確にしようという試みだ。ここ数年ではわずかながら併用プランの実施がふえているという。
 もう1つの課題が、海洋散骨を実施する際の移動距離と手間だ。茨城県西部や栃木県といった内陸を商圏とする同社では、海洋散骨のために神奈川県の横浜や平塚まで移動しなければならない。遺族や会葬者の高齢化が進行する昨今では、移動距離の長さが少なからずハンデになっているとともに、船に乗る行為自体も高齢者には負担になるため、遺族にとってはマイナス要因と捉えられがちだ。

実際に行なわれた海洋散骨の様子。乗船時間はおよそ1時間30分程度。海洋汚染を避けるため、海に撒く生花や飲み物などは同社スタッフが用意する

 これらの課題を抱えながらも、同社では今後も樹木葬と海洋散骨事業の両方に注力していく姿勢を変えないという。その背景にあるのが、同社の創業社長も指摘した「墓離れ」「墓じまい」の潮流だ。少子化の進展とともに、継承を前提とした従来の一般墓の需要減少、無縁化が進んでおり、その潮流は同社の商圏エリアでも徐々に顕在化しつつある。その一方で、商圏エリア内にはまだ競合となる海洋散骨事業者は進出しておらず、同社はこのエリアにおける海洋散骨需要に先鞭をつけた形となる。
 「このエリアでも近年は、お子さんや後継者がいても墓じまいを実施するケースがふえていると聞きます。今後、一般墓を手放す人たちの受け皿として、自然葬の需要はさらに高まっていくことが予想されます。そうした方々に対して樹木葬と海洋散骨という複数の選択肢を提示できるのは、葬儀社としても非常に大きいこと。だからこそ、現時点で受注数が少なくても、2つを並行して進めていくことが重要となると考えます」(森専務)。

(同社の差別化策や展望は本誌でお読みいただけます)

㈱千代田の概要

所在地:茨城県古河市仁連2075-1
創業:1998年
代表者:森 安子
会館数:5か所
従業員数:30人
年間施行件数:約500件

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