新ブランドでアパートメントホテル参入
運営力を強みに東京・大阪で拡大目指す
三菱地所㈱および三菱地所ホテルズ&リゾーツ㈱が、新ブランド「WAYPOINT」を立ち上げ、アパートメントホテル事業に参入した。三菱地所がソーシングと計画を手がけ、三菱地所ホテルズ&リゾーツが運営を担う。4月1日、ブランド一号施設となる「WAYPOINTTSUKIJITOKYO」を東京都中央区にオープンした。
三菱地所グループでは、30年以上にわたってホテルチェーン「ロイヤルパークホテルズ」を手がけてきた実績をもつ。運営実績は、全国25施設6397室だ。
そうしたなか、同社グループがアパートメントホテル事業参入を検討しはじめたのは、2024年度のこと。インバウンド客数およびホテル宿泊におけるインバウンド比率が増加するなか、同社においてもグループ泊・連泊の確かな需要を背景とするアパートメントホテルの成長性に注目。また、同社が展開するロイヤルパークホテルズにあっても平均インバウンド比率は7割を超え(WAYPOINTTSUKIJITOKYO含む)、特に東京・銀座といった都市部立地においてインバウンドのグループ客が複数客室を予約するケースが一定数みられるなど、アパートメントホテルに類するニーズが確認できる状況もあったという。
東京メトロ・日比谷線「築地」駅から徒歩1分という好立地のWAYPOINTTSUKIJITOKYOは、20年10月に閉館したビジネスホテル「ホテルオリエンタルエクスプレス東京銀座」をリノベーションした物件。24年度の事業化決定から1年強での開業というスピーディな開発となった。リノベーションにあたっては、2室を1室へと統合するなどによりグループ宿泊に対応可能な広めの客室を設けた。改修後の客室数は全52室で、うち13室はビジネスホテル仕様から変更せずに法人向けに販売している。
WAYPOINTTSUKIJITOKYOでアパートメントホテルとして一般販売する客室は「スイートバンクルーム」や「デラックスバンクルーム」など全8タイプ。販売にあたってはルームチャージ制とし、1人当たり料金でみると同社が展開するアッパースケールホテルと比較して低価格帯での提供となっている。
客室設備としては、全室に冷蔵庫、食器、カトラリーを配す一方、ミニキッチン、電子レンジについてはスイートバンクルームのみに設置している。これは同施設がリノベーションによる開発であり、新規にミニキッチンなどを設置することが客室面積や設備仕様などの関係から制約があったため。キッチン利用の意向については宿泊者によって濃淡があり、特に都市部においては中食産業が発達しているという側面もあるものの、今後のWAYPOINT開発においては基本的には全室にミニキッチンを設置して、客室での簡易な料理ニーズに応えていく方針である。

同様に、WAYPOINTTSUKIJITOKYOでは洗濯乾燥機の設置はスイートバンクルームのみとした。同施設には5階〜9階の各フロアにコインランドリー(有料)と電子レンジ、シンクを完備し、24時間利用可能。2号物件以降、洗濯乾燥機を客室に設置するか、あるいは共用部に設置するかについては目下検討中とする。
すでにホテル事業での実績豊富な三菱地所グループによる開発ということもあり、ハード面のクオリティは確か。加えて、WAYPOINTの展開にあたっては運営力の高さを強みとする戦略だ。「当社ではフルサービスホテルや宿泊特化型ホテルを中心に運営を手がけ、スタッフも多岐にわたる経験を積んできました。その経験に基づき、当社の指針として掲げる〝心地よい加減〞のサービス提供をWAYPOINTの運営にあたっても体現していきたい」と話すのは、三菱地所ホテルズ&リゾーツプロジェクト推進部部長椋木浩平氏。

WAYPOINTTSUKIJITOKYOは正社員3人、パート・アルバイト7人という運営体制。インバウンド中心の想定客層にあわせて外国籍スタッフを多く配属している。また、若手社員がホテル全体のマネジメントを担うことで新たな視点を採り入れるとともに、WAYPOINTが若手活躍・成長の場としても機能することを目指す。
アパートメントホテルの場合、宿泊者は日中ほぼ外出し、レストランをはじめとする付帯施設もないためホテルでの滞在時間が短くなる傾向がみられる。チェックインも専用端末を利用するケースが多く、宿泊者とのタッチポイントは少なくなりがちである。とはいえ、「長期滞在の場合は特に、お客さまとコミュニケーションをとる機会が発生します」としたうえで、「そうした場面で当社のホスピタリティ面での強みを発揮していきたい」(椋木氏)との考えで、他施設との差別化を図る。
アパートメントホテル事業の特性でもある人材配置や客室清掃の最適化によるオペレーションコスト抑制にも当然目を向けるが、こうした省力化・省人化と高いホスピタリティを両立できるのはこれまで蓄積してきた運営ノウハウが確固たる基盤として存在するからにほかならない。
他ホテルよりも連泊が多く想定されることや、前述したように一部客室は法人向け販売ということもあるため、同社他ホテルよりも保守的な稼動率を想定したというが、「開業して間もない時期としては、想定を上回る実績といえます」(椋木氏)との手応えだ。インバウンド比率は90%超で、アジア系を中心に、欧米豪からの利用者もあるなど幅広い。平均泊数は4泊ほどで、3、4人のグループ泊が多く、小さな子どもを連れたファミリーも予想以上に利用がみられるという。
「そうしたファミリーのお客さまとホテルスタッフが母国語でフレンドリーなコミュニケーションをとっている姿もみられます」と椋木氏。銀座や東京駅エリアとも近い築地という立地ということもあり、宿泊者の都内観光拠点としての利用が目立つようだ。

好調な滑り出しといえる同施設。今後はデジタル広告の活用により、さらなる訴求を図っていく方針だ。三菱地所ホテルズ&リゾーツブランドマーケティング部副部長塩川典子氏は「オペレーションを日々深化させることで、WAYPOINTがもつブランド価値や世界観を今後さらに磨き上げていきます。ITを活用してみずからアイテナリー(旅程表)をつくるような方々がWAYPOINTのターゲットとなりますから、SNSも含めたデジタル広告や、Google検索等でのAIとの相性などに対して知見を深めながら、ターゲットの方々に向けてWAYPOINTのメッセージやイメージを的確にお伝えできるようにしていきたい」と述べている。
(WAYPOINTブランドの今後の展開方針は本誌で)