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平松有吾氏[平松融合研究所/渋谷PARCO前店長]に聞く

「詰め込み」から「ストーリー」へ
施設の魅力、編集力で増幅

INTERVIEW|施設の「価値づくり」:アドバンス戦略(試し読み版)

都市型商業施設の価値づくりは、建物改修や有名テナント誘致といった従来型手法だけでは成立しにくくなった。
ECの普及、SNSによる消費者ニーズの細分化、インバウンド回復、推し活など感情的消費の拡大で、商業施設運営には「その場所へ行く理由」を設計する編集力が求められている。
前「渋谷PARCO」店長であり、現在は平松融合研究所で商業施設の再生・開発支援を手掛ける平松有吾氏に、自身の経験を踏まえた都市型商業施設の運営戦略について話を聞いた。

東京発の価値を全国へ広げた時代

日本の都市型商業施設が本格的な産業として立ち上がったのは1970年前後です。それ以前、各地の都市の買い物空間といえば百貨店や商店街が中心でした。
しかし1969年の池袋PARCO、73年の渋谷PARCO開業を契機に、都市の最先端カルチャーやファッション、飲食を編集・集積し、提案する「商業施設」という業態が確立されていきました。
70~90年代にかけては、東京や大阪など大都市で支持された価値観を全国へ広げていくことが、都市型商業の役割でした。
2000年代以降は再開発ブームと歩調を合わせるように、SCや駅ビル、大型モールが全国へ拡大。東京発のライフスタイルを地方へ“ 拡散” する構図が続いていきました。

一方で、この時代は「安定性」が重視された時代でもありました。
投資家やデベロッパーは、賃料負担力が高く長期安定的に出店できるテナントを好み、結果として全国どこへ行っても似たテナント構成の施設が増えていきました。
以前は、スターバックスやドラッグストア、有名ブランドが入ることで一定の安心感がありました。賃料収入が安定していることが最重要だったわけです。ただ、その延長線上で施設を作り続けた結果、どこも似た商業空間になっていきました。

コロナとSNSが変えた“ 勝ち筋”

そうした構造を大きく変えたのがコロナ禍でした。

パンデミックとECの普及によって、リアル店舗の価値が改めて問い直される一方、SNSを通じて情報が世界同時に流通する時代が到来しました。さらにインバウンド回復によって、都市型商業は再び強い集客力を取り戻しています。
ただし、かつてのように「大きな箱を作れば勝てる」時代ではありません。街ごと、顧客ごとに求められる価値は異なり、その違いをどこまで捉えられるかが重要になっています。

例えば、以前は立地や規模が価値を決定づける最大要因でした。しかし現在は、どんなスタッフが働き、どんな商品構成で、どんな体験ができるのかまで含めて評価されます。
GoogleマップやSNSのレビューが瞬時に拡散される時代において、施設や店舗の“ 空気感” そのものが競争力となっているためです。
実際、インスタグラムで話題になった地方の飲食店に海外観光客が行列を作るような現象は珍しくなく、商業施設にも同様のことが起きています。
情報と人の流動性が一気に高まり、ハードだけでは差別化できなくなっている。むしろソフト、つまり編集力やストーリー設計の重要性が高まっています。

渋谷PARCO再生が示した
“ソフトの力”

その象徴例が、2019年に建て替え開業した渋谷PARCOです。
建て替え前の同施設は、年間売上高が150億円を下回る水準まで低迷していました。しかしリニュアル後は、「ファッション」「アート&カルチャー」「エンターテインメント」「食」「テクノロジー」を軸にテナント構成を再編集。
任天堂やポケモン、アニメ・ゲームカルチャーと、ハイファッションやアートを掛け合わせることで、“世界へ発信する次世代型商業施設” という独自ポジションを構築しました。結果として、売り場面積は建て替え前と大きく変わらないにもかかわらず、年間売上高は500億円超まで成長。当初想定を大幅に上回る成果を上げました。
この成功要因こそが「ソフトの編集力」です。単純に有名テナントを集めればいいわけではなく、それらをどういう文脈で配置し、どんな物語として見せるかなど、テナントミックスに意味を持た
せることが重要です。
例えば任天堂ストアも、単なる“人気IP”として捉えるのではなく、「世界中の人のゲーム体験や記憶とつながる場」として編集することで、施設全体の意味合いが変わってきます。

≪記事の全文は本誌で≫

平松有吾氏

平松融合研究所

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