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――本業を活かした事業参入とは

葬祭事業者が取り組むペット葬

超高齢社会・少子高齢化の進行、単身世帯の増加とともに、ペットをわが子のように扱う人がふえてきた。それゆえ、その死を弔う場面においても「ヒトと同じような葬儀」を望むペット愛好家の声が高まっている。もはや、ペットは家族同然の存在として見做されていることの表われでもある。

こうした流れは、ペット葬を手がける葬祭事業者も肌で感じることがあったはずだ。それは、「月によっては、ご遺体の数以上にペットの火葬数が上回ることがあった」と語る事業者があることからも頷ける。

そこで、本特集では葬祭業とペット葬送ビジネスの親和性についてあらためて考察。ペット葬の取り組みおよび埋葬プランの提案など、その実態と本業との相乗効果について探る。

本業の強みを活かした担い手として
クオリティの高いペット葬送へ

コロナ禍でペットを飼育するヒトが増加

 

今号では、2018年12月号(No.265)以来となるペット関連の特集を組んだ。

 

その背景には、22年2月号(No.303)での特集「『おひとりさま』時代のエンディングサービス」に寄稿いただいたエンディングデザイン研究所代表である井上治代氏が指摘する「過去に例のない単独世帯の増加」と「平均寿命の伸長(100歳まで生きる人の増加)」「少子高齢・人口減少の深化」が無縁ではない。

 

端的に言えば、「おひとりさま」の増加がペット愛好家をふやす要因の1つになり得るということだ。「おひとりさま」の増加がもたらす問題点や課題については、前述の22年2月号に詳しいが、生涯未婚者・単独世帯の増大がもたらすライフスタイルの変化は、このコロナ下で進んだ人との接触機会の減少とともに、その不安の解消策をペットに求める人がふえていることと無関係ではないだろう。

 

事実、(一社)ペットフード協会が21年に実施した「令和3年全国犬猫飼育実態調査」によれば、イヌ・ネコの推計飼育頭数は全国で1,605万2,000頭(イヌ710万6,000頭、ネコ894万6,000頭)であった。過去の調査に比べて、イヌの飼育頭数は減少傾向にあるものの、ネコの飼育頭数は緩やかな増加傾向にある。しかし、気になるのは20年、21年の新規飼育頭数がコロナ前よりもふえていることである。

 

もちろん、このなかには複数人世帯による飼育者も含まれるだろうが、同調査の報告書でも、新型コロナウイルス感染症以降にペットを飼育しはじめた人の代表的な声として、「イヌ飼育者では“こころ穏やかに過ごせる日々がふえた”。ネコ飼育者では“毎日の生活が楽しくなった”とする回答のほか、20年に続き、コロナ前に比べてペットと過ごす時間がふえ、ペットを癒しと感じる人もふえている」と記されている。

 

こうした点を踏まえると、ペットはもはや「家族(息子・娘)」そのものという存在感を放っているといわざるを得ない。だとすれば、ペット飼育者の多くがおのずとその死を弔う気持ちが強くなるのも必然である。

 

それゆえ、ペットを手厚く葬りたいと願う人も多く、そうしたニーズに応えるサービスとして登場したのがペット葬であり、ペット霊園といったものであることは間違いない。

 

そもそも、ペット葬に代表される動物供養の歴史は少なくとも戦前から寺院などで行なわれていた。ペット霊園も70余年ほど前から整備されており、以前から手厚く見送る文化があったことを鑑みれば、ペット葬の担い手として葬祭事業者がその役割を果たすのも、必然の流れであったといえるだろう。

 

全国で事業参入は可能
ポテンシャルが高い地域とは?

 

ところで、葬祭事業者によるペット葬送ビジネスは、全国各地で提供されていても不思議ではない。

 

そこで、今回は参考までに都道府県別のマーケットを把握するデータを用いて、事業展開の可能性が高い都道府県をピックアップしてみた。本来、市町村別に落とし込んだデータで論じるべきだが、今回は都道府県別で推論を立ててみることにする。

 

推論のために取り上げたのは、都道府県別飼育動物診療施設(いわゆる動物病院)の開設届出状況(図表1)と動物取扱業者の登録・届出状況(第1種のみで考察、いわゆるペットショップ)に関するデータ(図表2)である。動物病院、ペットショップともに施設数が多ければそれだけのニーズがあるという単純な理由からだ。

都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況
都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況
動物取扱業者の登録・届出状況
動物取扱業者の登録・届出状況

ただし、本格的に事業参入を検討するのであれば、市町村別のペット葬・ペット霊園の事業所数や既存ペット葬事業者の参入現況、さらには、単身世帯や高齢者人口等、複数の指標を用いてその可能性を追求しなければならない。

今後、家族同然のペットをヒトと同じように見送りたいというニーズが確実にふえてくることは間違いない。

 

とすれば、敷地内にペット葬専用の会館を建設し、火葬は移動火葬車で対応するといったサービス展開も検討しうる。このほか、ペットにまつわる日用品・消耗品の販売など、新たな葬儀外収入を得るきっかけとなる可能性も少なくはない。

 

「ペットがお世話になった葬儀社」という認識を生活者にもたれることは、大きなアドバンテージになるはずだ。もちろん、すべてを自社で賄うのではなく、それぞれのプロフェッショナルとアライアンスを組むのもよい。そうした意味においては、ペット葬関連ビジネスへの参入は一考に値するといえる。

 

(ケーススタディは本誌で)

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